2019年01月24日

リーヴィアさん18〜



18回



フィーナ「一見すると綺麗な光。でもスキルストーンから放たれるって事は、割と危険な光だったり?」

フィオ「複数攻撃型花火みたいなやつかもしれないね」


19回




この海では一見無機物に見えるものが意志を持ち、得物が通りかかるのを息をひそめじっと待っているようだ。
海底に眠る街。その外れにある神殿のような遺跡。
その入り口に鎮座していた対の女神像が、リーヴィアたちの接近に反応して魔法を唱え始めた。
その魔力に誘われてか、古びた剣が一本何処からともなく襲い掛かってくる。


フィーナ「アトランドの探索をつづけるリーヴィアさん。特に女神像にはなにやら悪い思い出があるようで」

リーヴィア
(……女神像を見ると、あの場所を思い出します)



あの場所。

それは――

大聖堂。


物心ついた頃から、つい一年前まで。
リーヴィアはそこにいた。

リーヴィア
(あまり、思い出したくはないです……)


表向きは、[エイリス教]を崇拝する教会だが、裏では全世界から孤児を集めては未来の精霊魔導師を養成している組織。

リーヴィアの居た大聖堂には、延べ50名ほどの孤児が集められていた。
年齢様々な子どもたち。
共通しているのは、誰も苗字を持っていなかったこと。

大聖堂で生きた日々が無為だったわけではない、とリーヴィアは思う。
アイラやピュア、ホーリーと仮契約を結べたのは、大聖堂の教育の賜物だ。
何よりも大切なものを、得ることができた。

リーヴィア
(でも、それは自分自身で掴んだものです……!)


フィオ「かつて育てられた場所の記憶。得たものは大きかったけれど、その道はかなり過酷なものだったみたいだね」

フィーナ「狭き門だったことはもちろん、環境もそれほどいい場所じゃなかったんじゃないのかな? 今はいい仲間に恵まれてよかったけれど」

フィオ「リーヴィアさんの年齢で契約できる限界があるらしいし、何とか、何とか目的へと至ってほしいよね」


20回






アトランドにやって来てから5回目の潜水。
先――中枢に近づいているのだろうか?――に進むにつれて、意匠の凝った建物も多くなってきた。

前回通り抜けた神殿。
そして今回は、かつての港だろうか?
船が錨で水底に繋がれている。

帆は劣化して襤褸切れのようになっており、その様はさながら幽霊船だ。
心なしか、その周囲を火の玉のようなものがふわふわと漂っているようにも――


フィーナ「み、水の中に火の玉とか非科学的だよね、幽霊とかそういう類のあれじゃなかろうし」

フィオ「ひゅーどろどろ。
まぁでもピュアさんの魔力系火の玉説、ホーリーさんのチョウチンアンコウ説もありえそうだよね」


フィーナ「アンコウか……」


リーヴィア
「うーん、どちらにせよ、近づかないほうが良さそうです」

二人の話を聞いて、リーヴィアはそう結論を下した。

リーヴィア
「君子危うきに近寄らず……君子危うきに近寄らず……」


単純に怖いだけである。


兎にも角にも、迂回ルートを探そうと踵を返したリーヴィアに、もう一声掛かる。

アイラ
「ふふーふ、ピュア様もホーリーちゃんも甘いのです!
あれは、近づいたほうがいいに決まってるのです!」

リーヴィア
「えっ……アイラちゃん、どうして?」

アイラ
「単純明快なのです!あれはスマッシュボールというのです!
あれを叩き続けると、最後の必殺技が使えるようになるのです!」


リーヴィア
「か、かっこいいです……!」

ホーリー
「あ、おい、待てって!」
ピュア
「リーヴィア様――!」




このあとめちゃくちゃ戦闘した。


フィオ「スマッシュボームだったか……」


21回



フィーナ「指きりで契るのは……?」

フィオ「お星様千個のーます」


22回



ホーリー
「……あたしの気のせいでなければさァ、
 最近リーヴィア、随分とタフネスになってないか?」

リーヴィア
「私が……ですか?」


アイラ
「言われてみれば、MHPが10000を突破したのです!」




フィーナ「ホーリーさんの素朴な疑問、細い見た目にしては確かに……」

フィオ「具体的な数字が出ると随分とわかりやすいよね」


ピュア
「主人たるリーヴィア様を護るのが、精霊たる私の役目ですから。
 特製のTGを7つ発注し、リーヴィア様の周囲に特殊な保護フィールドを展開するようにしました。」


ピュア
「リーヴィア様のHPは3200ですが、それにおよそ8000の保護フィールドが追加されます。
 もうばたんきゅ〜とは言わせません。」

ピュア
「さらにアイラと協力して『インシュアランス』を用意しました。
 こちらはリーヴィア様の体力が0になると自動発動する、緊急の修復魔法です。」

ピュア
「熱属性で効果量は3倍になり、修復率は75%をオーバーしました。
 現時点で、8000の回復量が見込めます。つまり
 リーヴィア様のHPは総計で20000近いということです。」



フィーナ「硬い(確信」

フィオ「あーこういう方法があったのか」

フィーナ「実際の数字を考えると『脆い』と言ってもいいけれど、それをちゃんと保護してるんだね」

フィオ「ゾンビみたいなしつこさになりそう」

フィーナ「もう少し言い方があろう」

フィオ「さらにアクセで防御と回避も上乗せ!!」

フィーナ「それで失った部分は別の方法でカバーと……隙がないね」

フィオ「これにはホーリーさんも納得……だったけど」


アイラ
「私なんて、環境の高速化に伴い回復スキルがすっかり使われなくなった挙句、
スイムアップを使う一手すら惜しまれるようになってしまったのです……!」

アイラ
「だからホーリーちゃんもピュア様も、
 それ以上を望むのは贅沢というものなのです!


フィーナ「環境に合わせて変化していかねばこの先生きのこれない……」

フィオ「←きのこれなかった」

フィーナ「まぁでも、契約している子がスキルを担当しているとこういう不満は出てくるよね、私がいたとこでも、終盤にかけては使えない技も増えちゃって申し訳ないことあったなぁ」

フィオ「序盤から終盤のインフレについていけるスキルがぽんぽんでてたらやばいからね」


23回



フィーナ「アトランドを進み続けるリーヴィアさん。今のところ何の問題もなく進んでいる様子だけれど、他の探索者と衝突する可能性も気にかけているみたい」

フィオ「今のところ海賊とは隔絶された海域だけれど、この先がそうだとも限らないし、そういう道を選択しなきゃいけない場面がでてくるかもしれないからね」

フィーナ「だからこそ、事前に情報収集して準備をしっかりとしておく、と」

フィオ「最後の信念は、わりと強いもので驚いた、かも」

――なぜそこまでするのか、って?

聖義はそう簡単に負けてはいけないからだ。



24回



フィーナ「夏休みのリーヴィアさん。水着を着てバカンス中かな?」


25回



リーヴィア
「レッサードラゴンを倒しました……
 しかし、腑に落ちないことがあるんです!」



フィオ「腑に落ちないこと……それは」

フィーナ「一年分のクイニーアマン!(相当のSC」

フィオ「ドラゴンが秘宝を守っているとかはわりとよくあるはなしだけど、SCだと確かに変かも?」

フィーナ「ふむ、でも普通の魔物もSCをもっているということは……」


リーヴィア
「そこで思ったのです……ドラゴンさんはとっても大きいので、食事もそれだけボリューミーになります!
 だから、その分、お金がたくさん必要になるのではないかと!」

リーヴィア
「なので、ドラゴンさんは皆お金持ちに違いないのです!
 いいなぁ……!」

ホーリー
(よく分かんねえ……)

ピュア
(どういうことでしょう……。)

アイラ
(お金持ち……ということはドラゴンさんを倒していけば私たちがお金持ちなのです!)


フィオ「魔物も貨幣経済に組み込まれているのか……。テリメインではあってもおかしくないとおもうけど」


26回




アイラ
「『引き返すならいまのうち』とかいう、ボス戦前特有のシステムメッセージが流れてきたのです!」

アイラ
「回復の泉で全快して、セーブもしておくのです!」

ピュア
「もしもこの先にいるドラゴンがレイドボスだとすれば、如何に功績点を稼ぐかも重要になってきますね……。」

ピュア
「レイドボス報酬如何によっては、私達の宿屋開業資金集めや、カープさんの借金返済も完遂できるはずです。」


フィーナ「メタァ! でもまぁ、親切なメッセージではある……」

フィオ「目標とする金額が大きいから稼げるところできっちり稼ぎたいね」

リーヴィア
「功績点……ってなんですか?」

ホーリー
「最初に探索協会から話があっただろ?
 あたしが覚えている限り、ダメージ、被ダメージ、回復、補助を点数化したものっつー説明だったね。」

ホーリー
「ンなもん計算している暇あったら、戦闘に集中しろって言いてェところだが……
 戦後を見据えた戦略も重要だからなァ」

ピュア
「最も功績点を稼げそうなのは、ダメージと回復でしょうか。
 補助は属性TGの数以外で差が出ませんから、行動回数の多い敏捷特化には追いつけません。
 被ダメージも、ドラゴンの攻撃手段や火力の程が分からない以上、効果的に稼ぐことはできません。」

ホーリー
「となると、安定してそこそこ数字を稼げる回復。
 特化していれば大きく稼げるダメージ。
 この二つが効果的ってわけだな。」


フィーナ「功績点の概要。まぁどのぐらい貢献したかってのを数字化したものだね」

フィオ「全てが平等に評価されているかどうかはわからないけれど」

フィーナ「ホーリーさんの言うとおり戦闘に集中しないと危ない気もするけれど……報酬を狙っていく以上は色々考えておかないと」

フィオ「と、いうことで回復重視の方針を立てたみたいだけど、うまくいくかな?」


27回



フィーナ「相対したジュエルドラゴン。その姿を見てリーヴィアさん達は」


リーヴィア
「お宝をたくさん持っていそうです!!!」


アイラ
「ドラゴンさん!?
 とりあえず私はPPブーストさせておくのです!」


ホーリー
「つか、最早当人が宝っぽいナリしてるからなァ」


ピュア
「さらに高価値そうなものがありますが……。」

アイラ
「地面に突き刺さった聖剣エクスカリヴァーなのです!!」

ホーリー
「ま、この仕様じゃァあたしたちが獲れる可能性は万に一つもねェな。」

リーヴィア
「諦めるにはまだ早い、です!」


フィオ「お宝よこせ、宝石なんだろぅお前!」

フィーナ「とはいえ、戦闘はあくまでパーティ別で全体回復の利点を使えない以上は厳しいだろうなっていう見立てだね」

フィオ「諦めたらそこで採掘終了だよ。出来るだけ剥がしとれ!」

フィーナ「そーいう要素はないんじゃないかな……?」


28回





多くのPTが合同で戦いを挑んだジュエルドラゴン戦。
これだけ多くの味方がいるならば余裕だろう――。
そんな楽観的思考とは裏腹に、レイドボス戦は凄惨な消耗戦の様相を呈していた。

探索者側が活動限界に達そうとしていたタイミングで放たれた、アルティメットバースト。
そのあまりの威力に、多くの味方が倒れた。
探索者側の陣容は半壊。秩序だった撤退が可能なうちに、退却する運びとなった。

撤退はレイド隊全体で行われ、幸いなことに死者は出なかった。


フィオ「うぅむ、なかなか簡単には突破させてくれないね」

フィーナ「とはいえ、相手にも相当なダメージが入ってはいたみたい、だからこその連戦、絶え間なく攻め続けて削り続けないと」

フィオ「激しさを増していくジュエルドラゴン戦。果たして報酬の行方は」


29回




リーヴィア
「新たなる航路が開かれました!!」

ピュア
「サンセットオーシャンとシルバームーン、ですか……。」

ホーリー
「サンセットオーシャンなんか行ったら、氷山熔けるんじゃねえの?」

アイラ
「地球温暖化の影響がここまで来てしまったのです」

ピュア
「直射日光を浴びることで日焼けしてしまいますからね。
 あまり宜しくない海域かと。シルバームーンにしましょう。」



フィーナ「新海域の出現で選択のとき!」

フィオ「絶対シルバームーン、絶対!」

フィーナ「サンセットオーシャンの環境は日焼けとかそういうレベルじゃないんだよねぇ」

フィオ「吸血鬼の気分を味わえるよ」


リーヴィア
「シルバームーンは、何だか薄暗いです」

ホーリー
「何というかまぁ、闇討ちしやすそうな海域だなァ。
 絶対海賊とか出るぜ」

アイラ
「どっちを選んでも地獄、デッドオアデッドなのです!」


フィーナ「アトランドも暗かったけど、シルバームーンもか……」

フィオ「海賊が出るってよ」

フィーナ「幽霊じゃなけりゃいい」

フィオ「どちらも死が待ち受けているのだとしたら、どちらを選ぶのが得策か……」


30回




リーヴィア
「暑い……暑過ぎです……」

砂漠と見紛うような黄金色で輝く海域、サンセットオーシャン。

初めに誰が云い出したのか、太陽の海と揶揄されるこの海域は、その熱気と直射日光でじわじわと体力を蝕んで已まない。

スキルストーンの力で熱属性を持つに至ったリーヴィアでも、この熱波にはばたんきゅ〜させられる。
氷属性――というより氷そのものであるイッカクも、全身を熔かしたような表情(?)をしている。……文字通り。

海域自体が危険なのもそうだが、こんな過酷な環境に棲息する先住民達も注意しなければならないだろう。
環境に適応し、独自の進化を遂げた魔物がいるかもしれない。
少なくとも、この暑さに耐性を持っていることは間違いないのだから。


フィーナ「選択したのは」

フィオ「きてしまったか……」

フィーナ「レッドバロンよりヒドイよねこれ」

フィオ「イッカクさーん!!!!」

フィーナ「暑さに適応した魔物たち。それに対して不利を取らされそうなリーヴィアさん達」

フィオ「パーティを組めていなかったら、詰んでいたかもしれないね」

フィーナ「今回頼るのは……」


ホーリー
「事ここに至っては、マゴイさんに頼るしかないでしょうね。」


マゴイ――異世界のトンデモ技術をその身体に取り込んだ、お伽噺に出てきそうな男だ。
相当の借金があるらしく、時折、FXで全財産を溶かしたような顔をする。

そのマゴイは、地属性である。
アトランドでは不利であったが、今度こそ遺憾なくその破壊力を発揮するだろう。


フィオ「レバレッジは身の丈にあったものにしようね!」

フィーナ「被虐趣味がある人だと逆に成功するとかなんとか……」

フィオ「相手が耐性を持っている場所だとダメージ減って嫌になるよね、それなりにはだせるんだけれど」

フィーナ「属性での追加分が多いからなんだろうね、で、そんな風なサンセットオーシャンではあるけれど、リーヴィアさんは探索とは別の、やろうとしていることがあるみたいで」


太陽の海、サンセットオーシャン。
熱属性のメッカたる海。

確かに暑さと眩光でくらくらするし、かき氷を幾ら食べても足りないけど、

今、この場所でなら。

膨大な魔力を必要とし、全身に過負荷が掛かることから大聖堂では禁止されていた、精霊の多重召還≠ェ可能かもしれない――。


フィオ「……ふむ。確かに地の利はありそうだけれど、かなり危ない印象を受けるね。体調面も万全というわけには行かないだろうし、ただ
こういうところでしかできそうにないことって、やりたくもなるし……やらなきゃいけない場面もあるよね」



31回




先の戦い――ダゴン達との死闘――の後遺症が、未だリーヴィアを苛んでいた。

全身を襲う倦怠感と吐き気。普段脳がリミッターを掛けている力を、十全に引き出したが故に起こった揺り返し。

幸いにも戦闘には勝利し、魔力の奔流は流氷にぶつけ続けることで消化できた。


フィーナ「戦いは激しさを増していく。文字通り命を削ることで辛くも勝利したみたいだけど……」

フィオ「流石にこれを続けるというのは、推奨できないなぁ……」

フィーナ「サンセットオーシャンの環境が短期決戦を要求してくるから無理をせざるを得ない状況になっているみたいだけれど……」

陽の下で長時間戦うことは危険だ。
それはつまり短期決戦の推奨を意味する。

しかし、強敵を一気に蹴散らす方法など、先ほどの魔力暴走のような強大な力を頼らなければ――。

――否、リーヴィア以上の適任がいるではないか。
もっと、刹那に生きる者が。


フィオ「ともに歩んでいるからこそ出来る選択もある。過酷な海を進んでいくために、皆が協力していかなければいけないね」


フィーナ「メリクリ! クリスマスってサンタの格好する人おおいよね、どちらかというとプレゼント貰う側の人も」


32回




依然としてサンセットオーシャンは続いている。
強力な魔物を倒しても、次なる刺客が現れては挑んでくる。

過酷な環境の中で、リーヴィアは日に日に摩耗していった……わけではなかった。

リーヴィア
「わくわく……わくわく……!」


時には息抜きも大事。
そういうアイラやホーリーの言葉を受けて、やってきたのがカジノ船『ビッグウェーブ』。
その中でも最も盛り上がりを見せるブースが、

七海名物「シーチキンレース」だ!

リーヴィア
「ナマコブライアンさん、頑張ってください!」


フィオ「ナマコォォォォ!」

フィーナ「7ナマコぐらい差をつけて勝ちそう」

フィオ「絶対強い」

ナマコブライアン。リーヴィアが密か(?)に応援している出走魚の名である。

序盤からそれなりの位置をキープして泳ぐだけのポテンシャルがある魚(?)だが、
その真価は終盤になって現れる。

なんとナマコブライアンは進化するのである!
まさに「戦いの中で成長していると云うのか……!」状態だ。

七色に光り輝き(OPを使ってるのだろうか?)、脚が生えるナマコブライアンは子供たちに大人気。もちろんリーヴィアも大喜びだ。

皆が走る中一人だけ自転車を漕いでる的なズルさはあるが、何はともあれ走るナマコブライアンは早い。

7位だったナマコブライアン、進化後は前方の出走魚たちをごぼう抜きにし、ゴールテープをその身で切った!

リーヴィア
「やったぁ! ナマコブライアンさんが一位です!」


You get!!
4200SCゲット!

チケット代の1000SCを差し引いても、3200SCの儲けである!

勝った 勝った 今日の夕食はクイニーアマンだ!




フィーナ「おい、あれズルじゃないのか?」

フィオ「私のログにはなにもないな」

フィーナ「ギャンブルは僕達を熱く狂わせるからなぁ……」

フィオ「一回の儲けがかなりあるし、カジノ船にしては寺銭もすくないんじゃないの」

フィーナ「食事は栄養バランスを考えてしっかりとろうね」

フィオ「大勝利の裏でピュアさんがなにやら不穏な空気を捉えて……? 何かあったのかな?」


33回




噂によれば、カジノ船ビッグウェーブが巨大ロボ染みた変身を遂げたらしい。
しかしそれも、あの「夜の鳴る洞」を含む海賊/海賊狩り/その他探索者たちに退治されてしまったようだ。

違法ショップを取り仕切っていたのがベティであることは周知の事実になった。
常連の海賊たちは薄々感付いていたらしいが、こうして公になったことは大きい。

今後ベティが表舞台に出てくることはあるのだろうか。
或いは、開き直って堂々と悪事を働くかも知れない。

ロザリアネットは今回の件をどう思うだろう。
地下強制労働施設の看守さえ務める彼女は、きっと正義感が強い。
身内の悪事を赦すだろうか?




ビッグウェーブ戦を経て、より経験を深めた海賊たち。
海底杯や、辻試合ではぶつかることもある筈だ。


フィーナ「多くの場所に同時出現するカジノ船……謎が多かったけど、巨大ロボだったのならしかたないな」

フィオ「え、いや流石に同時出現は」

フィーナ「しかたないな」

フィオ「そーかなー
ところでベティさんの悪事が表に出てしまったみたいだけれど」


フィーナ「この海の人たちは皆一筋縄じゃ行かないけれど、黙認してたカジノ船が敵対行動に出たとなるとかなり大きな騒動がありそう、かな」

フィオ「ロザりんは……どうなんだろうね」


フィーナ「探索とは別に進んでいる海底杯。そっちでは順調な様子で」

フィオ「少なくとも暑くないのはいいよね、
マゴイさんの苛烈な攻撃がかなり効いたみたい」


フィーナ「勝てないと思った相手に勝てたことで、成長を実感できた感じ? 作戦がしっかりとハマったってのはあるけれど、作戦がハマっても実力差でねじ伏せられることもあるからね」




変わっているのは、彼だけではない。
イッカクも何か、決意を新たにしたらしいことが感じ取れる。
サンセットオーシャンの過酷な環境が、海棲生物達に耐性を与えたのと同様に、
探索者たちにも変化をもたらしている。

きっと私たちもこの海に適応している!


フィオ「そんな中でホーリーさんも新しい技を開発しようとしているけれど……」




変わっているのは、彼だけではない。
イッカクも何か、決意を新たにしたらしいことが感じ取れる。
サンセットオーシャンの過酷な環境が、海棲生物達に耐性を与えたのと同様に、
探索者たちにも変化をもたらしている。

きっと私たちもこの海に適応している!







ホーリーは、新しい技を開発しているらしい。
フラッシュオーバーを軸とした、次なるスキル。

なるべく多段攻撃が良い。
その間隙に、鎖で相手を絡めとる。
態勢を崩し、ガードを崩す。
体感だが、ダメージはおよそ4割増しになる。

だが、あと一歩が足りない、とホーリーは云う。
フラッシュオーバーの最大18連撃を超える、24連撃。
それを実現するには、一人では足りない。
物理的に足りない。

アイラやリーヴィアは攻撃には不向きだ。
体格や性格がそれを告げている。

ピュアは、ポテンシャルこそ秘めているが、誰も傷つけることができないという制約を掛けられている。



フィーナ「ホーリーさんの不敵な笑み。最後の声は果たして……?」

よォ、






随分、遅かったじゃねェか。



34回



フィオ「コラージュのような一ページ、それは思い出となって、後に振り返るものになるのかな?」


35回



サンセットオーシャンの岩礁から、空を見詰めている。

夕凪の海、朱色の九天。


朝も夕もない。
昼も夜もない。

無窮の刻を、太陽の海は刻んでいる。


身を焼くような熱波も、ひりつくような陽射しにも、少しずつ慣れてきた。
だが、この海の果てを思い描いた時、心が乾いて仕方ないのだ。

見果てぬ先に、海の向こうに、何があるだろうか。
財宝の光か?
新たなる扉か?
邪悪なる野望か?

羅針盤が指し示す方角に縋って、進んできた。
またある時は、潮の流れに沿うように。
スキルストーンの意思に従うように。


フィーナ「サンセットオーシャンを進む旅路の中で、慣れと共に描くのはこの先のこと」

フィオ「まだ待ち受けているものが何かはわからない、でも確かに感じるのは……あまりいいものではなさそうってこと」

フィーナ「それぞれの『導き』はあったにせよ、全てはこの先に集約させられているようだね、果たしてそこには」

テリメインの裏舞台で、闇が蠢いている。
海賊ではない。無論、海賊狩りでもない。

もっと、茫漠とした何か。
探索者たちはいずれ、その巨悪に立ち向かうことになるだろう。


裏舞台が表舞台に反転する時、
そして、自分たちが役者としてその舞台に上る時、
最後の戦いが始まるのだろう。


フィオ「見えない場所で蠢くモノ。でもそれは確実にあって、この先での邂逅を予感させている」

フィーナ「かくして役者は舞台に上がり――か。
最後の一節。『半日前』がリーヴィアさんが舞台へと歩む分岐点になるのかな?」



36回



フィオ「今日も暑くて眩しいサンセットオーシャン……かとおもったら、何か様子が変だね?」


仄暗い空に散らばった光。
暗幕に針で穴をあけたようにも見える。
その一つ一つが宝石を思わせるように、鮮やかだった。

溢れんばかりの光が空を覆っていた、サンセットオーシャンとは雲泥の差である。
サンセットオーシャンを抜けたのだ、という実感が伴う。
ここではただ、闇が鎮座しているだけだ。

先の戦闘を思い出す。
マゴイ、イッカクと共に、三匹の魔物と相見えた。

リーヴィア
 (潮の流れを読み間違えたのかなぁ。
 ……ううん、そんな筈はないはず)


フィーナ「周りの景色が随分と違ってる、テリメインでそうなるってことは、別の海域に移動したってことなんだろうけど、どうやら予定したとおりの動きじゃなかったみたいだね」


ステラマリス。潮の流れを加速させ、操る。
そうして水中での動きを容易にさせる。
八十八星座の加護を持つ、アイラならではの能力だ。

アイラとは長い付き合いになる。
リーヴィアが最初に契約した精霊が、アイラだ。
もう四年も前になる。
アイラは外見も中身も幼い。リーヴィアでさえ、思うほどに。
しかし時折、誰よりも鋭く真実を視抜く慧眼を持っていた。

治癒の能力は相当だが、加速能力にも一定の信頼を置いていた。
今更アイラが潮の操作などに失敗する道理はなかった。

今回、ステラマリスが暴走し、リーヴィアが流されたのは、
何か大きな力が働いた、と考えるのが自然だろう。

それは、この海に来てから、幾度となく感じたことだ。


フィオ「いつもなら何の問題もなく行使できている術。それが想定どおりに働かなかった事に、リーヴィアさんはこれまでにも感じていた『大きな力』の存在を再び自覚する」

フィーナ「二人? と離れ離れになって心細さが襲い掛かってくるけれど、その二人との出会いもまた『大きな力』によるものじゃなかったのかと」

だが、その二人との出会いだって、決して自然なものではなかったように思う。
イッカクはなぜ、リーヴィアとマゴイを自身のもとへ招いたのだろうか。

イッカクは、自分たちの事を「護るべきもの」として認識してくれている。
それは嬉しいことだ、と思う。
だが、なぜ自分たちだったのだろう。

例えば、アルミたちではダメだったのか。
リリーはどうだ。ネクサは?ポワロは?
掃海屋は?夜の鳴る洞は?

他にも大勢、探索者はいる。
だが、リーヴィアが選ばれた。

もう長く旅をつづけた仲間だ。今更疑うわけではない。
しかし、疑問が尽きることはなかった。

デウス・エクス・マキナ。
機械仕掛けの神。

実在するかは分からない。
だが、それに相応する存在が、自分たちを操り、導いているのではないか。

そう思わずにいられなかった。


フィオ「それはまさに運命! ……ナノカナ?」

フィーナ「運命なんてないよ。起こる前から決まったことなんて何もない。後から見たらどれだけ不思議な出会いでも、きっと偶然の産物なんだ
でも、運命的な出会いはあるかもしれない。そういう出会いを経て、強い絆で結ばれた仲間になっていくのではないか、ともおもう」


フィオ「でも、この状況を導いたのは何かわからないよね」

フィーナ「……わかんにゃい」

フィオ「離れ離れになることの意味、先の海域へと流されること、ま……再会すれば嬉しいし、そのための前座だと思えば」

フィーナ「ちょっとしょんぼりしちゃってたけど、話し合って落ち着くとこには落ち着いたみたい」


リーヴィア
「迷子になるのは私の性質とも言えるから……
 アイラちゃんのせいではないです!」


次元さえ超えて迷子になる。
幾つもの異世界を渡り歩いた経験が、不思議と自信を与えてくれた。
この状況だってどうともでもなる。アイラやホーリー、ピュアさえ居れば。



フィオ「ダイナミック迷子」

フィーナ「同じ世界なのだし、探す人もいるのだからヘーキヘーキ」

フィオ「かけがえのない精霊さん達もいるわけだしね」

フィーナ「さてそこに現れた新しい気配……はたして」



素早く、振り返る。
そこにいたのは……ふたりの獣人だった。

ピュア
「探索者……でしょうか。」


ピュアが掠れた声で囁く。
しかし、リーヴィアの思考はあること≠ナ埋め尽くされていた。

リーヴィア
「もふもふさんだ……!もふもふしたい……!


フィオ「もふもふは全てに優先する」

フィーナ「大丈夫? ディーププラネット製のもふもふじゃない?」


37回



ディーププラネットにも魔物は棲息していた。
サンセットオーシャンとは違い、海賊も出没するという。

しかしこの海は静かだ。
海賊は、静けさを好むのかも知れないと思った。

リーヴィアも静かなところは好きだ。
けれど今は、どこか寂しい。


フィオ「最後の海ディーププラネット。いつも通りと、いつも通りでもないこと」

フィーナ「それはどうなんだろう、静かなほうがやりやすい人もいるし、さわがしいほうがやりやすい人もいると思う。で、『海賊』に限定するなら騒がしいほうが色々便利なんじゃないのかな」

フィオ「不意打ちとかもできそうだしね、でも出現するってことは?」

フィーナ「全てがここに集まっているって事の証左じゃないのかな」

フィオ「静けさを好む理由、その上で寂しさを感じる理由。それはかつて語られた『あの場所』での記憶に原因があるみたいで」

フィーナ「たった二人しかなれなかった精霊魔術師見習い。『全てを捨てた』リーヴィアさんの道は……」

長い間、孤独と静けさだけがリーヴィアの友人だった。
良き理解者だった。

大聖堂の子どもたちは、どこまでも子どもだった。
勉強に飽きれば遊び始める。相手が気に入らなければ叩く。

努力を知らない、知性の欠けらもない。
リーヴィアにとって彼ら彼女らは、別の生物のように思えた。

大聖堂に於けるリーヴィアの生活は、精霊を召還することが全てだった。
精霊は、きっと人間とは違う。
良き友人になれる。
そう思い、ひたすらに勉学に励んだのだ。

リーヴィアがアイラと仮契約を結んだのは、14の時だ。
14での仮契約は、同期の中で最速だった。
その一ヶ月後、もう一人仮契約に成功していたが、それに続く者はいなかった。

アイラは、騒がしかった。
よく笑い、よく泣き、よく喋った。

そして、
いろんな表情を、色を、感情を、アイラは与えてくれた。


フィオ「唯一つ契約のためだけに邁進する日々、いまのリーヴィアさんからは想像もつかないような、冷たいとすらいえる割り切りだね」

フィーナ「……よくわかるな。結果として成果をあげて。
……もしかしたらアイラさんはそのときのリーヴィアさんが思い描いていたような子じゃなかったかもしれないけれど、彼女が与えてくれたものは、その彩りは、それまで全く知らなかったものだったと思う」


フィオ「シンパシー?」

フィーナ「そうだね。リーヴィアさんと私ちょっと似た様なところがあった」

フィオ「そして、この出会いがあったからこそ」

精霊たちと出会って、リーヴィアは静けさを寂しいと感じるようになった。
誰かが隣にいて、騒がしくしてくれることを好むようになった。


いまは、近くにマゴイとイッカクがいないことが寂しい。

二人がいれば、ディーププラネットも寂しくなくなるのに。



今はただ、そう思うばかりだ。


フィーナ「いくら同じ世界にいるといっても、いつかは追いついてくれると信じていても、二人なら必ずと思っていても、この寂しさは拭い去れるものではないし、拭い去る必要があるものでもない」

フィオ「その寂しさこそが、きっと二人とのかかわりの深さだから。
……私も再会を待つ身だからよくわかるなぁ」



38回



フィーナ「再会はまだ、リーヴィアさんが考えるのは」

ディーププラネットの漣に身を委ねながら、リーヴィアは考え事をしていた。
この海に来た目的のこと。今後のこと。

結局のところ、リーヴィアはお金が欲しい。
生きていくために必要なものだし、夢を叶えるにもお金がいる。
日に日に収入は良くなっているけれど、同じペースで出費が増えているのでは意味がない。
しかし、先に進むためには良質な装備が必要だった。
海を焦がす魔法も、傷を癒す魔法も、お金を払わなければ手に入らない。

強くなる必要があった。
力は、際限なく追い求めることができるからだ。


フィオ「自分の目的を果たすためのお金、それを貯めるための探索だけれど、探索を進めていくためにもお金がいる」

フィーナ「ここをケチると進めなくなって結果的に収入がなくなるって事にもなりかねないからね。探索がほぼ全ての収入源という現状だと、それに十分に投資していかなくちゃ」

フィオ「幸いなことにまだ海賊との邂逅はなし。アンコウの被り物……あぁうん」

フィーナ「アンコウ……虫……」

フィオ「それらは恐ろしい一方、返り討ちにすれば多くの収入も得られる、もちろん全てのお金を失う可能性もあるけれど……」

フィーナ「積極的に立ち向かっている人たちもいるわけだしね。ギャンブルとどちらが効率がいいのかは私にはわからないけれど」


39回




水平線の彼方に、巨大な影が現れた。
幾つものギザギザは尖塔と見紛うが、違う。
リーヴィアにはすぐ分かった。

あれは、氷山だ。イッカクさんだ!


フィオ「待ち人。来る」

フィーナ「離れ離れになった時間は、一緒にいた時間に比べれば短いものだったけれど、その寂しさも喜びも、そんなものに関係なく大きなものだったろうね」

三者は暫し再会の喜びを分かち合った。
マゴイもイッカクも変わりなかった。
むしろ、以前より頼もしく見える。
あのサンセットオーシャンを抜けてきたのだ。
幾つもの困難を乗り越えて、迎えに来てくれたのだ。


フィオ「困難な海を乗り越えて自分を迎えに来てくれたかけがえのない仲間達。短い間一緒にいてくれた人たちにももちろん感謝だけれど、この組み合わせはやっぱりしっくりくるね」

フィーナ「その人たちはいつの間にか姿を消していたみたいだけれど、今度手紙を出そうとしているとのことで、しっかりとどくといいね」


40回



フィオ「いつもの三人で進むディーププラネット。最果てを目指して、ここまでやってきたほかの探索者さん達とも情報交換していると、なにやら大きな動きがありそう……?」

近頃冒険者たちの間で話題になっているのは、海底探査協会の闇についてだった。
確かに海底探査協会がキナ臭いのは事実だ。
しかし、彼らを悪と決めつけていいのか、リーヴィアは考えあぐねている。


いま、冒険者たちは己の立場を表明しなければならないところまで来ていた。
即ち、海底探査協会の味方になるか、敵になるか。



フィーナ「薄々と感じていた黒い気配はこれだったのかな、どちらを選ぶにしても、多くの敵を作ることになるだろうし、大きな戦いは避けられない」

フィオ「正解はどっちなのか、そもそも正解はあるのか、選択のときはそう遠くない」

潮騒が聞こえる。
いまはまだ、この星空の海で、平穏に旅を続けたい。
いずれ訪れるであろう、戦火の渦に巻かれるその日まで。



41回



フィーナ「お休み回(お休みとはいってない」

フィオ「ラストに向けて色々準備……かな?」


42回



フィーナ「ディーププラネットを一行は行く。延々と広がる星空の下で、迫り来る終わりと、未達の問題について」

フィオ「イッカクさん便利だな……と」

氷山はゆっくりと海を流れている。
他の探索者たちは長期潜航をしたりして海を探索しているのだが、その点リーヴィアたちは楽だった。

ふかふかの毛布に埋もれながら、リーヴィアは寝返りを打った。
今が昼なのか夜なのかは分からない。
ディーププラネットに来てから、昼夜を問わず星空が頭上を覆っているからだ。
まるで巨大なプラネタリウムのようだった。

旅の終わりは近い。
それは薄々気付いていたことで、しかし解決されていない問題は山積みだった。


フィーナ「主に三つの問題が。終わりがなんとなくわかると、達成できるか心配にもなるよね」

まず第一にお金が集まっていない。
第二に、海底探査協会とどう向き合っていけばいいのか分からない。
第三に、イッカクが何者なのか、全くわかっていない。

天井に向けて手を伸ばした。
氷壁の先にある星空を思い浮かべる。
手を伸ばせば届きそうで届かない光。

掴んだとて、水のように指の隙間をすり抜けていく。


フィオ「星は、光は、届くようで届かない、あざ笑うでもなく、ただ届かないという事実を突きつけてくる、それはまるで解決しない問題のようでもあるけれど」

フィーナ「掴めないなら掬えばいい、届かないなら……もっと手を伸ばせば」

フィオ「ま、問題のほうは、解決できないってワケじゃあないと思うけど、やっぱり焦るな」


44回



ディーププラネットには、大きな力が眠っているという。
それは邂逅した他の探索者たちも度々口にしていたことで、
偶然彷徨い込んだリーヴィアたちは別として、多くの探索者たちはその力を求めて星の海までやってきたらしい。

そうして今、シュテルンと名乗る男がリーヴィア達の前に現れた。


フィーナ「全てが一同に介す、ディーププラネット。そしてついにあの男が――」

フィオ「ついに!」

フィーナ「一体何者なんだ……」

フィオ「何者だろう」


リーヴィア
「そういえば、海底探索協会会長自体を見たことがありません!」

アイラ
「最近は海底探索協会の黒い噂を耳にするのです!
 それが、あのシュテルンとかいう人の独断だったとしたら?」

ピュア
「力を手に入れたい……誰しもが思うことでしょう。
 しかし、紛い物の力です。自らの内側から出てくる強さではない。
 そんな力を求める方が、果たして正しいと言えるでしょうか?」

全員が全員、シュテルンに対して懐疑的だ。
どうにも信用しきれない。

リーヴィア
「とはいえ、行かないわけにもいかないです!
 あの人が悪いことを企んでいるのなら、止めないと!」

思惑はどうあれ、他の探索者たちも星の渦を目指し始めている。
いまは歩調を合わせ、現場へ出向くしかないだろう。


フィーナ「ここのところ、不審な動きが続いていた探索協会とその会長代理を名乗るシュテルン、これには流石に全員が怪しさを覚えたみたい」

フィオ「でも、リーヴィアさんのいうことはごもっとも、悪は止める」

フィーナ「そうかな? 君子危うきに……じゃない?」

フィオ「そんなこと全然考えてないくせに」

フィーナ「まーねー。それになんか何処に逃げたって、危なくないトコなんて無いような気がしてきたよ」


46回



名うての探索者が数十人も集まって、それでも開幕の攻撃を耐えられたものは片手の指で数えられるくらいだった。

アンドロメダ。
今までのどんな強敵より手強いことは事実だろう。


フィオ「終局へと向かっていく中、障害として立ちふさがる相手も尋常じゃない」

フィーナ「開幕から全開とか、フィオだったら10回はやられてるね」

フィオ「20回は軽い。
さておき、突破する方法も見えてはいるみたいだしなにより」


探索者たちは思うだろう。
やられてもいい。やり返せば、それで終わる。


フィーナ「すさまじいね突破できるまでやれば、そのうち突破できる。けれども」

フィオ「ふるいにかけてくるような終盤戦、はたしてその果てに待ち受けるものは」


47回



アンドロメダ戦の参加者には、莫大な褒賞が与えられた。
初回から参戦し続けたリーヴィアも例外ではなく、15万SCが手元に入った。
手持ちのSCと合わせれば、16万SCにもなる、大金だ。

リーヴィア
「これだけあれば……当座の資金には困らなさそうです!」

無論、宿屋を建てるには圧倒的に不足する額だ。
それでも、元手になることに間違いなかった。

アイラ
「ディーププラネットの景色も見れたし、纏まったお金も手に入ったし……
 これで目的は達せられたのです!」

この海にやってきた、二つの目的。
その二つが達せられた今、これ以上七つの海に留まる必要はなくなった。



フィーナ「思わぬ収入、それだけ強い相手だったってことなんだろうけど」

フィオ「アンドロメダさんはもしかしたらドラゴン族だった……?」

フィーナ「とりあえず、自分の目的は達成した、でも」


ホーリー
「しっかし、魔王復活の報はどうするよ」

アンドロメダを制した。しかしその代償はあった。
魔王の復活。スキルストーンが齎した情報だ。

リーヴィア
「魔王さん、案外いい人だったりして!」

案外いい人だったら、復活しても問題はない。

ピュア
「しかし、魔王と呼ばれるくらいですから。
 とてもいい人であるとは思えませんね。」

ホーリー
「まァ、そこら辺は実際に会ってみなきゃ分からねェが……
 封印されていたって事は、それなりに実害のある存在なんじゃねェかと思うね」

リーヴィア
「んー……どうしよう」


フィオ「悩むリーヴィアさん、どうするのか、導きはあるのかもしれないけれど、選択はいつだってその人の自由だ」

相手は魔王。ラスボスだ。
恐らく、海は今までになく荒れるだろう。
魔王に与する者、仇成す者、海を荒らす者、鎮める者……。
様々な思惑がぶつかって、きっといいことは起こらない。

アイラ
「迷ったなら、取り敢えず会いに行けばいいと思うのです!
 案外いい人だったら仲良くすればいいし、わるい人だったら成敗すればいいのです!」

リーヴィア
「……」

リーヴィア
「……よし!」


フィーナ「答えは出たみたいだね。シンプルな。それでもゆれない答えが」


48回



今まで思い思いのルートを通って旅してきた探索者たちが集い始めている。
今までも、そういう節目はあった。
集まって、離れて、ぶつかっては散っていく。
探索者たちの間柄は、そんなものだった。


フィオ「終局へ向かって。これまでもあった、潮目のような幾つかの場所
それも多分、きっともう最後」


いま、魔王を中心に、嵐が吹き荒れている。
探索者たちはぐるぐると廻り続けていた。
真ん中に大きな空洞があった。

その空洞が、いま埋められた。



いま集った探索者たちは、最後まで離れることをしないだろう。
彼らが散る時、それは即ちすべてが終わる時。

七つの海の物語の、終幕だ。


フィーナ「舞台は整った。探索者たち自身が観客で、探索者たち自身が役者の最後の演目。配役も自分で決めるといい」

フィオ「最後まで踊り続けるのは誰になるのかな、さぁ、時は来た!」


49回



この世界では、私にはよく分からないことばかりが起こります。
分かることが10あったとして、あとの90は分かりません。


フィーナ「一人で静かに語るような、でも決して一人じゃないような、リーヴィアさんの言葉たち」

フィオ「わからないことを一つわかっても、そこからまたわからないことが生まれてくる、だからこそ、世界は面白い」

生まれてから、16歳になるまでを大聖堂で暮らしてきました。
大聖堂の暮らしは、分かることばかりでした。
先生たちは、分からないことを、分かるようにしてくれました。

精霊のこと。
精霊を召喚する方法。
精霊と契約する術を、能力を、知識を、与えられました。

きっと私は、他の誰よりも精霊さんについて詳しいです。
でもそれは当たり前のことです。
大聖堂では、精霊のことしかありませんでした。
ほかのすべてを捨てていたのです。


フィーナ「閉ざされた場所で、閉じたことを学び続けて、それに関してはもしかしたら全てわかったのかもしれない、だってそれしかなかったのだから」

フィオ「唯一つのことだけに向かう日々、でもあまりポジティブなものじゃなかったよね」

大聖堂を抜け出して、初めて世界は彩りを覚えました。
風に匂いがあることを知りました。
たくさん人がいることを知りました。
クイニーアマンという美味しいパンがあることを知りました。
1つずつ、分からないことを分かるように塗り潰しながら、私は過ごしています。
毎日がスタンプラリーみたいです。

幾つスタンプを押しても、まだまだ世界は分かりません。
どうして太陽は赤いのか。
どうして星は綺麗なのか。
どうして氷山は喋るのか。
私にとってはどれも等しくびっくりすることで、新鮮です。


フィーナ「風の匂い、たくさんの人、そしてクイニーアマン」

フィオ「閉ざされた場所から飛び出して見えた世界は、たくさんの色に満ちていて、綺麗な色も、もしかしたら汚い色もあって、でもその全てがリーヴィアさんのスタンプ帳に押されていくんだろうね」

私の仲間は、精霊さんたちだけだと思っていました。
人間はあまり好きじゃないと思っていました。
でもいま、マゴイさんもイッカクさんも一緒にいて、
皆がいて、私は満ち足りるのです。
誰か一人でも欠けて欲しくないと思ったのです。


フィーナ「いろんなことを知って、変わらないこと、変わったこと、そして一つの願い」

魔王を倒したら、どうなるのだろう、と考えました。
テリメインは平和になるのでしょうか。
観光地になるのかな。色んな生物が棲み着くのかな。
そうしたら、もう一度初めから、この海を観光したい。
イッカクさんに乗って、マゴイさんとトランプをして、
またディーププラネットの星空を目指したい。


フィオ「目的は達成した、この海にいる理由も特に無い。でももう一度最初から」

フィーナ「探索の旅路を今度は観光の旅路で。そうして見える星空は、また違った表情を見せるのかな」

いまは魔王とコラボしたシュテルンさんを倒そうと思います。
なんか悪いことをしているから。
反省したら、許してあげようと思います。
あ、でも罰としてクイニーアマンを買ってきてもらいます。

それで皆でお茶会をしましょう。


フィオ「コラボ」

フィーナ「星5シュテルンもらえる」

フィオ「もらえない」

フィーナ「(´・ω・`)」

フィオ「多分一番悪い人、でも反省したら許すよ」

フィーナ「リーヴィアさんらしいね、そのお茶会は、きっとにぎやかで、楽しいものになるだろう。クイニーアマン代金は……協会にツケといて」


50回




数多の探索者が一堂に会して、それでも魔王シュテルンは上回った。
だが、撤退した探索者たちから、精気は失われていない。
むしろ、勝ち≠確信しているかのようだった。

結局のところ、戦いは如何に手を隠すかに集約される。
熟練した探索者たち同士の戦闘は、手の読み合いだ。
互いに膨大な手札を持っているから、自分の手を隠しつつ相手の手を読む。

魔王は一通りの手しか持っていない、ように見える。
少なくとも今まで対峙してきたボスたちはそうだった。

一通りしかない手は、幾ら価値が高かろうと必ず攻略される。
無数のスキルストーンが、引導を渡す。
始まりから終わりまで、テリメインの物語の主役はスキルストーンだった。


フィオ「いまじゃ、パワーをスキルストーンに!」

フィーナ「いいですとも(持ってない」

フィオ「ずっと一緒に歩んできたスキルストーンと探索者。だから信じてる、その力もそれが何をできるかも」

握りしめた掌に、スキルストーンのぬくもりを感じる。
淡い光が漏れて、まるで産声を上げたがっているように。

長い間、ずっと一緒だったんだねえ。
いつか手放してしまうものだけれど、その温度は忘れない。

光を忘れない。

思い出を忘れない。



51回



彼方此方から光が溢れている。
魔王が倒されたことで、その魔力は海へと還元された。
今度は、テリメインを覆っていた海から、木漏れ日のように魔力が抜け出して、
ディーププラネットの無窮の空へと昇っていくようだ。

これで全部終わったんだ。
世界征服を企む魔王を倒して、テリメインは平和を取り戻した。
いま海に覆われしテリメインも、やがては元の姿を取り戻すだろう、とロザリアネットは言った。
きっと元来、この辺りには大陸があったのだろう。アトランドなんかはその名残だったのかもしれない。

未開の地もなくなって、探索者たちは海から引き上げていった。
潮が引くみたいに、賑わいは彼方へ消えていく。
私たちも、行かなきゃ、と思う。
だって、全部終わったのだから。


フィーナ「最後のお話。全部が終わったから、いかなくちゃ」

これから何処へ行こう。
まとまったお金が手元にあるから、これを元手にして商売を始めるのがいいかもしれない。
宿屋を建てるにはまだまだ足りないけど、パン屋を開くくらいなら出来るかもしれない。
リーヴィアちゃんの作ったクイニーアマンが食べたいのです!とアイラちゃんが言った。私も、何でもいいからクイニーアマンが食べたかった。

イッカクさんもマゴイさんもこれでお別れだ。
元々示し合わせたわけでもなく集った三者だから、共通の目的がなくなったいま、離れ離れになるのは必然なのだろう。
二人とも元気に過ごせますように、と祈った。祈るのはずいぶん久しぶりだなあと思った。


フィオ「旅路をもう一度、は叶わなかったんだね、……そういうこともあるよね」

フィーナ「この先も一人ってワケじゃないしね、精霊さんたちはもちろん、思い出もリーヴィアさんを一人にはしないだろう」

世界は私の知らない色の光で満ちていて、けれどどの色にも染まれない自分がいた。
窮屈な大聖堂の一室で、ひとりきり本を読んでいた。
皆は色鮮やかで、私だけモノクロで、どの光なら私を照らしてくれるのだろうとずっと焦がれていた。
窓を開いて、扉を開いて、そよぐカーテンをかきわけて外へ飛び出したら、知らなかった色に少しだけ馴染みを覚えたんだ。

遠くで淡い光を纏うイッカクさんを見詰めている。
少し前まで其処にいたのに、こうして離れて見ると新鮮だ。


フィオ「知らなかった色は。触れてみたら、案外なじむものだったよね」

フィーナ「焦がれているだけじゃなくて、そこから飛び出したから、その勇気が、きっとその色を教えてくれたんだよ」

私は見ていた。氷山の光を見ていた。
首に掛けたメノウが、光を受けて踊っているようだ。
目が眩むくらい鮮烈な光が満ちて、思わず目蓋を閉じた。


それでも私たちは、眩しさに夢を見る。


私の知っている光があること。
私を知っている光があったこと。



私は踵を返した。
また会える。きっと会える。
私がそう願うことで、それは現実になる。
そう信じているから。



リーヴィア
「……またね」




テリメインに、別れを告げた。
まだ知らない場所へ向かうために。



フィオ「さよなら、じゃなくて、またね。次の物語を綴るためのピリオドはここに確かに」

フィーナ「最後の日誌と最後の絵。鮮やかな光を見送って、新しい夜明けが、空の向こうからやってくる。
おつかれさまでした!」



posted by エルグ at 18:26| Comment(0) | 日記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: