2018年02月16日

第十四回日記感想・後半



(TOPに詳細)新しい書き方を試した結果、文字数が大幅に増えてしまったため
別記事として分けさせていただきます。

Pno1192:イリューザさん

Pno1213:弁天ちゃんさん

Pno1245:Z姫さん

Pno1340:モニカさん

Pno1457:こくりさん

Pno1461:リンシャンさん

Pno1473:アイリさん

Pno1659:リンスさん

Pno1730:スヴェータさん

Pno1858:トリスさん


イリューザさん Pno:1192

"イリューザたちとは別、海賊達が日々抗争を繰り広げながら進む海路の先に、
渦潮の海《ストームレイン》が拓けたという。

これで7つの海のうち4海域、半数以上に到達した事になる。
探索が始まってからまだ2週間も経過していない。
"世界"内外から歴戦の猛者達が集結しているから、というのもあるかもしれないが
このペースで進めば1ヶ月程度でこの"世界"を制覇できてしまうのではないだろうか。"



フィーナ「確かに。考えてみると新しい海が開けるペースはやいよね」

フィオ「今ではもう全て開けちゃってみるみたいだからね。ただ――、見えている場所だけが全てなのかはわからない」

"海域の発見自体はアトランドと同時期だったという話だが、
こちらの件については当日中に耳に入ってこなかった。"



フィーナ「注意はしていたけれど、情報を仕入れるのはちょっと遅くなってからだったみたいだね」

"また、レッドバロンなら周辺の海水温度の上昇、アトランドであれば
海中に浮かぶ島々とその海域における分かり易い特徴が見られたが、
そのような兆しに関しても今のところは一切聞き及んでいない。"



フィオ「異名からすればやたら渦があってもおかしくないんだけど、ただ進みやすい海じゃなさそうだよね」

フィーナ「名前のほうも嵐が吹き荒れていそうだしね、でも何で情報が遅れたのかな」

"単純に聞き逃がしていたのであれば自身の手落ちと反省するだけだが、
何しろ海賊達――と、一応、海賊狩りの面々――の跳梁跋扈する海域である。
意図的に隠蔽されていた可能性もなくはない。のだが、一日そこらで割れる情報に
そこまでする価値もまたないはずである。単に前者、聞き漏らしていただけだろうか。"



フィオ「確かに。最短突破者だけが何らかの恩恵を受けられるのならともかく、この短い期間だけ隠蔽する労力のほうが大きそうだよね」

フィーナ「それでも聞き漏らしってのは慎重なイリューザさんには珍しいなって思ってたんだけど……」

"大災害『カラミティ』の影響か、自身はそう思っているつもりはないものの
激流に対しての恐怖心が深層意識に根付いており、イリューザは無意識のうちに
この海域へ行く事、そもそれに思い至る事をすら、避けようとしていた。
アトランドと同時に提示された選択肢であるにも関わらず、新たな海域と聞いてなお、
レッドバロンほど興味を示さなかったのには、進行ルート上海賊達が
多く進むと思われる海域というだけでなく、そのような背景があったからであろう。"



フィオ「……小さいころに刻み込まれたトラウマだろうからね。でも、あまり縁のないであろう海域でよかったかも」


"しかし今はストームレインよりも海中島の海《アトランド》に注力しなくてはならない。
何しろ明確な危機が今まさに目の前に迫っている。"



フィーナ「『ガーゴイル』だね。しかもそれは自分が想定していたやつよりも、もしかすると厄介そうなもので」

フィオ「水分や空気を奪う力。『門番』としては最適かもね、長期戦でもするとなるとジリジリと壁際に追い詰められちゃう」

"やはり事前に情報を収集できる今の立ち位置に留めておいた方がよさそうだと
イリューザは改めて思った。最適な準備をするにはまだ足りない、とも感じるが
それでも情報のあるとないとでは、採れる対策の幅が段違いだからだ。"



フィーナ「決して奢らない。自分達がまだ未熟だという自覚があるからこそ、備えて備えて、その上で負けても、その次のために備える」

フィオ「準備しすぎてしすぎることはないかな。やりすぎて疲れちゃったりすると逆効果だけど」

"暫く進むと、開けた場所に出た。
眼前に大小の『島』としか表現できないものが、海中、そして見上げると海面、
空中にまで浮かんでいる。聞くのと実際に目にするのとでは感想も全く異なる、
美しい、とはまた違う、実に不思議な光景が広がっていた。

海中島の海《アトランド》、その玄関口とも言える領域へと踏み込んだ。
これらは滅びと共に沈んだ、元は海の上に在った陸地の別の姿なのかもしれない。"



フィーナ「見えてきた『アトランド』一体どんな過去があって、こんな海が作られたのかはわからないけれど、本当に不思議な海だよね」

フィオ「陸地が沈んだとして、こういう形に保持されるのはどんな影響なんだろうね」

"一方的に浮くでも沈むでもなく、この島々がその位置関係を静かに維持しているのは
水や土、風のエレメンタルの力が絶妙に保たれている為だろうか。"



フィーナ「イリューザさんの説。……説得力がある」

フィオ「いま、ヨガと比べたでしょ?」

フィーナ「光景は不思議だけれど、それ以外の部分はコレまで進んできたところとあまり変わらないみたいね、そして――」

"その遺跡の番人か守り神かに扮した異形の存在が、擬態を解き近付いてくる。
情報通り、その数6体。振り返らず後方の2体に合図を送り、身構える。
策は練ったつもりだ。それが功を奏せばいいのだが。"



フィオ「練った策。準備した心と身体。『門番』との一戦。結果は果たして」


弁天ちゃんさん Pno:1213

"ガーゴイル(英: gargoyle)は、怪物などをかたどった彫刻であり、雨樋の機能をもつ。彫刻のない雨樋はガーゴイルとは呼ばない。また、雨樋のうち彫刻のない部分もガーゴイルといわない。本来の意味である彫刻としてのガーゴイルは、主として西洋建築の屋根に設置され、雨樋から流れてくる水の排出口としての機能を持つ。
(出典:Wikipedia)"



フィーナ「引用を引用」

フィオ「あくまで雨樋としての役割なんだねぇ」

"なんでガーゴイル海の中にあるの
なんでガーゴイル海の中にあるの

大事なことだから二度言ったよなんでガーゴイル海の中にあるの(三度目)"



フィーナ「大事なことなので。確かにこの説明をかんがみると海の中にある意味がわかんないよ」

フィオ「やっぱりもともとは水上に、って皆考えるよね。水路。水路か……」

"ただそれなら水没までしたのに元気に動いてるガーゴイルは何者なの
元々水中でも動けるように調整されたガーゴイルってことなんだろうか
いや石像を水陸両用にするくらいならもうちょっと何かやりようあるでしょ、なんなのここ"



フィーナ「最初から魔法が編みこまれていた、とは考えにくいかな。だとするとこの海の魔力が石像に影響をあたえたとかかな?」

フィオ「だとすると探索者も魔物になりえるってこと?」

フィーナ「……んースキルストーンがあれば大丈夫じゃない、か?」

"なんでもこいつら脱水なるデバフ、じゃない状態異常をこっちにふっかけてくるらしーよ
水の中で脱水かー
やばいねなんか喉乾いてきた。喉乾いてこない?
終わったらビール飲もうビール、な!"



フィオ「水を摂取する能力を減退させているのなら、デバフともいえるかもしれない」

フィーナ「お酒は飲めないなぁ。でも喉が渇いたときのビールって美味しいって聞くよね、勝利して、勝利の祝杯といけるか」


Z姫さん Pno:1245

"「あれー?おかしいナ〜……どっちから来たっけ??」

少女が路地を右往左往しています。
近くにツ・カイ青年の姿はなく、どうやら迷子になってしまった様子です。
少女の迷っている路地は、とても狭い上に干された洗濯物が陽光を遮って薄暗く、壁にはスプレーでラクガキがしてありました。
おまけに道に目をやればゴミが散乱している始末、まさにスラムの路地裏といった雰囲気です。

                   

『マヤウェル』
セルリアンとレッドバロンとの境に位置し、金持ちや冒険者たちがバカンスに訪れて賑わう観光都市です。
しかし、近年は都市に住む人々の貧富の格差が広がっていて、きらびやかな大通りを少し外れるとスラム街が広がっているようなところもあって、
治安の悪さが深刻な問題になっていたりします。

そして、今少女が迷っているのも、そんな路地裏のひとつでした。"



フィオ「これはまちがいなくピンチ!」

フィーナ「大丈夫大丈夫……スラムだからといってそんな簡単に」

フィオ「迷子になった理由は――」

"ふたつの航路が交わる場所であり、大通りには東西のあらゆる品物を扱うお店がズラリと軒を連ねていました。行き交う様々な恰好の買い物客たち、商人の威勢のいい掛け声。
まるでおもちゃ箱をひっくり返したような大賑わいでした。

「わっ、なにこれなにこれ。たのしそー!」

「おい、勝手にうろちょろするなよ。この人混みだ、はぐれたらすぐ迷子になるぞ」

そして、案の定、うろちょろしてたら迷子になったよ←イマココ! というわけなのです。"



フィーナ「……しってた」

フィオ「人が多いところだと迷子になりやすいよね、しかたないね」

フィーナ「ただ迷った場所が悪い……けど、大丈夫かな」

"角を曲がっても曲がっても同じような路地裏が続いていて、もう最初にいた通りがどっちの方角にあるのかも怪しくなってきました。
そんなに大通りから離れていないハズなのに、先ほどまでの喧騒がまるで夢だったかのように路地はしーんと静まり返っていて、自分のペタペタ歩く足音がやけに気になります。
まだ日は高いハズなのに、だんだんと暗〜くなってきたように感じるのは気のせいでしょうか?
路地に建つ家の真っ暗な窓からは人の気配がしますし、なんだか差すような視線も感じます。

さすがに怖くなってきたので、引き返そうと考えている少女に「おい」といきなり声がかけられました。
びっくりした少女が振り返ると、男が数人立っています。"



フィオ「……ダメだー!」

フィーナ「明らかにダメな人たち、優しい言葉に引っかかっちゃう」

フィオ「これが少女誘拐の場面か……ってそんなのんきにしてる場合じゃない」

フィーナ「素直に信じるのは彼女らしいけど……」

"少女の警戒スキルはほぼほぼゼロなので、こんな見え透いた明らかな嘘でも簡単に引っかかってしまいます。
もうすぐ自分たちのナワバリに到着します。着いてしまえば脱出は不可能です。"



フィオ「こ、これ流石にやばいんじゃ……」

フィーナ「いや、これは……?」

"ところが、その数分後、男は地面に突っ伏して自らの不幸を泥の味と一緒に噛みしめていました。
仲間の男たちも、全員その辺でのびています。
とあるお店の前を通った時、突然少女が「呼ばれてる気がする」と言い出して立ち止まったのですが、
それを無理やり連れて行こうとしたら、一瞬でこの有り様です。"



フィオ「いきなりのしてる!(ぐっ」

フィーナ「でも、なんかいつもと雰囲気違ってるね、実力差のことも考えればこうなるのは不思議の一言」

フィオ「まぁなんにせよ脱出できてよかった」

"少女がハッと気づくと、そこは薄暗いテントのような場所でした。
装飾の凝った年代物のテーブル、布と埃のかかった水晶玉、雑に並べられた絨毯、古めかしいランプ……
ここはスラムにある故買屋の、商品を置いてある場所のようでした。"



フィーナ「『呼ばれてる気がする』……か」

フィオ「なんか宝石? が呼んでる? もしかしてすごい掘り出し物なのかな?」

フィーナ「さぁねぇ。ところで危機はまだ終わっていないみたい、今度は捜索隊が同じ店内に!」

フィオ「あー盗品か…・・・さっきのやつもそうなのかな」

フィーナ「ここで使い魔さんの特殊能力が発覚。近くにいると姫様をサーチできるゾ」

フィオ「そんな都合よく……ハッ」

"「……なんかいるみたいです、近くに」

「な、なんだと?!」

「この店の奥から姫様の気配を感じます!」

「了解した!」


「おい、店主、ちょっと厠を借りるぞ!」

「はい?ちょ、ちょっとお客さん!そっちは…!」

店主の制止を振り切って、ひとりと一匹は奥の部屋に飛び込みました。"



フィーナ「あああ……」

フィオ「だけれどそこに姿なく、どうやら裏口から出て行ったみたいだね」

フィーナ「入ってきた場所も裏口だったのかな、間一髪、だけど当然まだ追ってくるよね」

フィオ「いや、その心配はないみたい」

フィーナ「……」

フィオ「……」

フィーナ「十中八九姫様の仕業だし、所属的にはその責任を取るのも仕方ないよね」

フィオ「濡れ衣とか言うやつが一番怪しいんだ働け働け!」


モニカさん Pno:1340

"
今日はアトランドと呼ばれる海域の門番を倒しましたでーす。
硬くて数の多い敵でしたけど、何とか全部壊せましたです。

…ガーゴイルの一体に、見覚えのある短剣が刺さっていました。
たぶん、ダーリンの持ち物の1つだと思うです。

"



フィーナ「まずは突破おめでとう、探し人の手がかりも手に入れて、このまま進みたくなるのもわかるね」

フィオ「仲間同士だし、お願いして了解してもらえれば全然いんじゃないかな。無理を言ったって程のことじゃないと思う」


フィーナ「エープリルのは冗談にならないからね」

フィオ「テリメインだと他人の使用済み水着が漂着とかはしてそうだよね」

フィーナ「なんか危ない毒とかもっているかもしれないけどね」


こくりさん Pno:1457

"潜水服の一行はレッドバロン海域へ足を踏み入れ、海域の有様を目の当たりにして唖然としていた。海底には赤熱化したマグマが流れており、方々で何かが激しく燃え上がっていたのだ。水と火炎は相容れぬものだという浮世の常識とは隔絶したあの世の光景であった。海底はいたるところで空気幕で覆われて火炎が沸き立ち、空気膜からあぶれた泡がひっきりなしに立ち上っていた。また、地形は起伏が激しく、湧き上がるマグマが日々岩礁を育てている。"



フィオ「セルリアンとは同じ海と……しかも隣り合った海とは思えないほどの変化だね」

フィーナ「実際海が変わると世界が変わったぐらいの変化もありそうだよね、セルリアンからアトランドはそうでもないのかもしれないけど、ストームレインとか、レッドバロンはかなり別物に感じることもありそう」

"こくりが住んでいた山もまた火山であり、レッドバロンほど活動が活発ではないにしろ、大地から湧き上がる炎熱には馴染みがあったのだ。こくりはふと苦味のある笑みを浮かべて呟いていた。海底とはいえ、地上には変わりないというわけか、と。"



フィオ「確かに海の底であっても、ある意味では地上とは言える……のかな」

フィーナ「少なくとも人が住むような場所ではない、とおもうけど」

"こくりはちらと和装の青年の顔色を伺う。その顔には汗がしたたれていた。レッドバロン海域は常人が快適に過ごすには適温とはいえないようだ。こくりはふむと唸る。とはいえ、レッドバロンには遺跡は残されており、人が住んでいた形跡がある。遺跡は人間が快適に眠ることができる場所が残っているのかもしれない。潜水服の一行はその日の寝床探しも兼ねて遺跡探索に励むことにした。"



フィオ「形跡残ってるんだものね……確かに遺跡の中であれば休憩できる場所も見つかるかもしれない」

フィーナ「遺跡自体が魔力を持ってることもあるんだっけ? それならその魔力で海から守られているってこともあるかもね」

"炎熱の海域を探索するにあたり、潜水服は一枚の護符を胸元に貼り付けた。イフリートの宝箱から出てきた耐熱性能を向上させる護符であった。護符は元々紫髪の幽霊の保有するものであったが、護符には装着者を鈍重にする効果もあり、紫髪の幽霊は利用する予定はないということで潜水服が紫髪の幽霊から譲り受けていたのだ。"



フィオ「お、もらい物だね、しかもお供えという形じゃなくて、気にかけてくれた結果みたい」

フィーナ「嬉しそうだね。やる気も十分、だけれども」

"しかし、その日の遺跡探索は空振りに終わった。人間が快適に過ごせるような場所は見当たらず、このままでは灼熱の海底で一夜を明すことになりかねない。潜水服はちらと和装の青年の顔色を伺ってみる。その顔はげっそりと憔悴しており、潜水服達はやむなく海面へ逃れることにした。"



フィオ「さ、さよさん!」

フィーナ「一人だけ生身の人間だからねぇ、打たれ弱いとかそういう次元の話じゃなくて、二人と比べて探索の継続が難しいのは何もおかしいことじゃないし、そのあたりをケアしていかなくちゃ探索は進められない」

フィオ「こくりさんのバイタルチェック」

"異界の有様を眺めやる眼を持つ者ならば、こくりが潜水服内の神域の書斎で机に座っている様を見ることができただろう。机の上の空中には事象の点が因果の線で繋がれており、点や線には数字が示されていた。その数字は和装の青年の体内のストレスを表していた。"



フィーナ「即刻何か問題を起こすような状態ではないけれど、先のことも考えながらやっていかないとね、一緒に行動するから最悪の事態は避けられるだろうけれど、一緒に行動する上での最悪は踏まないとも限らない」

フィオ「海上での休まらない一夜を覚悟して水上へ。でもそこに現れたのは……」

"水面に顔をだした潜水服達は波に揺られながら一隻の船を発見した。探照灯の明かりを四方に向け、目立つ光彩で装飾された船であった。船に近づいて観察するに、船体横に階段がしつらえてあり、探索者を歓迎しているようだった。"



フィーナ「カジノ船キター! 普通に現れる分にはギャンブルの誘いにもなるけれど、こういう状態だと渡りに船かもね」

フィオ「三人ともギャンブルやりそうに見えないしね、こくりさんが興味本位で一回ぐらいかけてみるかもしれないけれど」


リンシャンさん Pno:1461

"この季節は海の外も中もせわしないですね。
深海でも、そろそろ目を覚まして動き始める者が出る頃です。
陽の光はほとんど届かないはずなのに、分かるんですね。"



フィーナ「そういえば何でわかるんだろう?」

フィオ「海水温の微妙な変化とか? 光が届かなくて視覚が衰える代わりに、他の機能が発達してるとか聞いた事あるかも」

フィーナ「だとすると厄介な奴がこの後動き出してるかもしれないのか」

"私はその光を、今は海上から見上げています。
痛いくらい眩しくて直に見ることは出来ませんが、身体中の鱗が宝石のようにキラキラと輝いて美しいです。
……手前味噌かしら?"



フィオ「普通の人でも『それ』を直に見ることはできないからねー、絶対にやっちゃダメダゾ」

フィーナ「未知の海域の旅路。そういえばサンセットオーシャンはもっと日が強かったね、そこに行くことになれば、また別の感想を抱くのかな」


アイリさん Pno:1473

収容所から出て。キルムさんとの別れ、自ら稼ぐ術を考えた結果はギャンブルすること! 少々では少なすぎる未来への不安を周囲に抱かせつつ、彼女が挑む勝負の結末は



"カジノ船でのギャンブル。
アイリーンは乗船準備を整え、早速計画を実行に移すこととした。

「さーって、バリバリ稼ぐわよ…!」

拳を強く握り締める。その意気込みたるや充分。
船に近付いていく背中にはどこかの勇者を思わせるような風格と威厳があった。
有り金全てを持ち込んで行う勝負の行方は果たして。"



フィオ「雰囲気だけなら象も倒せそう」

フィーナ「エスコートしてくれたの倒してどうする」

フィオ「まぁでも気合がなくちゃね、こういう勝負事は」

フィーナ「気合でどうにかなるのなら、わりと多くの人が儲かるんじゃないかなぁ……で、結果は?」

"結果は入船拒否。
勝負に勝つとか負けるとかそれ以前の問題。
その程度の所持金ではちょっと…と燕尾服を纏った船員に呼び止められた際、
アイリーンのメンチの切り方は半端ではなかった。
恐らくはこの地に来てから一番の凶悪顔であったことだろう。
一応は庶民用コースと称して別船での小口ギャンブルを紹介されたのだが、
屋敷にいた頃と同様、怒りに身を任せて飛び出してきてしまった。
まるで成長していない。"



フィオ「……」

フィーナ「……」

フィオ「いや、お金ないんじゃそれもまたいたしかた」

フィーナ「それ以上言うな……っ」

フィオ「前向きに考えれば有り金が全て吹っ飛んだ上、マイナスに突っ込まなくて良かったのかもしれないよね?」

フィーナ「ここで払えないとかなると、収容所見えてきそうだからねぇ」

フィオ「とりあえずは、『庶民用』で頑張るみたいだけれど」

フィーナ「小金も積み重ねれば大きな富になる……そのあたりの感覚がないのもアイリさんらしいっちゃらしいけどね」


リンスさん Pno:1659

リンスさんとユニさん。どちらがよりドラジェさんを愛しているのかを決めるため、三本勝負の料理対決中。いつのまにか巻き起こった無責任な熱狂の中、一本目をユニさんが取るものの、もはや残りの勝負をする意味はないようにすら見えて……



フィオ「すっきりはできないよね……」

フィーナ「後がないから、というよりは……だね。初めてだから。ってドラジェさんは言ったけど。これは、もう」

" 動揺、困惑、不安、焦燥、恐怖――それらを混ぜ合わせたような表情で、リンスは食材の前で立ち尽くしている。誰がどう見ても勝負は見えきっていたし、その空気は観戦するギャラリーにまで及んでいた。店員を呼び止めてメニューを頼む者、関係のない話をしはじめる者、中には店を立ち去る者もいて、先ほどの熱狂的なものとは一転し、どこかよそよそしい空気が店内中に漂っていた。
 見るに堪えない光景だ。
 こんなものはさっさと終わらせてしまおう。
 そもそも、この勝負は優劣をつけるためのものだ。相手よりもドラジェが好きだと証明するための戦いであり、言ってしまえばただの自己満足。勝者が決まったところで、どちらかが身を引く必要はないし、今まで通りで構わないとユニは思っている。
 だから、こんなものはさっさと終わらせてしまいたい。
 リンスもそう思っているはずだ。"



フィオ「ユニさんが考えるこの勝負の意味。こんな風に大事にならなくてもよかったんだよね」

フィーナ「こんな状況ではね。勝ち負けに意味がある状態じゃないし。お互いにとって不愉快な時間なら早く終わるに越したことはないとおもうけど……?」

"『さあ両者の料理が出揃いました! ユニが作ったものは"ブリの照焼"! ここからでも香ばしい匂いがしてきます!』
「もう少し時間をかけて作りたかったのですが、今回はこれが限界です」
 と一応の謙遜はしてみるが、以前よく作っていた料理のひとつなので自信があった。少なくとも、致命的な失敗はどこにもない。
『そしてリンスちゃんが作ったものは――こ、これは一体なんでしょう! 私には魚をただ焼いただけのものに見えますが――!?』
 その通り。魚の丸焼きである。しかも皮はボロボロに崩れており、随所が焦げていてずいぶんな見た目の丸焼きである。実際見たわけではないが、おそらく目玉焼きと同じ要領で魚を焼いてしまい、フライパンに皮が張り付いてしまったのだろう。
 リンスは前髪で顔が隠れてしまうほどうなだれていて、その表情をうかがい知ることはできない。
 しかし、両肩が微かに震えているのが見えた。
 ――料理では勝てないと知り、落ち込んでいるのだろうか。いや、あるいは怒っているのかもしれない。こんなのは認められない、ずるいと、リンスは異議を唱えてくるような気もする。
 確かにだまし討ちのようなこの勝負を提案した自分は、卑怯者だろう。
 だけど、どんな手を使ってでも証明したかったのだ。
 ユニは目を閉じて結果を待つ。結果の先にあるものを思う。"



フィオ「勝てる算段をもって勝負を提案するのは卑怯かな」

フィーナ「自分がそう思うなら。ユニさんは勝負にならないって心の中ではわかっていたかもしれない、自分にも幾つかのハンデがあるにしろ、それでも。
ドラジェさんが嘘をつかないで、それはきっと二人にために、評価をするのもわかっていたかもしれないし。『ハメた』のだと自分で思っちゃうなら」


"『それではドラジェちゃん、試食のほうをどうぞ――ってああ! もう食べていたー!!』
「前置きなげーんだよさっきから」
『口をもぐもぐさせながら罵られてしまいました! しかし不思議と悪い気はしなぁぁい!!』
「うっわ……マジで引くわ」
『ドスをきかせて言わないで頂きたい!』
「――んで、どっちが美味いかだろ」
 ドラジェは間を置いてから、
「言っとくけど、俺は嘘はつかねぇからな」
 その言葉がリンスに向けられたものだということは、ユニにはすぐにわかった。
「――こっちのがうまかった。文句なしだ」
『ああーっと! 選ばれたのはやはりユニの皿だー! 三戦勝負のこの戦い、早くも決着がついてしまいました!! 勝者はテリメインバーガースタッフのユニ! 天使ユニの勝利となります!!』"



フィオ「マジデヒクワ」

フィーナ「悪い気がしない」

フィオ「……」

フィーナ「距離とるな!」

フィオ「やっぱりドラジェさんは嘘つかないんだね」

フィーナ「ついてもしかたないからね。勝負は勝負だし……この空気で無駄に長引かせるのも優しさとは違うでしょ」

フィオ「勝負はついた。後味の悪さを曳いて、でも終わった……けども?」

フィーナ「ある意味予想通りのリンスさんの行動。だけれど、それはユニさんが想像していたものとはまた違って。子供の駄々のように泣き叫ぶその姿に、周囲が、ドラジェさんですら、辟易とした様子を浮かべる中で」

" 信じがたいものを見たとばかりに立ち尽くしていたのは、ユニだけだった。
 事実、信じられなかった。
 だって、泣いているのだ。最初の卵勝負の時点で勝敗は見えていただろう。今の自分では魚を満足に焼くことすらできないのがわかっただろう。リンスは馬鹿ではない。負けると知って、料理が下手だと知って、
 それでも、泣くのか。
 認めたくないと、わがままに泣くことができるのか。
「ああ――そうですか」
 今、わかった。
 自分は、リンスに認めてほしかったのだ。この愛はまがい物ではない本物だと、リンスにこそ教えて欲しかった。
 どこまでも純粋に、赤子のように無垢な少女の好意は、自分の造り物の恋とは正反対だから。
 その純粋さが、羨ましかったから。
「――いいですよ。嫌だと言うならば、もう一度やりましょう」
 いまだ泣き続けるリンスに、ユニは聖母のような笑顔で告げる。
 だって、天使は泣くことはできないから。
「――いいの?」
 涙と鼻水と唾液を垂れ流しながら見上げてくるその姿が愛おしいと感じるのは、きっと天使が生み出す快楽物質のせいだ。
「ええ。ですが、もうやりたくないという意味で『嫌だ』と言うなら終わりにしても構いません。どちらにせよ、勝つのはユニですから」
 リンスは鼻をすすり、服の袖で顔をごしごしと洗って、ユニを睨み上げる。
「やるっ。だってリンスは、まだ作れるもん!」"



フィオ「うぉぉ、おおおおおおお!」

フィーナ「参ったね。結果は変わらないかもしれない。すでに二つ勝ったし、『泣きの一回』も負けることはないと思う。でも、この勝負には意味がある! もう終わりだなんて勝手に思ってて悪かったよ」

フィオ「最後の確認も取った。この残酷とも言える環境で、リンスさんは絶対にあきらめない。負けを認めない。こんな場所で、鼻声で、それでもまっすぐに自分の気持ちに正直に、全力で。だからこそユニさんも受けて立つ。さめた観衆ももう一度沸き立って」

" 二人の応酬に再び大歓声があがる。すると足のつま先から頭のてっぺんまで、隠しようのない武者震いがやってくる。――ああ、もう。今、自分の顔はゆだったタコのように真っ赤だろう。だけど、いつものような不快感は不思議となかった。
『それでは両名共に手を清潔に、レディ――』
 一転して店内全体が息を呑む気配。最後に互いの視線を交差させ、リンスがフライパンを握り、ユニが鍋を掴む。
 そして、ついに抑えきれなくなった笑顔が、ユニの真っ赤な顔に浮かぶ。

『ファイトッ!!』

 天使は、笑うことはできる。
"




その日の晩、静かな夜。ユニさんはリンスさんに呼び出されて



フィーナ「ユニさんからリンスさんへの意識は変わっただろうけれど、リンスさんからはどうなんだろう」

フィオ「話があるって呼び出されるのって、緊張するよね」

" 呼びつけたのはリンスの方からなのに、なぜか唇を尖らせて不満たらたらと言った様子で、
「別に、ちょっと聞きたいことがあって」
 リンスにしては珍しい、歯切れが悪い物言い。
「いえ、ですから、それがなんでしょうか、とユニは聞いているのですが」
 リンスは一瞬、喉に魚の骨をつまらせたような顔になってから、長い逡巡の果てに、
「――あのとき、どうして最後にもう一回って言ったのっ」
 一瞬なんのことかと思ったが、料理対決の再戦を認めたときのことだとすぐにわかった。"



フィーナ「やっぱり、人の心の中なんてそう簡単にわかるものじゃないものね」

フィオ「ユニさんの答え……。そっか。わかったんだ『人と獣の違い』」

フィーナ「ユニさんの物言いがちょっと難しいこともあるけど、事情を知りえないとわからないとおもうな」

フィオ「もういい、といいながらも、立ち去らないリンスさん、それに付き合う形になったユニさん。きっかけは、海風」

" 一際強い海風が吹いて、リンスの金の髪がふわりと揺れたのが、きっかけだった。
「――結局、ユニはドラジェのことが本当に好きなんでしょうか」
「知らないよそんなの。リンスには関係ないことだし」
「そうですか――そうですよね――」
 すると、それまでそっぽを向いていたリンスが、体ごとユニのほうへ向けて勝ち誇った顔で笑う。
「でも、リンスの方がドラジェのこと好きだよ。だって、最後に勝ったのはリンスだもん」
 そうなのだ。
 あれだけ大見得を切ったくせに、最後の最後に負けてしまったのである。"



フィーナ「その答えは、今すぐに出さなくちゃいけないものなのかな。どちらにしても、他者の心の中はわからないよ。自分でだって理解できないのに」

フィオ「ユニさんは特別そういうところあるけれど、時間がたてば、わかるかもしれないよね。って最後負けたの!?」

フィーナ「最後は『肉じゃが』と『ハンバーグ』の対決。勝負を分けたのは苦手なものだというからわからないものだね、それに……」

"色々と至らない部分は多かったものの、魚の丸焼きのような失態をしなかったのは何度か挑戦したことがあるのだろう。
 きっとそれは、ドラジェの好物だからだ。
「――そうですね。ドラジェに対する気持ちは、ユニの完敗です」
 肉じゃがは『彼』が一番美味しいと言ってくれた料理だった。
 料理は愛情というのはつまり、食べさせる相手のことを気遣うということなのだろう。よくよく考えてみれば、ただ料理が美味しく作れるだけなら、そんな格言は生まれてこなかったはずだ。"



フィオ「勝負には勝ったけど(2勝1敗)気持ちでは負けちゃったと」

フィーナ「だけれど、なんというか。よかった。かな勝負して、あんな過程になって、こういう結末を迎えたけど、終わりよければ」

フィオ「二人の距離も変化があったみたいだしね、悪くないほうへ……写真?」

フィーナ「勝負の後撮ったのかな? どれどれ……? ほうほうこれは」

フィオ「心のそこから嬉しそうなユニさん。それはとても価値のある表情だ」

フィーナ「とりあえず勝負の結果として、リンスさんはユニさんがドラジェさんに近づかないようにと要請するけど、論理的に返されてしまって。それならば、と」

"「う、うぅ〜〜! じゃ、じゃあ! ドラジェに変なことするのはやめて!」
「変なこと、とは?」
「体触ったり、顔を近づけたりすることっ」
「――それは例えば、こういうことですか?」
「え」
 ユニはリンスの腕を掴んで引き寄せる。ほとんど不意打ちのような出来事にリンスはなにもできず、互いの吐息が顔にかかるほど距離を詰めて、ユニは艶のある声色で囁く。
「実は、ですね――今回のことで、リンスもまたユニにとって特別になったんです。いえ、もしかしたらリンスはドラジェより特別なのかもしれません。ユニの秘密を話してしまいましたし、もしかしたらこれが本当の恋なのかも――」
 さらに距離を縮めようとするユニにとって誤算だったのは、リンスは空気というものを読まないことだ。
「違う違う違う! ぜぇーったい、ちがーう!」"



フィオ「キマシ」

フィーナ「ジョークかも。でもリンスさんガチ嫌がり、魔力を込めて胸をドンッと」

"「お、おっぱいが割れちゃった……」
 おっぱいは割れない。
 一瞬意識を失っていたユニが、ものすごい勢いでまくし立てる。
「いえ違うんですこれは偽物とかではなく同族の天使が桃色で彼が大きいのが好きだったからとか見栄を張りたかったとかそういうわけではなくつまりユニは胸の大きさなんてどうでもよくて――」
 自らの墓を自らで掘るような真似。ようするに、墓穴である。
「――ええと、つまり、ユニの大きなおっぱいは嘘だったんだ」
 ユニは顔を青ざめさせ、
「ま、まあ、そうとも言いますね」
 そうとしか言えない。"



フィオ「……」

フィーナ「おい、なんだ、しょうがないだろ、小さいもんは、努力するんだよ」

フィオ「私何も言ってないよ」

フィーナ「小さくてもいいじゃないかー!!!」

フィオ「ま、リンスさんも二人だけの秘密にしてくれるって素敵な笑顔で誓ってくれたし、マジ天使」


翌日、マストにはためく見慣れぬ白旗。書いてあるのは『二人だけの秘密』



フィーナ「マジ悪魔」

フィオ「戦争だろうが……っ!」

フィーナ「実際かなりの大騒ぎだったみたいだね、やりかえし、やりかえし、どんどんエスカレートして、結果的にはお説教、ついでに二人で甲板の修理、で数日の間、口も聞きたくなくなっちゃったけど」

" そういえば、誰かとケンカなんてするのは、はじめてだ。
 ユニは忘れ物を思い出したように、くるりと踵を返す。今まで進んでいた道から背を向けて、恋人のいる場所へ向かうような軽やかな足取りで歩きだす。
 さて、これはなかなかに難問だ。なにしろ相手はあのリンスである。正攻法でいけば足元を見られて無茶な要求をしてくるに決まっている。あくまで立場は同等、いやむしろ、こちらが少し有利になるぐらいに事を運ぶには、一体どういう切り出し方がいいだろうか。いっそドラジェに協力を仰ぐのもいいかもしれない。なにしろ――
 仲直りだって、はじめてなのだから。



 エスカベーシュの客室。
 そこはユニの部屋ということになっているが、その内装は部屋を割り当てられた時とほとんど変わらない状態で、ユニの私物の類はまったくといっていいほど存在しない。食事や睡眠といったものを必要としない天使は、部屋を飾ることをあまりしないから。
 ただひとつ、部屋の片隅の目立たない場所に、それは置かれていた。

 リンスとユニが、ドラジェを挟んで両頬にキスをしている。

 そんな写真が、飾られていた。"



フィオ「関係は、変化する。三人の旅は、まだまだ続く。これまでどおり喧嘩もするかもしれない、でもこれまでとは違って、それを歯牙にもかけないようなことは、きっともうないとおもう」


スヴェータさん Pno:1730

そうとうにヤバい人であり、裏にも通ずる有力な医者であるジャンヌさんから、正式に『お店』を任された二人。どうやら初日はジャンヌさんがいっぱい呑んでくれたようで……



"
 2時間ほど飲み明かして、ジャンヌは2人のバーを後にした。そろそろ深夜と言っていい時間帯だ。明かりのない路地裏はとても暗く、建物の隙間から落ちてくる月明かりがやけにまぶしい。
 意識して高そうなものを注文したせいだろう、代金はとことん高かった。もっとも、代金のうちジャンヌが自分で飲み食いしたのは半分にも満たないくらいであり、後の半分以上はスヴェータとクシェルにふるまった分だ。クシェルから遠慮がちに告げられた代金をこともなげにゴトンとテーブルの上に置いた時の、2人の戸惑いの顔を思い出すと、クックッと笑いがこみあげてきた。"



フィーナ「……ゴトン? それって、その、代金の音……?」

フィオ「高いもの選んでくれるなんて優しいなー、でもやっぱりちょっと怖いよ」

フィーナ「さて、随分愉快な気分になって帰り道を行くジャンヌさんだけれど、そこに現れたのは、こちらも一筋縄では行かない人っぽいな」

"
 月明かりの中、現れたのは中年の男性だった。身長は高いが、体格はよくなく、ひょろっとした頼りない印象を与える身体だ。鼠色のコートを羽織っているが、ひどくくたびれている。鼠色という色が、そのみすぼらしさを一層引き立てていた。ズボンはところどころほつれていて、皮靴は使い古されていて、輝きが失われている。一歩間違えれば浮浪者のような風体の中年男性、それがコミュニティメンバーの1人、ファニドだ。
 ファニドは情報通である。彼は独自の、底が知れない情報網を持っていて、随時情報を集めまわっている。彼の頭の中にはどうでもいい情報から、その筋の者が喉から手が出るほど欲しがる情報まで、色々なものがそろっている。しかし、彼は情報を集めるだけで、それ以上のことには滅多に行わない。情報屋のように、情報を売り買いしたりもしない。自らが楽しく生きていくためと、「コミュニティ」を存続させるために、最小限の情報を使うだけだ。
"



フィオ「情報通……いいね、集めるだけで、基本的に使わないっていうのも、なかなか面白い」

フィーナ「使わないと意味ないんじゃないの?」

フィオ「大事なときに使うからこそ価値が生まれるものもあるわけだしね。何より情報屋として名前が知られるのがいやってこともあるんじゃない?」

フィーナ「あーそういうのはわかるかも」

二人に会って見た感触を聞くファ二ドさん。どうやらなにか思惑があるようで……



フィオ「会話を聞くに……荒事の匂いだね」

フィーナ「『アテイシュ』、『関係がないところでいなくなる』、『2人をぶつける』……うーんそうだね」

フィオ「ジャンヌさんは勝算四割とみて、ファニドさんは十割とみてる、ただ面白いからとか、そうなったほうが良いからとかそういう理由があるみたいだけど……ちなみにもう情報は流しちゃったみたい、『自分が楽しく生きていくため』か」

"
「やれやれ、相変わらず手際がよろしいことで。その力を他のことに使えば、もっとまっとうにも生きていけただろうに」

「嫌だよ。まっとうに生きるだなんて、つまらないじゃあないか。もっと生きるのは楽しくなくちゃいけない。というわけで、ジャンヌ。もう1件付き合ってくれないかな。用事も終わったし、酒は人生の楽しみだ。それに、夜はまだまだ長い。そうだろう?」

「はあ、そう言うと思ったよ。いいさ、付き合おうじゃないか。払いはそっち持ちだよ?」


「分かってるさ。エスコートの礼儀くらいはわきまえているんでね。さあ、行こうか。料理はあまりよくないがね、酒はいいのがそろっている店があるんだ」

「そこは、料理も美味しい店を探してくれたまえよ。まったく……」


 2人は話をしながら夜の闇に溶けて消えた。
"



フィーナ「これから、間違いなく二人に試練が訪れるね。しかも荒事の、ジャンヌさんが戦闘能力が低いと見積もっているクシェルさん。日々の訓練で少しは向上できていれば良いけど」

フィオ「魔術とかもまだ十分ってわけじゃないだろうしね、相手のでかたもあるだろうけれど、うまくいってくれるかな……?」


トリスさん Pno:1858

目に飛び込むのはテリメインの青、空の青、海の青



フィーナ「実際なんで、空は青いの」

フィオ「海が青いからだよ」

フィーナ「……逆もしかり?」

フィオ「思い出す記憶は、決して楽しいとはいえないもので」

"魔術師というのはどいつも胡乱だ。
修飾過多の割には表現が曖昧で、結局話の実態はつかめない。

比して、机上の文面は簡潔だ。しかし重要な情報が抜け落ちていた。

『―――ひどく不安定だ』

専門外の人間には冗長な語り。それを丁寧と呼ぶ安穏とした人間は、ここにはいない。

『つまり?』

結論を促す。
あからさまな溜息。面倒事が嫌ならとっとと終わらせればいい。

『要するに、あんたらは今』

簡単な結論一つに、前置きが長ったらしい。

さっさと宣告すればいい。
ろくでもない事態に引き込まれたのはよく分かっている。"




フィーナ「青の中からちゃんと多くの色を見つけ出して、やってきました探索協会」

フィオ「少し遅れての参戦になったけれど、この付近はいつもにぎやかだね」

フィーナ「未知の財宝とか、人をひきつけるものは色々あるからね。トリスさんの場合は……この追憶が秘めた目的、になるのかな」

"テリメインの海中には、独特の魔力が充満しているらしい。
その影響かどうか、喋る魚は野良猫同然に泳ぎ回り、時に人を襲うものも。
生物が住むには難しい環境なのだから、棲むものたちも、よりたくましくなる。

未踏の海。
慣れるのに、すこしかかりそうだ。

出遅れたのか、間に合ったのか。
どちらにしても、時間は流れていくだけ。
やれることをやればいい。


わかりやすく看板まで掲げられた受付にて、手続きを済ませる。

書類へのサインは、近い過去を連想させた。並ぶ数字と約束事。
名前を刻む。誰が何をしたか、これからどうするのか、の証拠。証明。根拠。


名前と、責任。


(これにも、魔法がかかっているのかな)"



フィオ「今更ながらに、かなり変わった場所だよねテリメイン」

フィーナ「野良猫レベルだとは思わなかったけど、確かにそれぐらいの遭遇率かも、素直なお魚は中々見れないけど」

フィオ「出遅れようとなんだろうと、やることをやる、それしかないよね」

フィーナ「書類へとサインすることの意味、魔法がかかっているかどうか……ってのはやっぱりあの記憶のことなんだろう。どんな書類にサインさせられたのか、はまだわからないけれど」

フィオ「書類の提出が終われば、試験? を越えて探索者へ。大丈夫ここのテストは……スゴクヤサシイ」

"ここへ訪れたのは、そう。


返すため。
あるべきものを、あるべき場所へ。



「……なんにせよ、元手がいるんだよね〜」


地獄の沙汰もなんとやら。
世の中は世知辛く、海は塩辛い。"



フィーナ「旅の始まり、塩辛いだけの海じゃないし、世知辛いだけの世の中じゃない。さて、どんな旅路が待ち受けているのか……」
posted by エルグ at 18:20| Comment(0) | 日記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: