2018年02月23日

第15回日記感想1(途中)



Pno013:しじみさん

Pno053:六華さん

Pno061:クーリエさん

Pno066:シンテツさん

Pno068:クロニカさん

Pno076:ルカさん

Pno077:リーヴィアさん

Pno084:アンテルテさん

Pno121:サフィアさん

Pno122:レーヌさん

Pno138:キノイさん

Pno140:<<ネーレイス>>さん

Pno178:ネリーさん

Pno181:イサナさん

Pno216:海底のガチャガチャさん

Pno219:アウラさん

Pno294:ヴァラコヤールさん

Pno414:神徒さん

Pno428:エルゥさん

Pno464:リオぴーさん

Pno476:もくずさん

Pno506:ラジェルさん

Pno520:ヤグヤグさん

Pno568:フェルテウスさん

Pno600:マグノリアさん

Pno640:エリィさん

Pno664:ボイジャーさん

Pno693:シスルさん

Pno742:ユーノさん

Pno781:ジュラエさん

Pno794:シャウラさん

Pno828:すずさん

Pno838:牡丹さん

Pno876:ペン女帝さん


しじみさん Pno:013

"「とうとう、海の果てがやってきた。
 限りなく続くと思えた青い海も、その終わりを見せた。
 海賊たちと戦いながらやってきたそこに、全てを統べる秘宝があるという。」

「その海の名は、ストームレイン。」

「さぁ、今日はここまでにしようか。
 ぼくも疲れてしまったし、きみたちもそろそろ寝なきゃ。
 明日またおいで。続きを話そう。」

そこで少女は言葉を終え、本を閉じる仕草をする。
物語はそこで一度止まる。

けれど、語り手は一人じゃない。"



フィーナ「海賊達との争いを超えてセルリアンの終わりまで。次なる海の名を置いて、お話はいったん終わり」

フィオ「もう寝る時間ってことは、結構遅くまでお話してたのかな。そりゃ疲れるよね」

フィーナ「語り手は一人じゃない……? もう一人の語り手は果たして何者なんだ・・・」


場面は転換して山奥の洞窟。『そいつ』を目的に剣を携えた青年がやってきて……



フィオ「多くの魔物、危険な旅路。それでもその素材にはそれだけの価値がある。最奥にたたずむ強大なドラ……」

"「殺気向けられんの、いつぶりやろなぁ」

間延びした、この場にそぐわぬ呑気な声が響く。

見れば、巨竜が音もなくこちらに首を伸ばし、口を開いていた。

「まぁ、手ぇ離して座りぃな」
「竜を前に武器をおろして命乞いでもしろと?」

青年は更に殺気を強め、剣を握りしめる。

「別にヒトなんか取って喰いやせぇへんて」
「しらばっくれるなよ邪竜め」
「おれ、竜ちゃうし」

「……は?」
「暗いからしゃあないけどな、おれこう見えてカニやから」
「なんでこんな山奥にカニが居るんだよ!」
「それはまぁ色々あってやな……」

よく見れば、竜の首と思われた場所には、竜の輝く瞳などなく。
ただゴツゴツとした、巨大なハサミがそこにあった。

「こんなナリやから茶とか出せんけど、久しぶりの客や。ちょっと話だけでも聞いていってくれへんか。
 だいぶ長いことひとりぼっちやねん」"



フィーナ「……\カニだー!!!/」

フィオ「というか、これってヒ……じゃなくてエゴさん? あのちょっと胡散臭いしゃべりも」

フィーナ「それにしてはビッグサイズだね。青年が小さいってこともあるかなっておもったけど、山奥の洞窟にいるって話しだし、普通に大きくなったのかな?」

フィオ「エゴは肥大化する……、みたいな?」

フィーナ「それにしても、『だいぶ長いことひとりぼっち』ってことは今はココロさんが尋ねてくることもないのかな?」

フィオ「話に乗った青年が何かを聞き出してくれることを期待しよう。人の五倍ぐらいか……うーん大きいね」

フィーナ「邪竜とかドラゴンとかそういう噂になった経緯もしりたいものだね」


六華さん Pno:053

"「……ううん……」

 六華・黒葛原・ブランシュはここ最近ずっと任務の為に力を張っていた為だろうか、その体調を崩しその日は一日床に伏せったままであった。

「だめ……私は……違う……」

 そして、眠りながら激しくうなされて天上へ向かって手を伸ばしたところで、はっと六華は目を覚ました。

「私は……」

 よほどひどい夢でも見ていたのか、寝汗でぐっしょり濡れた寝間着と下着を着替えようと立ち上がって脱ぎ始める。
 白い肌の上についた汗をタオルで拭いてタンスから出した着替えに袖を通すとそのままベッドに腰掛ける。
 真新しい布の感触は心地よかったが、だからといって何かしたいという気持ちは全く浮かんでこなかった。
"



フィオ「かなりひどいうなされようだけれど……」

フィーナ「悪夢を見ていたみたい、でも生半可な悪夢じゃこうはならないよね」

フィオ「身体と心が疲れていることも原因だろうけれど、これじゃあ休憩も休憩にならないよ」

"「なにか追い詰められる夢を見てた気がするけど……、よく覚えてないな……、寝てたけど、全然休まった気がしないし……」

 そう呟きそのまま再び六華はベッドに倒れ込んだ。
 探索を続けていたことに寄る疲れがたまっていたのだろう、起き上がるのも面倒くさくなり六華はベッドの上で寝返りをうった。"



フィーナ「『追い詰められる夢』か……。違う。とも言っていたけれど、糾弾されるとか、自分の意思に反した何かがあったとかかな」

フィオ「夢ってちゃんと覚えていないことも多いからねぇ、それでこれだとまいっちゃうよね」

フィーナ「こういう日があるのも仕方ない、この先に休めないときがあったら、このとき休んだ分頑張れるとか切り替えられるといいのだけれど」


クーリエさん Pno:061

"『月の波紋』十三週目……といっても、先に探索の話から書いてしまおう。突破口を探すために敵をなるべく避けながら探索を進めていたら、比較的安全そうな未探索の通路を発見した。協会の方に探索許可を求めているものの、既に次回の書類は届けてしまっているから次回はどうしてもバカンスに行くことになるだろうけど……たまには違う場所にRoMを出してみるのも面白そう?新規来客が見込めそうであればあとで二人にも提案してみよう。"



フィオ「探索で見つけた安全そうな道。まだ探索していないのならそっちに行くしかない!」

フィーナ「まぁでも先に申請しちゃったなら仕方ないよね、この当たり不便だけど」

フィオ「申請したのと違う所いっちゃったらどうなるんだろ?」

フィーナ「サポートを受けられないとか?」

フィオ「店舗が固定されているわけじゃないから、そういうことも出来るんだねぇ、探索者が先を開いていくのなら、もっと良い場所があるかもしれないね」


シンテツさん Pno:066

"

…ハッ!
一体なんなんすか今のは…夢?


どうしたっすか、ボーっとして

えーっと
えー…
そ、そう!次の報告種の内容考えていたんすよ!"



フィーナ「夢? をみていたシンテツさん、事務インさんに問いただされて、報告書を考えてたというけれど」

フィオ「正直に言ったらまずいことなのかな? 本能的にごまかした感じだよね」

フィーナ「ボーっとしてたからって、怒られたりは……あー居眠りと思われたらわからないかも?」

フィオ「とりあえずごまかせたみたいだけど、本人が気になってるみたい、夢かぁ」

フィーナ「こういうところでよく見る、アレかもしれないけどね。アレ」


クロニカさん Pno:068

"珊瑚の欠片がふたつ
色が綺麗 きらきらしている

噂話を求めるもの
解決法を求めるもの
手紙も結構拾う
俺には答えが見つけられないけど"



フィオ「拾いものの数々、手紙もいろんなことを求めるのが多いね」

フィーナ「誰かの元に届いたというだけで、出した人にはよかったかも。もちろん答えが得られるに越したことはないけれど、何かを求めて手紙を出すというのは自分の意志を見つめるきっかけにもなるし」


桟橋からカジノ船を見つめるクロニカさん。『血をもらう相手』として適した人々が集まっているらしいのだけれど……



" クロニカが求める血は、生き物の血、人に近いものであるほど好ましい。それが強い生への渇望を持つものであるほど。契約に従ってディドから定期的に血液の提供を受けてははいるが足りないというのがクロニカの正直なところだった。
 ディドが悪いのではない。クロニカが求める量が多いのだ。本来の糧の代替として血を求めているのだから仕方のない話だが、身体はずっと”もっと”を求めている。もっと。もっと。ぼやけた意識の奥底で、本能が叫ぶのを聞いている。
 故にこうして他を探しなどするものの、クロニカが差し出せるものは多くない。というより、ほぼ存在しない。従って相手の良心に頼る形になってしまうのだが、当然結果は捗らなかった。
 だから、カジノ船は良し悪しだ。欲の強いもの。その血はクロニカにとっては良質だが――これも当たり前の話だが――そういった我欲の強い者は何の対価もなしに身を切ることに同意しない。望みは薄い、という結論になる。
 いっそ人が多く集まるのを当て込んで片っ端から声をかけるのもいいかと思われたが、あんまりやりすぎるとたちの悪いキャッチセールスもいいところである。全くセールス要素はないが。どちらかというと求めるのはボランディアだ。結局不毛なことに変わりはない。"



フィオ「やっぱり本当に必要な物とは違うのだからどうしても十分ということにはなりえないのかもね。栄養みたいな問題とも違うだろうから、上手いたとえが思いつかないけど」

フィーナ「『血』ともなると、普通の意味だけでも譲りにくいし、それはたとえ差し出すものがあったとしても、こういう場所だと普通以外の使い方もされないともかぎらないからねぇ」

フィオ「我欲の強い相手が笑顔で差し出すとなると、なにかウラがあると思って間違いないね」

フィーナ「どうですお客さん? 血液提供してみませんか?」

フィオ「スタッフ呼ばれること間違いなし」

"「……うーん」

 捗らない。
 ゆっくりと遠ざかっていくカジノ船を見送ってため息をついた、ところを、声をかけられた。

 おい、と不躾な声だった。
 ぶっきらぼうなつっけんどんさは雇い主に似ている。

「……何か?」
「クロニカ・Y・ニールネイルだな」
「? うん」

 名前を確認されて素直に頷く。偽る理由は、特になかった。
 身長の高い男だなと思った。太陽を背に、男の落とす影がクロニカを覆う。獣の耳と嵩の大きな尻尾。獣人の類かと思いきや、左頬から服に隠れた首元にかけて、張り付いた鈍色の鱗が見られる。
 ちぐはぐな特徴とその男が纏う服の意匠には見覚えがあったので、

「俺はエイニだ。……ニールネイルの、狩人だ」

 その言葉には、そうなのか、とすんなり納得できた。"



フィーナ「結局上手い方法もなく、行ってしまった船をため息が追って。そんなところに現れたのは」

フィオ「……大きいね。ふむ、同属。珍しいね、ただなんというか険悪?」

フィーナ「『ニールネイルの狩人』その意味がさすところは『逃亡者相手の”同属狩り”』で。どうやら歓迎すべきではない相手みたいだけど」

フィオ「言っちゃったのはしかたないけど、追っている相手に対して、そうです、といっちゃったんだね」

"何をどう答えたものか黙り込んだクロニカに、エイニは思い違いをしたようだった。
 狩人っつってももうわかんねえか、そう吐き捨てたのが聞こえたから、

「いや、狩人という言葉の意味は覚えている」

 訂正したら苦虫を噛み潰したような顔をされた。

「……じゃあ、俺が名乗った意味も分かるよな」
「追われていたのか? 俺は」
「…………。Yが逃げ出して追われない訳がないだろ」
「そうなのか」

 もう完全に不要になっていたかと。
 クロニカの呟きにエイニはさらに表情を歪める。
 不機嫌そうな男だな、と思った。上機嫌にしているところがあまり思い浮かばない。会ってすぐで失礼な感想を抱く。

「逃げ出した時のこと、あんまり覚えてないんだ。多分、俺を導いたのは血の近い者だったろうと思うんだけど」
「んな事情は知らん」
"



フィーナ「……忘れるというのは、普通に認識されていることなんだね。まぁそれはそれとして、追われるのが当然……か。逃がしてもらったときも少ないとはいえないいざこざもあったしクロニカさんが自覚するよりその役割は大きな意味があったんだろうね」

フィオ「ディドさんにちょっとにて……」

フィーナ「事情についても考慮する気はなし。つかむ力は簡単に振りほどけるものじゃない」

フィオ「『お遊び』ね……。契約ってのはそんな簡単に敗れるものじゃないんだよ、狩人さん」

フィーナ「小さな抗議に、嫌そうな顔はするものの、逃がす気はないみたい、さて――」

"「別にディドが俺をどれだけ必要としてるかは分かんないけど、それはそれだし、契約は契約だし」
「…………」
「あと、何も変わってないと思うから、戻っても俺は結局役目は果たせない。子供を作っても産んでも死んでる。変わらない」
「お前――」
「なら、戻っても仕方ない。別にここにいても変わらないんじゃないか」
「……他人に精を乞うような生き方でも?」
「? ……狩人って結構聞かされるんだな」
「答えろ」

 恫喝に近い響きだが、不思議と恐ろしくはなかった。恐怖や怯えは最初からない。
 同族に対する安心感だろうか。郷里を離れて久しく、そんなことももう分からないし思い出せない。しかしそれが”同族狩り”に対してもそうだとしたら、こんなに滑稽なこともなかった。

「苦労はしてるけど、別に構わない。結局自分で探すか用意されるかの違いでしかない」
「……そうかよ」
「……痛い。離してほしい」

 クロニカの訴えにいらえはなく、たっぷりとした沈黙だけが返る。
 何人かの探索者が彼の後ろを通り過ぎて探索協会に入っていくのが見えた。他の人の目にはこのやりとりはどう映るだろうか。探索者同士のいざこざか。取引の上でのアクシデントか。助けを求める、というのも何か違うなと思ったし、結局他人の事情に首を突っ込みたがる探索者というのも少ないような気がするし困ったものだった。
 どうしたものか。"



フィオ「クロニカさんは淡々と自分の考えを話す。何度かかすかに言及されたニールネイルの状況。だから戻る気はないと」

フィーナ「強い声にも抱くのは不思議な感覚。たしかに、滑稽ではあるかもしれないけど」

フィオ「その苦労も選んだ道。それに興味があるのか、ないのか、訴えにも何も変わることはなくて」

フィーナ「自分でどうにかするしかないかな」

"「エイニ」

 名前を呼ぶと、少しだけ力が緩んだ。
 しかし表情はより険しく変わり、押し潰すような声で彼は答える。

「……お前の事情は関係ない。そう言ったはずだ。俺は狩人としてお前を連れ帰る」
「だから、それは困るって」
「うるせえ、関係ねえっつって――!」

 最後までは聞かなかった。
 エイニの目の前で小さく魔力を破裂させる。猫騙しに近い音と衝撃に気を取られた隙を突いて腕を振り解くと、彼の身体を力一杯押した。
 体格では圧倒的にクロニカを上回るエイニはその程度では揺るがない。代わりにクロニカの身体が、反動で押し出されて、

「ッ、待っ――」

 焦燥感に満ちて手を伸ばす彼の顔を見ながら、背中から海へと落下した。"



フィオ「……ふむ? 『個人』と『役割』の出した答えは若干異なったかな? 再三事情は関係ないと言っていたのも、自分へ言い聞かせていたところもあったのかも」

フィーナ「上手いね。虚を衝いて、体格差を一瞬だけ無効にできた。正面からぶつかる必要も無いしね」

フィオ「海へ。なるほど、焦りはスキルストーンを知らないところからもきてたのか」

フィーナ「水中なら……確かに空気に訴えればチャンスはあったかもしれないね。次にどうするのかは、準備したほうがいいだろうね」

フィオ「……ディドさんに相談したら?」

" 扉が開いた。入ってきたのは当然ながらディドだった。安宿に拠点を移したので部屋は共同で取っていた。血のやり取りが楽なので、これはこれでクロニカに文句はない。
 何か用事があって外に出ていたのだろう。ディドはクロニカを一瞥すると、

「……海に潜っていたのか」
「ん? うん」
「…………。そうか」

 それだけで以降特に追及はなかった。隣を通り過ぎて椅子に腰掛ける。
 ――ディドに。話すべきだろうか。しかしどう説明するにも長くなるし、話したところで、といった感もある。
 何よりディドはクロニカ本人の事情や身の上には全く興味がないように思われた。苦労をしてああだこうだと説明したものを軽く切り捨てられてしまったらと思うとなかなか虚しい。
 それに、

(……そういう事情なら、って契約を切られたら、帰るのを拒否する理由もなくなるのか)

 ――自分の中で話がまとまるまでは、特別この話をする必要はないだろう。
 そう決め込んで、髪を拭き終えたタオルを下ろした。"



フィーナ「新しい宿もいいところあるんだね。お金も払えて気分も悪くないだろうし」

フィオ「潜っていた。まぁ、潜ってはいた、うん」

フィーナ「ふぅむ。ディドさんの興味があるかどうかはわからないけれど、軽く流すのはなんとなく想像できるぞ」

フィオ「でも、やっぱりしゃべっておいたほうが……その、巻き込むような形になったときとか色々いいんじゃない?」

フィーナ「契約がなくなっても、自分が嫌だといえればいいんだけどね、中々難しいか」


ルカさん Pno:076

"

「……できた」

ノクティルカは紐をつけた電球を持ち上げて、スキマがないかよくよく確認しました。

中に入っているのはまちぼうけ草。ガチャガチャから出てきたものです。

電球の底には砂を少しだけ入れています。
スキマがないのを確認すると、背中に背負っている箱に括りつけました。
ちょうど風船と同じように、しかし砂の重さで水の中でも浮きはしません。

「これで持っていきやすくなった?いっしょにいたら、そのうち喋ってくれるかも」
「きえ」

「うん、しゃべって……しゃ」"



フィオ「ちょっとした工作。スキマがあると海水が入っちゃうかもしれないからね」

フィーナ「ちゃんと持っていければ、しゃべってれるのか、、、しゃべ……?」

フィオ「いやこれきいたことあるよ!?」


謎の長い生き物との再会



"謎の長い生き物は、ノクティルカの袖を咀嚼しています。


「ほああ……あ?」
慌てていたノクティルカは、前回は気がつかなかったことに気づきました。


「ぼく別にたべられてないや」
生き物は余った袖を噛んでいるだけで、手は噛まれていません。
それに気づくと、とたんにノクティルカはこの生き物が怖くない気がしました。
そもそもルカを食べるほど大きい生き物でもありません。食べられる、とはもう思いませんでした。
長さだけはルカと同じくらいありますが。
「じゃあ、いいや」

ノクティルカは袖を噛まれたまま先に進むことにしました。
"



フィーナ「でたぁ!」

フィオ「ああ袖に! 袖が!」

フィーナ「あ、うん、そうですね……」

フィオ「まぁ、確かに牙はあるけど、そんなに怖くはないかな、食べられは、まぁしないだろうし?」

フィーナ「……いいんかい! ……いいんかい!?」

フィオ「そのままいくのか……」


リーヴィアさん Pno:077

"イグルーの中で、向かい合って座る影が二つ。
一人は燃えるように紅い髪のツインテール。
もう一人はすべてを染めてしまいそうな純白の長髪だ。

二人の表情は真剣そのもの。
あるいは、翳っているようにも見える。"



フィーナ「向かい合っているのはホーリーさんとピュアさん。話し合っている話題はリーヴィアさんの現状についてみたい」

フィオ「はたから見れば順調なんだけど……って感じだね」

"
ホーリー
「つまり、このままじゃあ埒が明かないってわけ?」


ピュア
「ええ。テリメインにやってきて、もうすぐ四ヶ月――。しかし、私たちは未だに資金の調達ができていません。何も、得られていない。」


ホーリー
「そうは言うけどさぁ、着実に前進してるとは思うぜ。
海域も変わった。それに、噂によりゃあ、七つの海のうち、四つは発見されたって言うじゃないか。最奥の海だって、そのうち行けるようになるさ」
ピュア
「それでは遅すぎるのですよ、ホーリー。実際のところ、私たちは四ヶ月掛けてようやく二つ目の海の入り口に到達しただけです。
得たSCは、装備につぎ込まなければならない。私たちの手元には残りません。
このままでは、リーヴィア様の――。」

ホーリー
「夢を、叶えられない、か?」


ピュア
「ええ、そういうことです。
私達に残された時間は多くありません。精霊魔導師は、遅くとも20代半ばでその魔力を失います。」

ホーリー
「そうなれば……あたしたちは消える」


ピュア
「他の多くの精霊魔導師がそうであるように、精霊魔導師は貴重な少年時代を精霊と契約を結ぶことのみにつぎ込みます。
当然、それ以外の知識は乏しい。世間を渡り歩く知恵も経験もなければ、独力で生きていく能力すらない。」

ピュア
「私たちは、リーヴィア様が一人で生きていけるだけの土台を作ってから、去らなければならないのです。」

ホーリー
「そのための、宿屋開業資金調達、だもんなぁ。」

"



フィーナ「リーヴィアさんの夢。それを手伝える時間制限。これは、焦るなぁ」

フィオ「もし仮に生きていけるだけの力があったとしても、半端な状態じゃお別れしたくないものね」

フィーナ「複数の人に居場所を与えてもらったリーヴィアさん。だから『いずれは自分たちが、居場所を与える側になりたい。』だからこそ宿屋、だからこそ財宝」

フィオ「それこそ二人で相談するより、みんなで考えるようなことだともおもったけど――」

"
ホーリー
「ま、リーヴィアとアイラは、星の海<ディーププラネット>の景色を楽しみにしてるみたいだけどな」

ピュア
「それで、いいんですよ。難しいことを考えるのは私たちの仕事です。」


ホーリー
「……あんまり根を詰めすぎるなよ」


ピュア
「珍しいですね、ホーリーがそんなことを言うとは。」


ホーリー
「うるせー」


ピュア
「頼りにしていますよ、ホーリー。」


ホーリー
「……うるせー」
"



フィーナ「『私達の仕事』を否定せず、ちゃんとフォローするホーリーさん。いいねぇ、姉御だねぇ」

フィオ「頼りにしてまーす。とはいえ、簡単な道ではないだろうけれどね、資金に換えられるお宝がたった一つってことはないだろうけど、たった一つを争う形になったらしんどいだろうな」


アンテルテさん Pno:084

前回ショックウェーブで大ダメージのアンテルテさん、まだ回復には時間がかかるみたいで



"
--夢をみていた
--いや、<夢のような>というのが正しいだろうか
--
--ワタシは端末
--データの集合体
--記憶回路のまたたき
--それだけなのに
--どうしてだかかつての仲間たちの顔が浮かぶ
--
--旧型のデバイスは
--今はもう存在しない
--しかし
--たしかに
--しあわせだった とおもう
--
--
--光る粒子の渦に飲まれ
--データの海は深く深く
--ワタシの体は溶けていく
--そのうち
--
--
--
--"



フィーナ「今はもう夢を見ないはずの身体、もうなくなったはずの記憶がどうしてだか脳裏に浮かんで」

フィオ「幻視のようなもの……とはまた違うか、記憶が電気信号なら身体の外に漏れたそれが、何処か別の場所にとどまっていたとかもありえるのかな」

フィーナ「なんにせよ、しあわせであったのなら、それはなによりだ」

"気がつけば、
ワタシはいつもの場所にいた
まだ不安定でやわらかい
無数に浮かぶ青い泡の粒
ひとつひとつがワタシだった

もうしばらくすれば、
いつもの日常が再起動される

いつものようにプログラムがはしれば
いつものようにポット君が
「やれやれ、仕方がない」
とまた愚痴をこぼすのだろう。

しかし
それまでの
少しのあいだ、
いつもの時間がくるまでは
フラスコのなかで
ゆられるのも
悪くない。
そんな事を考えている。"



フィオ「おかえりなさい」

フィーナ「データの海から帰還して、もう一度荒波へ出なくちゃいけないね」

フィオ「その時間がくるまでの合間、ゆっくりゆらゆら」


サフィアさん Pno:121

"使えるものは何でも使うつもりです。
今までも、これからも。"



フィーナ「魔の海へ抗う力スキルストーン。誰でも扱えるその不可思議な力だけど、やっぱり向き不向きはあるよね」

フィオ「治癒が似合わないワケじゃないと思うけれどやっぱり……」

"サフィア
「……普通にやっても、専門的な方々に追いつけないのは確かです。
 僕自身の強みを上手く組み合わせられる何かが無いか、しばらく模索してみましょうかね?」


攻撃的な術式の行使。ただ、それを実行に移すとしてもしばらくの下準備が必要です。
新しい戦い方。どの程度まで行けるのか、先の見えない道。
ふふっ、ここまで不安とワクワクが同時に湧いてきたのはとても久しぶりな気がしますね♪"



フィーナ「自分の強みとかみ合った術式なら、その威力は倍!」

フィオ「そんな単純な話じゃないと思うけどー」

フィーナ「総合的には倍!」

フィオ「そっかな……」

フィーナ「新しいことへの挑戦は最初が辛い。でもこの調子ならさくさくっと超えていきそうなきもするね」

"幕外T ──生物回想録
 イフリート
 僕自身は出会ってはいないので、伝聞によるものだけですが。
 炎魔の領域レッドバロンへ通じる門「アッシュフォード」の番人らしいです。
 あれ、レッドバロンの二つ名って「炎魔の領域」でしたっけ? 探索協会のパンフには「灼熱の海」とあるのですが……"



フィオ「パンフが間違ってるのか、イフリートがボケてたのか……」

フィーナ「名称が二つ以上あるとかじゃないのかな」


レーヌさん Pno:122

"
少女はすやすやと眠っている。
金髪のこどももいっしょだ。
今週は食みも穏やか、陽もあたたかく、ゆっくりして過ごすことにしたらしい。
"



フィオ「お休み良い子よ、陽は高く、祝福はその上に降りそそぐ」


キノイさん Pno:138

"
女子二人が靴を買ったあと、キノイは彼女たちを防具屋に付き合わせた。
と言っても狙いは完全に定めていたし、あとは値段交渉と採寸くらいだったので、靴で悩んでいた時間よりは短い。体感にして半分くらいだろうか。
金属のものは絶対に身につけたくないので自然のもので、そうなると鎧に適しているのは甲殻類の殻か、貝殻かになる。なかったらどうしようかと思ったが、やはり海の世界テリメイン、同じようなことを考える人(生き物?)はそれなりにいるらしい。届く頃にはアトランドの詳細も分かっているだろう。たとえばレッドバロンのように、熱に強い魔物たちがいるかとか、そういうことが。"



フィーナ「女性の買い物が長いというだけのことはある」

フィオ「ちゃんと交渉はするんだねぇ、しっかりしてる」

フィーナ「あぁやっぱり普通の人と違って、嫌な物質というものもあるわけか」

フィオ「普通の人でも嫌なものはあるじゃない? 自然のもので、ぬるぬるしたのとか?」

"二週間。二週間が経っている。そのはずである。
この海を取り巻く流れは、目まぐるしく変わっている。新たな海域への道の発見。立ちはだかる魔物。今行われているらしい大会(これは興味がなかったし、二人セットで行動しなければならないことが枷にしかならないと判断した)。
大会ももうじき終わるらしい。流れる海は滞ることを知らない。何回か寝ればまた新しい流れがやってきて、あっという間に押し流されるだろう。
押し流されないように――たとえばせめて魔物たちに負けないように備えていくのも、ひどく手間のかかることだ。店に並ぶスキルストーンやチューンジェムとにらめっこして、思考を巡らせて、どうの。"



フィーナ「一定の距離を保ったまま参加するとなると、かなりの厳しさになっただろうね」

フィオ「興味なかったから良かった……のかな」

フィーナ「流れ……速いよね。いつの間にか新しい海域が出現して、その特殊な環境に適応できるかできないかで次の海域も見えてきたりしてる」

フィオ「魔物も厄介なのが増えたように感じるよね、私は特に……苦手なのがはっきりしてるんだけど」

フィーナ「ただ色々考えているうちに……疲れちゃったみたい」

フィオ「キノイさんはドリスさんをずっと警戒してるからねぇ、心労もかなりのはず」

フィーナ「お互いに安心できる約束でも交わせればいいんだけどね、なかなか……」

"とはいえ、キノイの頭はめちゃくちゃ単純にできていた。エリーが荷物持ちのお礼!と言って置いていった焼ナマコがめちゃくちゃおいしいので、もう結構元気である。おいしいご飯は精神の安寧!ちょっと奮発して今日もおいしいご飯に刷るか迷ったが、買い物の調整があるのでしばらくは耐え忍ぶことにする。別に奮発しなくても、このホテルと提携しているレストランのご飯、ふつうに美味しいのである。うまい飯サイコー!!大正義!!
どのみち頭は疲れたので、少しばかり休もうと思った。もし出掛けるようなことがあるなら、ドリスかエリーが呼びに来る。エリーが呼びに来ても大丈夫なように、水に浸る位置まで下げたハンモックに転がった。"



フィオ「うまい飯サイコー!!」

フィーナ「そういえばあの姉妹のお店か、そりゃおいしいよね」

一方アルカールカのほうでも動きが、密命をうけたリックリマーキナさんがテリメインへと出発しようとしているけれど……



"リックリマーキナ・アンタラクティカは、これより長い休暇に入る。――ということになっている。
向かうはテリメイン、アルカールカでは眉唾ものの未開の海域。ほのかに透けた指が確かに書簡を受け取り、それを肩掛けカバンの中にしまいこんだ。

「では、行ってまいります」

あくまでも公式的には、長い休暇に入ったことになっている。とはいえまだ伝令隊の末端なので、そう疑うようなやつもいるまい。動きやすい身分のものが動くのが一番だと思っているし、ライニーシールももはや早々身動きが取れる身分ではないのだ。隊長格はそういうものだ。眉唾ものの未開のの地域――異世界にこれから行く。神の加護を受けて帰りを約束されながら、だ。知ればよく思わない深海人も確実にいるだろう所業を、リックリマーキナは引き受けたのだ。

「気をつけろよ」
「大丈夫です。揺蕩う海藻の神ならず、天啓たる海流の神の助けも得られています。――ぼくがアビス・ペカトルの手にかかることはないでしょう!」
「手にかけてくんのはアビス・ペカトルだけとは限らねえだろうがよ」"



フィオ「うん……身分の高さもそうだけれど、動きにくい理由は周囲の状況もあるわけだね」

フィーナ「密談のときは、身分が大きな意味をしめているとおもったけど、背中から撃たれることもなきにしもあらず、か」

フィオ「ところで『神の加護』だけれど」

"なんか心配になってきた。
顔こそ自信に満ちたリックリマーキナの肩を叩くと、どこからともなく声がする。

『心配は要らぬ。だが保証もせぬ。我らが結んだことは、これをテリメインに送り、そして無事に戻すことのみよ』
『早い話が、一応彼の隠密能力に補正は掛けてありますが、正面切って出くわしたりなどしたら知らねえよということですね』
『要らぬ通訳をするな!』
『すいません。私は親切なので』"



フィーナ「フレンドリィな神様だ」

フィオ「隠密限定かーテリメインも海の世界だから悪目立ちはしないだろうけれど……」

見送った後で



フィーナ「……なーんか嫌な雰囲気もあるみたいだねぇ」

フィオ「ライニーシールさんの格好いい一撃。だけれど相手の粗雑さが逆に気になるねぇ」

フィーナ「ばれても構わないような、人物? もしくはただ単に無能なだけ? どうなんだろうね」

<<ネーレイス>>さん Pno:140




 「……あ。甘い匂いがする」
 潜航する艦内、その大食堂に入ってしばらく。
 少女はそう、口にした。


 潜水艦《ネーレイス》。
 その大食堂には、様々なものが集っている。
 たとえばドルフィノイド、イルカと人間のハーフの青年が首をだし。
 たとえば半月真珠、体躯10センチほどの小さな金魚か人間かと思わしき少女がゆらぐ。
 謎の海洋棲物は尾をくゆらせながらテーブルの上の白く甘い香りの泉をぼんやり見ているし。
 その周りでその外では海の鳥たるペンギンが、弾丸のようにあちらこちらへ駆けめぐるよう飛び回る。

 艦外を映すモニターに目をやれば、機械仕掛けのオキアミとクジラが交信しながら、ルサールカが睡蓮の触手を伸ばして語らっている。

 常から海の夜闇のうちを潜航する艦ではあるのだが、実際のところ完全にとばりをおろしているわけではない。
 場所を見つけて“手土産”たる食料があれば、そして艦内ルールを護っていさえするならば、誰でも割と容易に近づけるし歓迎される。
 何分《乗組員》たるウミホタルにしてみれば、縄張りを侵してこずにかつ食料を持参されるなら、自分らが使わぬ場所やモノなど好きにしてもらって構わないものだから、“手土産”あるならどうぞどうぞとなっていく。


 千客すべてあまねく万来だ、というわけではない。
 ウミホタルにとっての天敵は普通に警戒するし、諸ルールを犯せばよくて警告ヘタをすれば諸機構手繰っての怒涛の海水流からの強制排出が待っている。
 そもそも潜水艦の場所を見つけるということ自体も稀なもの、ウミホタル達を除けば訪れたモノも居るモノもけして多いことはない。
 ゆえにいうほど、にぎやかすしずめ状態だというわけではない。

 ただ、空気を通した部屋のひとつである《大食堂》は、本来100人からの人間の乗組員が集って食事をすることを想定されて造られた場所。
 そしてそもそもウミホタル達と相利共生を結んで乗艦している少女と男の間柄を鑑みれば、2人が食事を同卓することなぞ避けはしても積極的にしようとは、ましてや歓談しながらなどとは一縷たりとも望むべくもない状態。
 大の海の男が3ケタも集って大戦争となるのを想定された《大食堂》で、それでは異様にがらんとさみしい光景なのが通例だ。
 それと比較をするならば、数人から訪れかつちょっとした会食会をしているその光景は、だいぶ賑やかだな、と感じられる。


 テーブルの中央には白く甘い香りを漂わせる、ホワイトチョコレートのきよらかな泉。
 その周囲を彩るのは、セルリアンの海底農園産の海ブドウやイチゴ・オレンジといった新鮮フルーツの盛り合わせ。トロピカルオレンジジュースの瓶や塩ココナッツ、テリマンジャロのアイスコーヒーもグラスとともにおかれている。
 大食堂ではホワイトチョコのチョコフォンデュを主役にした、スイーツバイキングが開催されていた。



フィオ「潜水艦の大食堂。催されているのは……」

フィーナ「意外と人の出入りもあるんだね、『ウミホタルさん』が浮上したいときぐらいしか招く機会もないと思ったんだけど」

フィオ「『手土産』があるならってことだからね、テリメインでの立場からあまり表立った取引ではないだろうけれど、『見つけて』って話しだし」

フィーナ「絶対数だけで言えば多くはない人数。だけれど普段の状況と、使われる予定だった場所を考えれば確かににぎやかに感じるかもね」

フィオ「ところで、これ用意したの誰なんだろ? ミユさんは多分いまこれを見つけたところだよね?」


“「あ、ミユおねーさーん」
 しゅーんとカーリングのストーンよろしく大食堂の床を滑ってきては、入ってきた少女の目の前で流れるようにするりと立つ海の鳥。
「ごしゅじーんがいっぱい準備したみたいなのですよー、ミユおねーさんもいっしょにたべましょーっ」
「あ、そうなんだ。あの人がね……」
 ちょっとだけ、む、と少女の口がへの字に曲がる。

 イメージに合わないというか、そりがそもそも合わないというか。
 なんとはなしに、居心地が悪い。

「毒とかはいってない? だいじょうぶ?」
「じょぶじょぶ! 入ってないです入ってないです。ご主人そういうことはしませんよー」
 身振り手振りで説明する海鳥の仕草は、ややもすればかえって怪しく見えてくる。
「ふーん……」
 普段の食事を作ったり準備したりする(というより選択肢なくさせられている)のは少女だし、大概に命令や罵詈雑言をどの方向とは言えども聞くはめになる身としては、彼が訪れるもののために大食堂にこうして準備と設営をして会食会を催すのは、いささかもやっとするナニカがこみあげる。”



フィーナ「これまた意外な。……女子力とかいうの高いな」

フィオ「まぁ。そりはあわなくても仕方ないよね。お互いの腹の内を明かしあっているわけでもないし」

フィーナ「……毒ナイヨー」

フィオ「流石にそこまではしないというのは理解してるみたいだね」

フィーナ「塩水ココナッツをいただいて。どうやらこの会食は『ホーセキ』チェーンジェムの効果で新しい術を得たからというところもあるみたい」

“海の鳥が口にする《ホーセキ》は、改造の宝石《チューンジェム》。
 ここテリメインを渡るために自分たち用に私有化したスキルストーン、それにはめ込み改造することで効果をあらわす宝石だ。
 宝石は大なり小なり色とりどりとさまざまなものが存在していて、その効果も千差万別。

 スキルストーンに嵌めて馴らさせ改造を施せば、それらの時間を凍らせ留めるほどの冷気を作り出すことも、また心地よい冷風でいやしを与え厄害を祓うこともできていく。
 同じ効果をもたらすチューンジェムであったとしても、改造を施すスキルストーンやその目的によっては及ぼす影響も変わってくる。
 少女が私有化しているスキルストーンを例にすれば、彼女は大いなる地の力とともに海ごと割る、障害の排除と破壊の方面への改造を施して所持している。”



フィオ「使い方次第ってやつだよね」

フィーナ「フィオは?」

フィオ「私は威力重視!」

フィーナ「キャラに似合わず脳筋スタイルだよね……」

フィオ「それはさておき、フルーツとかはペンギンさんが厳選したみたい。お店にも詳しいとかやるな」

フィーナ「船内がやや暑いのはレッドバロンの所為か。ペンギンさんなんかそのあたり敏感な気がするけれど」

フィオ「ココナッツを呑みきったところで、ミユさんは『お届け物』をすることを提案。この前もやってたやつだね」

フィーナ「海水のほうが暑いってことはないかな」

フィオ「やっぱり密閉しているほうが暑いでしょう、たぶん」


『お届け物』を順調に終えていく二人。確認のメモによると次で最後の案件のようで。渡すものは多くの『耐性の宝石』



フィーナ「一番手に入りやすいシェルボックスから出現した『耐性の宝石』が4つ。つまり安価なものなのだけれど、対価としてもらいうけるSCが少なめな気がして」

フィオ「……そりゃまあホタルさんは気にしていないだろうけれど……?」

“とまれ、ざばざばと水音を立ててかき分けながら、約束の場所まで赴いていく。
「えーっと、たしか16歳くらいの人間のおんなのこ、だよね」
「アイアイ!」

 私のひとつ下かあ、などと。
 ぼんやり考えながら、ミユと呼ばれた少女が周りを見渡していれば
「此方じゃ、少女よ」
 響くように重厚な、声をかけられては彼女は振り向く。


 振り向いたそこにいたのは、たしかに年端もいかぬ少女がひとり。
 されどその雰囲気は、その声は、ミユという名の少女からみてひとつ下だとは思えぬ威圧感で。

 その声は
 少し前に、光もささず海流もよどんだ真っ暗闇で、聞いたあの時の声の主。
 《海賊》として乱暴な海賊取締員に捕まり施設に連行されていた、あの闇に響いた古めかしい女の人の声だった。



フィーナ「……本当に? その年齢間違ってない?」

フィオ「人それぞれ事情があるしね。まぁそれより」

フィーナ「そだね、あの時、すれ違ったあの人……か」

フィオ「決意を新たにすることになった、ある意味では『同胞』だけれど」

フィーナ「値段が安いのは『貸し』なのかな?」


ネリーさん Pno:178

テリメインにて発生した原因不明の『渦』オルタナリアとのかかわりも疑われるこの『渦』の調査に向かうネリーさん。探索の休みを利用した調査がつかむものは……





時にはイルカのように跳ねて高いところから海上を見つめ、時には妙な流れがないかじっと感じ取り、ネリーは渦を探して回った。

やがてネリーはアトランドの外れ、ストームレインとの境の辺りにまで到達する。

要領のいい探索者と海賊たちがしのぎを削る地域に近づいていた。
ネリーは海の底のほうへ潜り、岩から岩へ、身を隠しながら進む。

確かに、ストームレインは渦潮の海。渦が起きても不思議ではない。
だがそれだと、ただの渦なのか、自分が探し求めている問題の渦なのかがわからない。

ネリー
「(もどったほうがいいかなあ……)」

大きな岩の陰で考え込んでいると、ネリーは見えない縄のようなものが体に触れるのを感じた。

ネリー
「―――!」
迷うことなく、形なき縄をたどり始める。

確信があった。
これは、海賊の罠とかじゃない。たどってもいいものだ。

ネリー・イクタは斜め上へと急速に上がっていく。

その先にあったのは、雷の筋をまとい、光る粒子を撒き散らして踊る渦だった。

ネリー
「アレだ……っ!」

ネリーは接近を試みる。

ネリー
「ン……ンンンゥ……ッ……!」
押し流されるが、そうそう負けてやるつもりもない。突き進む。

ネリー
「ゥゥゥゥゥゥ……!!」
渦はネリーを拒んでいるようだった。
大きな力は彼女の身体を受け止め、続けて細い雷がムチのように打ち付けてくる。

ネリー
「ウゥウウゥ……

ま……ける、もんかぁ……っ!」

気合一閃。

ネリー
「ガァアアアァァアアァアァァアッッッ―――!」

叫ぶ。尾を振るう。

これ以上ないくらいに、力を込める。



気がつけば、ネリーの目の前は真っ白になっていた。”



フィオ「何がしかの手がかりがあるならまだしも、今のところは目視確認しかない。だからこそネリーさんは探し、彷徨い、ある意味危険ともされる海域までやってきて」

フィーナ「……あまり良いとはいえない行動かもね、伴う危険は軽く見ていいものじゃない。ただその成果はあったみたいだけど」

フィオ「大丈夫かな……?」

その一方で雨中のテリメイン、クリエさんは協会でノートを読む。そこに載っているものが示唆するのは……



フィーナ「『ノートに描かれているのは、中に箱を取り込んだ箱の図。
それが変形し、ふたつの箱の内外が入れ替わる様。

そして、渦の絵』」


フィオ「中身の中身は……って話じゃないよね。素直に読むなら、渦が中と外を入れ替える機構ってことかな……?」


フィーナ「再びのネリーさん。白の中から目覚めた彼女が見たものは……」



そこは、海中の街だった。

目に映る全ては影のようにぼやけている。
それでも、ネリーにはすべてがわかった。

岩を削って組み立てた家。
それらにとりついて、飾りのふりをしているサンゴや海草。
扉のない入口から平然と入り込んできては、窓から出てゆく魚たち。
綱で結びつけられ、あたりをぷかぷかと浮いて回る、お店の広告の看板。
海の底から海面へ向かって立つ、一本の塔。

それらの中に、巨大な貝殻が見えた。

ネリー
「……ぁ……」

貝の巨獣の亡骸。
わたしの父の偉業のあかし。

ネリー
「……ぁあ…… ……」

そして、わたしが生まれ育った場所。

ネリー
「あ……ぁ、あ……あぁ……」



ここはオルタナリア、海中都市マールレーナ。
一日たりとも忘れたことのない、わたしのふるさと。



だけど、それがどうして、こんなにもぼんやりとしか見えないのか。





フィオ「……入れ替わった? 渦の向こうから、オルタナリアの魔物が来ることがあったけど、世界を入れ替えてテリメインからオルタナリアへ?」

フィーナ「情報が足りないからなんとも、いえないね……で、襲撃と。穏やかじゃないな」

フィオ「襲ってきたのは水棲人と似て、それでも理性を失った魔物。しかも一体を相手にしているところにさらに増援がやってくる」

フィーナ「どんどん増えていく敵、流石に多勢に無勢……!」


ネリー
「…… …… ……。」

なんで、こんなやつらが、マールレーナに。

みんなはどこへ行ったんだ?
わたしの街は、どうなってしまったんだ?



フィオ「ネリーさんの心に入り込んだ動揺、一斉に襲い掛かられ、やられるがままになぶられて……」

“白くもやがかかった視界が、赤く染まっていく。

魔物の体色によるものでもなく。自分の身体から流れた血でもなく。

ネリー
「―――」
身体の内側が、熱を持つ。

ネリー
「―――、―――」
赤くなる。なにもかも。

ネリー
「―――ぁあ、あ、ぁああ、あ、あ、ぁア、アア、アァっ、あ、あ」

何があったのかなんてわからない。だけど、こいつらは許せない。




―――みんな、喰い殺してやる。





フィーナ「……白いもやが赤に変わる、怒りが理性を塗りつぶし」

フィオ「鋭い牙で『魔物』を即死させるネリーさん、増援も関係ない、動くものは全て」

フィーナ「……『何かもっと大きなもの』……か」


雨中のテリメイン。気配は薄く、クリエさんはノートを読み続ける。にわかに協会が騒がしくなったのはそのときで……



“例の渦が、ストームレイン近辺でまた発生した。
そう報告を受けた探索協会の職員らは、その現場へと向かっていた。

入植などなされておらず、恐らくは今後も当分行われないであろう地域ゆえ、確認程度に留めるつもりのようではあるが。

探索協会職員A
「ありました、渦です。ギラギラ光っています」
探索協会職員B
「よし。座標を記録。
あとは本部に届けて、警告を出してもらおう」
連絡を取るためか、職員二人はスキルストーンを取り出そうとした。

その時だった。

探索協会職員A
「……! ちょっと! 渦の中で、何か動いていません!?」

確かに、見える。小さなものが、いくつも渦の中心で、うごめいている。
しかもだんだん大きくなって、シルエットが判別できるようになってくる。

探索協会職員B
「まさか! ……逃げるんだ!
渦からは、異世界かららしい魔物が出てくることもある! 墨撒いて、逃げるぞ!」
探索協会職員A
「は、はいっ!」

だが、二人が逃げる間もなく、それらは来た。

魔物たち
「ガァアアアア!!」
血煙を引きながら一体の魔物が吹っ飛ばされてきた。
後に続いて、ほかの個体も渦を抜け、この場から逃げ出そうと泳ぐ。

それを許さない者がいた。

ネリー
「ウァアアァアガアアァアァアアアアッッ!!」
探索者の一人、ネリー・イクタが渦から現れる。
彼女は荒れ狂い、泳ぎ去ろうとする魔物たちに噛みつき、引き裂いていった。

職員二人はそれを見ていた。

探索協会職員B
「なんだ……あれじゃあまるで……!」

サメか何かだ。それも獲物の血にまみれて、何がなんだかわからなくなっている状態の。

ネリーの攻撃はあまりにも荒々しかった。
もう、渦から抜け出した魔物の、最後の一体が狙いをつけられている。

あいつがしとめられたら、あと今ここで動いているのは。



フィオ「早く逃げて。手に負える相手じゃない!」

フィーナ「逃げられるなら、そうもする。だけれど相手は……」

フィオ「と、ここでクリエさん! 流石! 頼りになる!」


クリエ
「…… …… ……。」
水のなかに浮く、葡萄鼠色の影。
彼女はスキルストーンを構え、『ジェリーフィッシング』の力を行使し、クラゲの触手を飛ばしていた。

ネリー
「…… ……。」
鎮静の毒が身体にまわって、暴走した神経を静めていく。

ネリーは理解した。自分が何をしたのかを。
そして、自分をよく知らない人間が、それを見てしまったことも。

探索協会職員A
「…… ……。」
怯えた目でネリーを見つめている職員の一人。

ネリー
「……ご……ごめ……」
探索協会職員B
「……?」


ネリー
「……ごめん……っ、ごめん、なさい、っ……ごめん……っ……。」

クリエ
「……」

ネリー
「ごめん……なさい、ごめんっ、ごめ……うぅ……ごめん……っ……」

ネリーはただ、周りの三人に謝り続けていた。
クラゲの毒のせいか、あるいは疲労のためか、気を失って頭を垂れるまで。”




フィーナ「とりあえずは一つの決着を見た今回の件。だけれど……」

フィオ「表立った傷はそんなにでも色々と軋みが見えてきたね……」

フィーナ「……テリメインの誰かを襲わなくて良かった。クリエさんは本当にナイスタイミング」

フィオ「後処理もとりあえずはした、けれど」


クリエ
「(……そんな、簡単に解決つくもんでも、ないよね)」
ノートを手にしたまま、うなだれるクリエ。

ネリーは強い子だとは、クリエにもよくわかっている。
けれど、それでもやはり一人で生きていくには無理がある。今度のことでそう思った。

クリエ
「(一人暮らしは、無し。ネリーを、見てる。
……そのうち、帰るとき、まで……。)」



夜は更けていく。



フィーナ「静かな、でもしっかりとした決意。一人じゃ無理なことでも二人なら」

フィオ「だからネリーさんもあまり一人で突っ込まないようにね」


フィーナ「……ところで今回のお話、かなり悪い想像をしたんだけどさ」

フィオ「もしかして、ほとんど救いがないやつ?」

フィーナ「うん……。まぁそうだと決まったわけじゃないけど、ネリーさんの視界が『向こう』でぼんやりしてたこととか、『魔物』がどんどん来たこととか……」

フィオ「……そんなんじゃないといいんだけどねぇ」


イサナさん Pno:181

“ 春の陽気の下を小舟が一艘、ゆったりと進んでいく。
舟の上にはイサナが乗り、その足元には一抱えほどある包みが置かれている。
故郷に送る包みだ。
 カジノ船である程度の儲けを作り、
イサナにもようやく送金をするほどの余裕ができた。
額はそこまで多くはないものの、当座の食料くらいなら買えるだろう。



フィーナ「やっぱりギャンブルって正義!」

フィオ「こらこら」

フィーナ「しっかり儲けてこうやって送れているんだからいいじゃない。危険な探索よりよっぽどいいかも」

フィオ「探索は道を選べるから……」

“ 入っているのは金だけでもなかった。
こちらで買った故郷にはない珍しい品々も入っている。
それに、ラボでポットから渡された菓子。
 食べやすいように棒のついた、イカナメクジの形のチョコレートだ。
チョコレートは龍ノ背島にはなかったもの。
石のように見えるのに喉が焼けるほど甘いのがイサナには不思議だったが、
砂糖をたんまりと入れて作るのだと知れば納得が行く。
そうそう腐るものでもないらしいから、送るにはうってつけだった。
 何より子供達は甘いものを好む。
郷里では甘いものは高級品だから、喜ぶに違いない。
 イサナは忘れることのない顔をひとつひとつ思い返しながら、
荷を送るべく、波止場へと向かっていく。
今日も良い天気になりそうだ。”



フィーナ「沢山の贈り物は子供達への愛情の現われでもあるんだね」

フィオ「イカナメクジ……」

フィーナ「場所によって手に入りにくいものっていろいろあるよね、こっちの物すべてが高級って場所もあるみたいだし」


海底のガチャガチャさん Pno:216

『異次元館の招待状』を受け取った『私』は日常に差し込んだ異常に好奇心を刺激され、故郷の近くを示すその住所を尋ねた。『館』は入り口が見当たらなかったものの、招待状から現れた黒点がその道を作る。覗き込むとそこはまるで『骨董の獣道』だった



“夕日を背に、骨董の山に私の影が伸びていた。
まるで己の身より一足先に影が館へ招かれたようだった。私は、足を踏み入れる。

無造作に積まれた不骨董の山はどんどんと足のまたぎが高くなる。
成り行く道の手元足元が見えぬ為に、足の裏は活き活きと神経を昂らせた。
冷たくきめ細やかであるならば、ガラスや陶器の可能性がある。
ざらついた肌ざわりの石や、曲面のしなり具合から金属を思わせるものは安心して踏める。
しっとりとした木材の足場が体重を預ける相手には一番良い。

私は眠りの森の美女という話を思い出した。
骨董の無造作な重なり具合はまさに茨の森だ。
奇怪なべっこう色の獣道で、物言わぬ物質の角に頭をぶつけたり肉を食いこませたりと…
時は、私一人の孤独な童話の世界だった。吐息や衣に擦れで、積もったほこりが舞っていた。

やがてたどり着いた天井と骨董の山の交差点で、私は大の字になって寝転がった。
閉塞感の中、何の気になしにその白い天井を推してみた。
すると、いつのまにか私は白い床にうつ伏せになっていたではないか。
ぎょっとして寝返ってみたが、ひっくり返った天地から骨董の山が落ちてくるということはなかった。

実に奇妙なことは、骨董の少しずつ顔触れが変わっていたのだ。
べっこう色の蓄音機は錫色のホルンであった。
コートかけは物干しざおに、燭台はティーセットに変貌していた。
正し、道順ばかりは同じだった。山の勾配、曲がったカーブ、通り抜けた獣の道
道に対する骨董品の位置は全て当時と変わらなかった。”



フィオ「奇妙なことだらけの館だけど、ずんずん進んでいくね」

フィーナ「暗いから触覚に頼って、妄想が頭をかける。好奇心で来たとはいえ余裕のある感じ」

フィオ「白い天井→白い床? ……いやそうとも限らないか、ただ場所を移されたのかな、これは」

フィーナ「位置取りが変わっていないのは迷わせるための仕掛け? 入り口からそうだったけれど、いよいよ怪しさが最高潮」

“どうしたことか、目を白黒させたままホルンを手でちょいと推した。
埃が払われ、掌の型が付く。すると今度は、あたりはもう部屋でもなかった。
其処は小さな公園だった。ティーセットはバケツとスコップになり、四方八方砂場であった。
骨董の山であった白砂の小さなトンネルに、どこからともない強い光がさしていた。

スコップを推すと、あたりがまっさらな酒場になった。
椅子やテーブルがビニールで覆われた未使用の店だ。
私が舞わせた埃だけが姿を変えずに降ってくる。

ほう!

夢を見ているのか、ここはなんだ、全ての骨董品が舞台装置のスイッチのようなのだ。
触れる度に景色が一変する。私は魅せられて、虜のようにあちらこちらを触りまくった。
思いもよらない景色が現れ、目まぐるしく消えていく。館の不思議は、気に入った!

いつか、茨のように折り重なった骨董の山の一番低いところへ手を伸ばし、私は絨毯の手触りを感じた。
今度の景色は暗紅色の広間だった。
違ったのは、骨董の位置がすっかり変わってしまったことだ。
のみならず広間の中央には、人間がいた。女が一人きり、年代物の椅子に腰掛ていた。
その周辺に侍らせるように、あるいは群がるように骨董が取り囲んでいた。

――香のにおいが強い。
そう感じたときに、なんだか私は我に返った。
何故とも言えないが、悪友と悪ふざけをしているところを、親に見つかってしかられたように
しゅんとした気持ちになった。私は、少々気取って挨拶を繰り出した。”



フィオ「そのまま次々といろんなものを触っていって、あぁやっぱり最初のはたまたまだったんだ」

フィーナ「どんな仕掛けかわからないけれど……愉快とは言えば愉快かも」

フィオ「位置取りが変わらないのはどういう意味なんだろうね、似たような場所が多いとしたら迷うこともあるんだろうけれど……」

フィーナ「迷わせるつもりなら、周囲の様子を変える必要も無いものね……と」

フィオ「誰かいるー!!」

フィーナ「招待状のことを尋ねる。否という返事。なんかすごく疲れてるみたい? 生気が薄い……な」

フィオ「『私』の問いにどこか投げやりに答え、『もう歩けもしない』と告げる」

フィーナ「そこまで弱っている風には見えないけど……彼女が告げたのは」

“「私も探してるの、この館のあるじを。
  招かれたのよ、私も。
  しずかにして。息をひそめて。」

視界のすみ、獣の影がさっと向こうを横切って、影の帯になって見えなくなる。

 「あるいは、よければ、もうすこし私の、近くへ寄って。
  年をとることもない。喉が渇くことも、おなかが減ることもない。
  その点は、心配はいらないわね。
  でもね、健忘症にかかるように、少しずつ生命が辛くなってくるわ。
  生命って息切れがするの、あなた、名前は?
  ねえ、前に人が来てから、300年たつのよ、私、もう、たえられない
  どうしたら、出られるの?」

無意識の緊張感が体温をあげて、蒸し暑く感じた。
人の笑い声を真似た九官鳥のような声が遠く聞こえた。”



フィオ「えー……」

フィーナ「思わぬ先輩、だね」

フィオ「彼女が語っていることが全て真実だとすればこの『館』めちゃくちゃやばいよね」

フィーナ「……前の人から300年。染み付いた香の匂い。は前回の情景で現れていたよね、ちょうどここのことなのかな……?」


アウラさん Pno:219


アウラ
「いくぞ……エクスプロード!」

 拠点にしている島にある訓練施設。そこで魔法の鍛錬を行う。
海中では訓練の成果をそのまま発揮できるわけではないが、スキルストーンを扱う際の感覚を掴む手助けにはなる。
そんな中、今日はあることにチャレンジしてみることとした

アウラ
「……元の世界では今一つ感覚がつかめなくて成功しなかったが……今ならできるかな」

 やってみたいこと。それは、攻撃魔法を補助する補助魔法の一つだ。
私は主に火炎や地属性の魔法を得意とするが、その二つを融合させ、魔法のマグマで出来たものを纏う。
そしてそこから、マグマの弾などを放ち、攻撃魔法に上乗せするのだ。
氷が得意な魔法使いなら、氷で出来た鎧で防御を上げつつ魔法を強化するということも行われている。



フィオ「訓練に勤しむアウラさん。地上と水中だといくらスキルストーンがあっても勝手が違うこともあるからね」

フィーナ「新しいことへの挑戦はいいよね、自分ができないことを出来るようになるためには挑戦が欠かせない」

フィオ「……元の世界で難しいとこっちではなおむずかしいんじゃないかな?」

フィーナ「普段から自分の魔法に慣れている人は、テリメインの魔力で妨害されるから、やりにくいのかもしれないけれど。
例えばサフィアさんみたいにスキルストーンで使えなかった力を使えるようになることもあるし、一概にそうとも言えないんじゃない」


フィオ「新しい技能を覚えたい人は、異世界を冒険しよう! ってこと?」

フィーナ「それはなんか違うけど。それはともかく、今回やりたいことは攻撃補助のための魔法だね。二種類を混ぜるとなるとやっぱり難しそうではあるけれど」

フィオ「『ターガリアリング』もあるし、挑戦した結果はいかに」


アウラ
「……よし、準備は出来た。やってみるか」
アウラ
「我が国の守護者たる大地の巨人タロスよ、我が身に力を与え給え。大地と、その中に秘められし炎の力を与え給え」
アウラ
「聖陽の神の下に殺戮の姫君を討滅せしめた聖女よ、私に強大な力を制御する穢れなき力を与え給え」
アウラ
「ドラゴンの女王の名を持たせた、炎の指環よ。その炎熱をここに示せ!」


 祈り、念じ、魔力を込める。そうすると、頭の中に強烈なイメージが出来上がる

アウラ
「……!!よし、これなら、いける!!――来いっ!灼熱の翼!!」

 その言葉と共に。私の背中から、2枚の赤い翼が生じた。
羽で出来てはいない。その翼は灼熱の光を輝かせ、羽の代わりにボタボタとマグマを落とす。
マグマ、それも魔法の効果により普通のものとは桁外れな熱量――プラチナですら蒸発させるだろう――
で出来た、魔法の翼だ。”



フィーナ「おぉー(ぱちぱち」

フィオ「成功したみたいだね。……めっちゃ熱そう」

フィーナ「まぁレッドバロンを進んでいく以上、こういう魔法なら相手を上回らないといけないだろうからね」

フィオ「戦闘で使うためのテストも終えて。うへぇ、これが補助で飛んでくるとなるとかなり厄介だよ」

フィーナ「とはいえ実戦投入のためにはもう一段階を踏まなくちゃいけないみたいだけど……」


アウラ
「はは、素晴らしいな。うん、完全に成功だ」
アウラ
「そう言えば、魔力を増幅させるスキルストーンがあると聞いたな……それを作れば、海中でもこの翼を作れるかもしれない」
アウラ
「それどころか、これを発展したものでさえ――」

 他の探索者が合成に成功したスキルストーン「バーストマジック」。その力を扱うことが出来れば。
私は期待を胸に躍らせる。

アウラ
「次の探索が楽しみだな……とりあえず、この翼……「ラーヴァウィング」はしまうとしよう」

 紅蓮の翼を納め、私は今回の探索と、その結果得られるもので作ろうとするバーストマジックを楽しみにすることとした”



フィオ「ともかく海中で使えないといけないからね。発展したら……次は何を蒸発させるんです?」

フィーナ「進化していく先を見つめ――。とにもかくにも順調だね、探索でも油断できない海ではあるけれど……」


ヴァラコヤールさん Pno:294

“ セルリアンから新海域へと通じる領域には、案の定、守護者が待ち構えていた。
 守護石像どもは数ばかり多く、面倒な相手ではあったが、我らの手堅い攻めの前では木偶そのもの、難なく粉砕し、押し通らせてもらうまでだ。
 事実、その通りだった。

 少々資金が心もとないが、それ以上に装備がわびしすぎる。
 どうにかしたいものだが、さて、どうなるものやら。”



フィオ「対ガーゴイルは余裕の勝利だったみたいだね」

フィーナ「守備に特化した相手だからそれを上手く崩せるのなら苦労することも少ないんだろうね」

フィオ「装備を整えるにはお金が必要、お金を手に入れるには探索が必要、探索をするには時間が……」

フィーナ「すぐに何とかなるって物じゃないんだよね、どうするんだろう」


ベアトリーチェ
「やっほ。おやじさんももうすぐ新天地の開拓に加われるね!」
ヴァラコヤール提督
「そうだな。どうも原生生物どもが適応力とやらで手強くなるらしい。」
ベアトリーチェ
「それは大変だね。死亡許容で残像になっちゃうかも。」
ヴァラコヤール提督
「何の話だ。」
ベアトリーチェ
「あるいは壁貼り虫に出くわして攻撃が通らないかも。」
ヴァラコヤール提督
「ここではテリメインの言葉で話せ。」
ベアトリーチェ
「ウオオオォォァアァァァァッ!!!!。」
ヴァラコヤール提督
「デアデビルLv.2!! 」



フィオ「何の話だー!!?」

フィーナ「テリメイン言語は共通語のはずでは……」

フィオ「(必殺技は)やめたげてよぉ!」

フィーナ「興奮した患者を取り押さえるためだからね、しかたないね」


神徒さん Pno:414


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…………


変わり映えがない、といいますか。
ちょっとだけ心配になりますね。”



フィオ「海の中だと余計にねー。進んでいるかどうかすら実際わからなくなることも」

フィーナ「先導してくれる人とかがいればいいんだけれど、まぁその人が正しいかもわからないけどさ」


エルゥさん Pno:428

“ 目を覚ます。
 見上げた先には、木目やシミの形まで覚えてしまう程度には見慣れた宿の天井があった。身動ぎすればギシリとベッドが微かに軋む音がする。顔を埋めた掛け布団からは、ほんのりとお日様の匂いがした。

 寝転がったまま首を軽く傾ける。ベッドの右横の壁にはそう大きくもない両開きの窓が一つあった。カーテン越しに差し込む光はまだ淡い。肌に感じる空気の気配からしても、まだ明け方なのだろうか。
 屋根の上に止まっているのか、或いは近くを飛んでいるのだろう鳥の囀りを聞きつつ、身を起こす。ぐしゃぐしゃになっていた髪の毛を手櫛で軽く整えながら、空いた側の手でカーテンを軽く避ければ覗くのは雲一つない青空だ。とはいえまだ色は薄い。日の出からさして時間がたっていないのだろうと推測しながら欠伸を噛み殺す。

 ベッド脇の床頭台に手を伸ばした。上に置いていたはずの代物を手探りで引っ掴み引き寄せる。ジャラリと鎖の音が鳴って、掌に収まったのは小さな銀の懐中時計だった。とある冒険の最中に手に入れたソレは冒険者としてそれなりの年数は愛用している品だ。
 常に街中にいるならばともかく、依頼で遠方に赴けば時報を告げる鐘すら無い小さな村が拠点になったり、或いはそんなものすらない大自然の中に身を置く方が多い。時刻を正確にしる必要はさしてないにしても、現実的にどれだけの時間が経過したかというのは依頼に対するひとつの目安にもなる。そういう時、ねじ巻き式のこの懐中時計は大層便利なのだった。

 手にとった懐中時計は蓋付きのしっかりした代物である。竜頭を押せばその蓋はパカリと開いて、とてもシンプルな盤面が覗いた。針が指し示す時刻はまだ六時を回ってすらいない。随分と早起きしてしまったものだ、と目をこする。
 もう一度寝ても良いかもしれない。さすがにこんなに早い時間に起き出した所で冒険者たちは誰一人起きていないだろうし、まず朝食すら出来ていない事だろう。今頃、階下のカウンター向こうは厨房で宿の親父さんが皆の朝食を作っている頃合いだろうから。

 再び床頭台に懐中時計を戻して、ベッドに潜り込む。まだ人肌のぬくもりをじわりと残していた寝台は、横になれば意識を眠気に誘った。とろり、と瞼が落ちていく。


 目を閉じれば闇が広がり、波の音がした。
 ちゃぷり、ちゃぷ、ちゃぷ。
 その音は子守唄には最適にも思えたし、……まるで自分を嘲笑う笑い声のようにも聞こえた気がしたけれど。
 眠りに落ちた意識にはもはや、判別しようがないのだった。”



フィオ「早朝に目を覚まして。ごく普通に見える一日のひとかけら。でもそれはとても幸せそう」

フィーナ「空の色に時計の針。まだまだ眠りの手にゆだねてもいい時間……」

フィオ「波の音に妙な感覚をも覚えるのは……そういうことか」

“ ガバ、と音を立てる勢いで身を起こしたエールステゥは一瞬だけ混乱した。
 目覚め、そして視界に入り込む景色が記憶にある懐かしい宿の物とは全く異なっていたからだ。

 今、エールステゥが眠っていたのはとある海上拠点の一角にある宿の個室である。探索に出ている間はオルキヌスの漁船にある客室部分で睡眠することも多いが、常にソレではろくに身体を休められない。だから、たまにこうして適当な拠点に立ち寄りしっかりと睡眠を取り補給を行うのが常だった。



フィーナ「『木目やシミの形まで覚えてしまう程度には見慣れた』というには、まだこちらに来て日は浅いし、『冒険者』というのもかつての居場所だったね、そういえば」

フィオ「しっかり休むために戻った拠点。そこで見たあの景色は、やっぱり夢の産物だったんだ」

“「笑っちゃう……今更ホームシックにでもなってるっていうの? 私は」


 あはは、と笑おうとして声は掠れた。言葉で軽く言うほど、笑い飛ばせるほどに強くない事をエールステゥは自覚しているからだ。
 何となく理由はわかる。このテリメインという滅んだ海の世界にも慣れてきた事や、探索者としての生活にも多少こなれてきて余裕が出始めてきたからだろう。今までは前にがむしゃらに進むことだけを考えていれば良かったし、実際ソレ以外の余裕なんて欠片もなかったというのに、今の生活に慣れてきたせいでほんの少しだけ元の世界を懐かしむ余裕が出来てしまった。帰りたい、或いは懐かしい。そういう望郷の想いが、あんな夢を見せたのだ。”



フィーナ「考える余裕ができたからこそ見てしまった夢。まぁそんなに悪いことじゃないんだけどね……」

フィオ「過去に後ろ髪を引かれて動けなくなったりしなければいいんだよね」

フィーナ「簡単な話じゃないけどね、ただ大事に思っているものがあるっていうのは、いいことだ」

“あのお気に入りの懐中時計は、部屋に置き忘れてきてしまっていた。アンブロシアは時告げの鐘があったし、どうせまた宿に戻るのだからまあ良いか……と気にもしていなかったが今になればとても心配だ。

 冒険者なんて家業は、明日をも知れぬものでもある。昨日旅立った冒険者が次の日には帰らぬ人になる……なんて事は日常茶飯事。他のチームがそうなってしまった知らせを宿で受け取る場に居合わせた事だってある。だから自分だけは大丈夫だ、などと思ったことはない。それでも、生きていると思われてる限りは帰るべき場所として宿の部屋は確保されている筈なのだ。
 だけどもしこうして異世界に跳ばされたなんて思いもせず、どこかで野垂れ死んだと思われたら? そしてそういう知らせが宿に届けられたらどうなるのだろうか。居場所は片付けられ、遺品は処分され、そして……同じ部屋はまた別の誰かのモノになるのだろう。

 ソレを思うと少し怖いのは、確かだった。”



フィオ「……厳しい生活だね」

フィーナ「誰も彼もそれを理解して身を投じるんだよ」

フィオ「そのあたりはガルムさんとかがちゃんとやってくれているようなきもするけれど、エルゥさんは知る由もないしねぇ」

フィーナ「死んだわけではないにしろ、長い間連絡がないとなるとどうしてもね。個人の家であるのなら、居場所も、遺品も、残してくれることもあるのだろうけれど……」

“ 胸の奥で重くのしかかる不安を跳ね除ける為に敢えて声に出して呟く。
 大丈夫だ。今までだって、困難はたくさんあった。でもどんな問題も蹴散らしてきたではないか。今回は難題が多いだけであって、別にまだ帰れないと決まったわけでもない。探索を進めて行けばきっと、解決法は見付かる筈なのだ。……だからまだ、落ち込むのも諦めるのも早すぎる。


「不安になってる暇なんて、無いんだから!」


 うん、と頷けば再びベッドに潜り込む。
 まだ周囲は静かで動き出す人の気配は殆どない。時計こそ無いがそれでも起きるには早い時間だというのは察して余りある。ならばやることはただ一つ。二度寝以外にありはしない。

 再びまどろみながらもエールステゥは想う。
 今頃、向こうで待たせている仲間は何をしているのだろうか……そんな事を。”



フィオ「あくまで前を向いて、希望を語るにも絶望を悟るにもまだまだ情報が少なすぎる。それなら見えない希望を語っていたほうがずっといい」

フィーナ「でも暇は大事にしてほしいな、と」

フィオ「時計はなくても早朝だとわかるその空気。もう一度眠って、今度はちゃんとした時間に起きればいい」

フィーナ「何らかの方法で、向こうのことを知ることができればねぇ……」


リオぴーさん Pno:464

上機嫌なリオぴーさん。ガーゴイルをらくらくと突破した様子で




そう、我らが暗黒皇帝まじかる☆リオぴー様はレッドバロンから急遽方向転換。
善意の協力者についていく形でアトランドの入り口にまで同行したのであった。
そこには守衛とも言えるガーゴイルがいたのだが…
苛烈な魔術に晒されたガーゴイルは凍りつき、砕け散った。
かくしてアトランド行きへの切符を一息に手に入れたのだが…

暗黒皇帝まじかる☆リオぴー
「意外だったのは…アトランドのすぐ近くにストームレインの入り口もあったことか。
 レッドバロンとアトランドはだいぶ離れていたはずなのだがな…
 偶然ということもあるか」


フローレム
「どちらに行くんです?
 別にアトランド自体が目的ではないんですよね?
 すべてを統べる秘宝とやらはストームレインにあるらしいですし」


至極当然の疑問である。彼女がここに来た目的は全てを統べる魔法。
噂に聞く魔法が秘宝という単語にすり替わってしまってはいるが、
当然ここはすべてを統べる秘宝を探し求めに往くと思われた。”



フィオ「引率してもらえてよかったよね、これでいける場所も増えた」

フィーナ「ガーゴイルの突破報告多いよね、イフリートとかと比べると劣るのかな?」

フィオ「それじゃあHP減ったらもう一体追加することにしよう」

フィーナ「絶対に許さない」

フィオ「それで、選択肢の中から何処へ行くかだけど」

フィーナ「ちゃんとした調べることもしているフローレムさんをほめつつさりげなく酷いリオぴーさん。家事も眼に留めてあげて……」

フィオ「向かう先はアトランドってことだけど……フローレムさんからすると不思議に思って当然、だってストームレインに求めるものがあるんだから」

フィーナ「ここで暗黒皇帝様の推測と解説!」

暗黒皇帝まじかる☆リオぴー
「良いか、そもそもテリメインというものは太古に滅んだはずの世界。
 これを見つけたものが『海底探索協会』を作り、我々を呼んだ。
 つまり我々がテリメインを知る前に、『海底探索協会』は生まれている。…当然だが」


カリカリと、時系列がわかるようにツリー状の図が描かれていく。

暗黒皇帝まじかる☆リオぴー
「つまり、全てを統べる魔法やらお宝の噂を流したのもこいつらということだ」


フローレム
「ええ、まあそうですけど…」


言わんとすることがわからず、曖昧な返事をするフローレムに、暗黒皇帝はビシッと指差しをした!

暗黒皇帝まじかる☆リオぴー
「ここからが大事なポイントだ。
 今テリメインにはびこる海賊ども…海底探索協会の目を掻い潜り堂々と略奪ができる海域。
 その海域のほど近くにストームレインは存在している。…ああ、つまりアトランドとも近いのだが。
 で、だぞ。海賊が捕まって行先といえばKKRS(海底強制労働施設)。
 そこの看守長は…あの腹黒マーメイド…ロザリアネット…!」


フローレム
「???」


まだわからない様子のフローレムを見て、少し呆れた様子を見せた彼女だが、
幼子に皇帝が言い聞かせるように説明を加える。


暗黒皇帝まじかる☆リオぴー
「…海底探索協会は意図的に『海賊がしやすい』環境を作っているのではないかと最近は考えているのだ。
 すべてを統べる秘宝は釣り餌。そこに集まった者の中には略奪行為の誘惑に負けるものもいる。
 略奪した物資を使い、強くなった探索者がテリメインの探索を素早く進めるなら良し。
 探索者たちが捕らえたのなら――あの悪辣サディストの監視の下好きなだけ働かせられる。
 没収したSCは巡り巡って海底探索協会の資金にもなるし、労働力の確保もできる。
 つまり…海底探索協会の目が届かないという触れ込みのストームレインの先に、すべてを統べる秘宝は存在しないのではないかとな!」


暗黒皇帝まじかる☆リオぴー
「…というか、すべてを統べる秘宝が本当にあることがわかっているのなら、
 海底探索協会を立ち上げた先駆者がとっくに使っておるわ!」”



フィオ「ということで、リオぴーさんの推測だったけど、的を得ているように思えるね」

フィーナ「どこかでロザりんきいてない?」

フィオ「……(チラァ」

フィーナ「確かに、噂の出所が協会である以上は疑ってかかるのも当然だし、なによりもうすでに見つけているのなら使っていないのがおかしい」

フィオ「条件があって使えないとか、協会が明かしてないけれど、存在を臭わせる資料があったりとかするのかもしれないけれどね」

フィーナ「そういう例外を考えるよりも普通に考えたほうが確実そうだけど、あ。でも」

フィオ「『あれ?じゃあ全てを統べる魔法が釣り餌ならリオぴー様がテリメインに来た意味消滅しませんか?』」

フィーナ「フローレムさん、しーっ」

暗黒皇帝まじかる☆リオぴー
「…フ。フフ…ハハハハ!
 う、憂うことはない!天命抱く我がここテリメインに来たこと自体が証明となる!
 我が歩む道こそが覇道よ!全てを統べる魔法が仮に絵空事としても同等の宝は我が得るであろう!
 それに少なくとも我が国に帰ってなお有能な臣下として働くであろう者が二人いるではないか!
 契約も何もかも話していないが」

暗黒皇帝まじかる☆リオぴー
「それに全統治魔法は確かに理由ではあるが3割ほどだ!
 マリーへの言い訳という面が強い!そしてヤツもそのことはわかっている…多分!」


フローレム
「…残りの7割はなんなんですか?」


暗黒皇帝まじかる☆リオぴー
「決まっておろう!未知の地域の探索と、いずれ我が支配する世界の下見のようなものだ!
 ま、我がチカラも思っていたよりは早く振るえている。この程度なら半分はバカンスのようなものだ!」


暗黒皇帝まじかる☆リオぴー
「ハァーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!!!!!!!!!!!」


フローレム
「さすがリオぴー様は究極のポジティブ思考ですね!」


暗黒皇帝まじかる☆リオぴー
「よいよい!褒めるでない!ハハハハハ!」


フローレム
(いや、褒めてはいないんですけどね…)



テリメインの夜は更けていく…



フィオ「……」

フィーナ「前向きは大事」

フィオ「フォローになってない!」

フィーナ「まぁ、そうだね。新しい目的が、あるひポンと現れることもなきしもあらず」

フィオ「実際バカンスと思えば、探索も苦ではないだろうからねー」


もくずさん Pno:476

“ 中世期に建てられた建築物は屋根が急勾配なものが多く、このような建物では雨が降ると勢いよく流れ落ちた雨水が壁を傷めてしまうために雨どいを屋根から長く突き出させる様式が用いられていた。ガーゴイルとは本来この雨どいに怪物の姿を彫刻したものを指しているが、彫刻が怪物の姿をしていることにあまり深刻な理由はなく時代によって動物だったり人間だった例もある。当時の保護すべき建物といえば教会や聖堂だからそれらを守るために彫られた像が魔除けの意味合いを込めるようになったのも当然のことだった。
 そうした彫像の中でも特にグロテスクな装飾で彫られた怪物像が人々の想像力を刺激したのは不思議なことではなく、石像のふりをして動き出す怪物ガーゴイルの姿は多くの伝承や物語で伝えられている。となれば誰しもが考えるのだ。では本当に石像のふりをした守護者をつくってしまおうかと。

「おいおおぞらなまこ、今回は頼りにしてやるぞー」
「いや頼りにしてくれるのは嬉しいんだけどさ」”



フィーナ「ガーゴイルへと挑んでいくもくずさん一行。かけるさんを頼る言葉とは珍しいね」

フィオ「ガンバレ男の子」

フィーナ「それというのもガーゴイルに対して毒が有効だという情報があったみたい。それなら鍛えたロープワークの出番というわけで」

フィオ「搦め手のような戦法だけど相手もそれに近いからせーふせーふ」

フィーナ「空気を奪ってくるのは本当に厄介だよね、かけるさん責任重大だ」

“「だから勝てなかったらお前を殴る!」

 それにしてもどうしてこの娘はこんな性格なんだろうかとかけるは頭を痛くする。もちろん彼らは守護者に勝つための準備を万全にしてきたつもりだし、人事は尽くしたから天命はたぶんだいじょーぶという程度の自信もあるからもくずの横暴な宣言も単なる冗談には違いない。とはいえ万が一勝てなかったら有言実行で殴られるんだろうなとも思うので、かけるとしては今からごめんなさいをするためのシガーボックスを披露する練習よりも作戦どおりに動けるかどうか頭の中できちんとシミュレーションをしておくべきなのだ。”



フィオ「なに、勝てばいいのだ、勝てば!」

“ 左右に並べられた台座にもくずの潜水艇が正面から無造作に突っ込んでいくと、半歩遅れてかけるも水の中の魚のように身をくねらせる。それまで無表情なまま微動だにせずにいた石像の脇腹のあたりに緑と赤をした光が明滅するとかちりという音がして合成音声めいたメッセージがわずかに聞こえてきた。ターゲット・スコープなどと読み上げられる単語は人工頭脳そのままで、相手が単なる機械的な防衛システムであることが分かるがそれはそれで噂通りに猛毒や恐怖が効くのだろうかと心配になってくる。話に聞いていたガーゴイルは羽の生えた悪魔のような姿をしていたが、目の前にいる石像はヒョウに似た四つ足の獣めいていて石像の肌がなめらかな毛皮のように見える。近付くと周囲の水がみるみる重たくなるように感じられて、すぐに息苦しさに変わったのはすでにガーゴイルの防衛機能が働いている証拠だった。”



フィーナ「随分とメカメカしいね、硬そうで嫌だなぁ」

フィオ「硬くて息苦しいとか、面倒くさいよね。誰でも苦手なタイプ」

フィーナ「噂が真実かどうかは大事なのだけれど、もう始まってしまったからね、やるしかない」

“ 先手をとったのはシーサーペント族のゴルゴンゾーラで、大きな身振りから魔鐘を振ると同時に流れていく泡がかけるともくずの潜水艇を追い越して石像たちの手前で次々に爆ぜていく。少し遅れてかけるも身を沈めると、ノズル状に変形したタコデバイスから鳴らされる甲高い音が指向性のある振動になって海水を細かく振るわせた。相手が大勢いることを承知で彼らの周囲の水を目標にして攻撃する、ガーゴイルが海水そのものを武器にするならこちらはそれ以上の方法で打ち消してやろうというのがかけるたちの目論見である。
 派手に泡立ち揺らされる水流に石像たちが右往左往しているところに、もくずがそのまま突っ込んでいくと再び合成音声めいた言葉が聞こえてきて、ガーゴイルたちがいっせいに殴りかかってくるがきこきこと前進する潜水艇はひるむ素振りもない。

「ふぁっきゅー」

 アルファベットで表記すると放送できない言葉をさえぎろうとするように、分厚い装甲に石塊ががんがんぶつけられるが潜水艇のマジックアームに握られたとても大きな錨が振り回されるとたまらず怯んだガーゴイルたちも一歩二歩と後ろに下がる。すかさず前進したかけるが、弾ける泡と震える水と、ぶつかり合う石塊と大きな錨と潜水艇の間にできた隙間を縫うように潜り抜けていく。もくずが壁になってゾーラが大砲になる、だが今回はおおぞらかけるが頼りというのはこのめたくたな混戦の中を彼が泳いでまわることが作戦のキモになっているからだ。
 縦に横に泳ぎ回ったかけるが泳ぎ出ると、ジョセフ・ジョースターのロープトリックよろしくタコ足の先から伸ばされた何本ものワイヤーが絡み付いて石像たちの自由を奪う。石めいた肌には微々たる傷しかつけられないが、ワイヤーから流される高電荷の衝撃や生体麻痺を引き起こす薬品は本当に効いたらしく石像たちの動きがみるみるにぶくなっていく。そのままかけるが流れるように、もくずがきこきこと旋回して二人が離れるとゾーラが巻き起こした水底の冷気の流れが一気に海水を凍りつかせて文字通り一網打尽にしてしまう。

「これぞ海賊直伝、かっぱぎ捕縛術!」
「Κοιμηθε?τε σαν π?τρα!」

 とどめとばかりに魔鐘が打ち鳴らされて、ひとかたまりになっているガーゴイルたちが膨張した氷のかたまりに押しつぶされていくと、身動きもできなくなったところに強烈な振動が押し寄せて容赦なく石像の腕も首も砕いてばらばらの瓦礫に変えてしまう。明滅していた明かりが消えて、かすかに聞こえていた駆動音が消えると周囲が急に静かになった。



フィオ「ふぅむ、相手の使用する武器を封じつつ攻撃するいい作戦だね」

フィーナ「ふぁっきゅふぁっきゅ」

フィオ「役割分担が明確にされていてその連携はお見事。さてかけるさん晴れ舞台ですよ」

フィーナ「難度の高い要求を上手くこなしたよね、一気に始末できたのは作戦がかっちりはまったおかげだ、あと、サンキュージョニー」

フィオ「やっぱりこの程度の守護者じゃ相手にならないか」

フィーナ「勝利を収めて、若干自画自賛ながらたしかにそのデバイスは良くできていると思う」

フィオ「で、新しい場所が開けたけれど、とりあえずはカジノ船に戻って補給みたいだね……んん?」

“ にぎやかな船内で右を見て左を見る。彼らが先行する探索者たちから遺跡の外縁部や守護者たちの情報を聞いていたように、かけるやもくずたちに遅れて海域の調査にやってくる探索者たちももちろん存在して、中にはちょうどカジノ船に来たばかりの者もいる。自分たちも船に着いたばかりのころは今の彼らと同じように見えていたのだろうなあと思いながら、なんとなく気のせいかもしれないが少しだけ距離を置かれているようにも避けられているようにも見えてかけるは首を傾げる。ひそひそとささやいている声が聞こえてきて、ほらあの人が海賊のとか、猛毒のナイフでとか、悪名高いジョニーがどうとか色々と事実に基づく勘違いをされているらしく、もちろんあの悪名高い海賊ジョニーさん(偽名)直伝のロープワークをタコデバイス用にカスタマイズするために、すっかり常連になったお店から今日もかけるは猛毒のチューンジェムを購入しなければならないのだ。

「あのさーもずこ」
「なんだー」
「新しい海へ行こう。だれもおれたちのことをしらない海へ」”



フィーナ「ふぁっきゅーじょにー」

フィオ「猛毒を買い込んでるしこれは間違いないですわ……」

フィーナ「最後の台詞は(状況を考えなければ)正直ロマンチックだった」


ラジェルさん Pno:506


……はっ!? 寝ていたのだわ。



フィオ「オハヨー、あったかいところだと、気づかないうちに寝ちゃうことあるある」


ヤグヤグさん Pno:520

ヤグヤグさんと謎の魚。出会いを重ねてわかったこと、わからないこと、そしてまた一つ。



“うでがふたつ、あしがふたつ。
からだが大きくて、くびのあるさかな。



それはお腹の中が赤い、最初のさかなと同じ。
船で見つけた、白くて、ぶよぶよしたあのさかな。


船で寝ていたあのさかなを、お腹がいっぱいになるまでたべた。

だけど、まだ食べられるのは残っていたから、一度隠して。
それから、もう一度食べて。またもう一度、もう一度食べて。


あのさかなが小さくなってきて、かわりに少しずつ
自分のからだもあのさかなとおなじになってきたような気がする。


だけど、あのさかなと、自分は、きっと違うさかな。
だって、自分には足が無い。
自分は体もちいさくて、あのさかなとはまだちょっとずつ違う。

だからきっと、もっとあのさかなを食べなくちゃいけない。


だって。
それは、どうしてなのか解らないけれど
じぶんも、あのさかなと同じになりたかった。

そう思ったのは、そう。
はぐれた所を船で捕まえた、よく似たさかなにあってから。



何かを知っているような気がした。
何かを知りたいと思った。



だから、同じさかなになりたい。
おなじさかなを探して食べたい――。”



フィーナ「今回はお魚さんのほうから見えているもの。幾つか考えてきた可能性はあるけれど……」

フィオ「原生生物に似た幾つかの特徴を持っていることについては、なんとなくこうなのかなとは思っていたけれど、それで『彼女』にも似ているってことはやっぱり、だよね」

フィーナ「ただ心境? の変化かな『同じ』になったときに何が起こるのか、それはどこまで『同じ』なのか」

フィオ「変化をもたらしたのは間違いなくヤグヤグさんなわけだけど……おなじさかな、ね」


フィーナ「お魚さんはヤグヤグさんを追いかける。考えるのは彼をどうするべきか」

“何かを知っている気がするのは、あのさかなたちの事かもしれない。
何かを知っているのは、あのさかなの事かもしれない。

それがどちらかはきっと、あのさかなを食べればわかりそうだった。



だから、あのさかなをもう一度捕まえて。
今度こそには食べてしまおうか考えて、やめて。
それから、だけどやっぱり食べてしまおうかって、考えながらずっと見ていた。”



フィオ「追跡と観察の中、次の手を打ったのは向こうのほうで――」

“さかながこちらを振り向く。
こちらへと手を伸ばすのが見えて、はっとして体をひるがえした。

隠れなくっちゃ。
そう思って、泳いで遠くへ逃げようとして、その時に。


水がごう、と音をたてて、目の前から渦を巻いた。”



フィーナ「おそらくスキルストーンを使ったんだろうけど、いきなりやってくるとは思わなかったみたい、ただこの方法は『それはいつもさかなを捕まえる時に自分がするのと似ていた』」

フィオ「渦がやんで今度こそ逃げようとして、それは叶わない」

“水の中に、硬い壁がある。
ひだりに、みぎに。見えない壁が狭く囲っていた。


壁の向こうから、手が伸びて、抱える。
ふりむくと、あのさかながこちらをのぞき込んでいた。

青い瞳に、自分の姿が映り込む。



さかなの唇が小さく揺れて、自分に何かを話しかけていた。
声は聞こえなかったけれど




とても、優しい顔をしていた。”



フィーナ「届かない声、それでもその表情から伝わるものは――」

フィオ「上手くやったヤグヤグさん、さて……どうする?」


フェルテウスさん Pno:568


TPがマイナスだと……!?
引率TPの消費量を甘く見ていた。
だが一応の装備品の強化は終わっている。
なんとか…なる…はず…だよね?(弱気)



フィーナ「圧倒的……っ。圧倒的消費……っ!!」

フィオ「これがあるから引率があまりポンポンできないんだよね」

フィーナ「TPもそのうち補充されるから大丈夫でしょう、たぶん」

フィオ「たぶん」


マグノリアさん Pno:600

フィーナ「書かれていない日記、なんか不穏な感じもしたけれど」

“「……昨晩は嫌な夢を見た気がするな…。
 軽い頭痛か…早めに薬でも飲んでおくか」

目頭を押さえ、頭痛薬を飲むマグノリア。
夢の内容は既に朧気で曖昧。しかし後味の悪い苦い思いだけは覚えている。
睡眠用の眼帯をエクセラと付け替える。
じきに痛みは引くだろう。このストレスは今日の探索で適当に放出しなければ。”



フィオ「病状が病状だけにただの夢だというのもね。ストレスの発散に適当な運動はとても高い効果を発揮する」

フィーナ「ということでな、探索中にであったら不幸だと思うといい」


エリィさん Pno:640

フィオ「アトランド、いったいどんなとこだろ」

“「(海の中に島がたくさん…ということは、島には空気があるのでしょうか…?それとも、水中でも息のできるヒトたちしかいないのでしょうか…)」
今度こそ、見たことのないモノがたくさん出てくるはず。
わくわくした気持ちと、少しの不安と。入り混じった奇妙な感覚を覚える。

もしかしたら、新しい海域に入れば、“本体”との繋がりも少しは回復するかもしれない。
状況の変化は、良し悪し問わず何かが進んでいるという証拠だ。”



フィーナ「先に進まなければ何もわからない、何も変わらない。なら進むしかないよね」

フィオ「七つの海の最奥。星の海《ディーププラネット》。そこまでたどり着いたのなら……」

“エリュニウスの“本体”が居るトコロも、世界と世界の狭間にある。
中の世界からは、《宇宙》とか、《星の海》と呼ぶものもいるらしい。
アトランドでは出来なくても、その先、もっと違う海に出れば、もしかしたら。
テリメインが一度滅んだ謎、願いを叶えるという魔法、すべてを統べるという秘宝。
解き明かされる日が、いつか来るだろうか……。”



フィーナ「謎を語る人がいるのか、謎を語るモノがあるのか、それとも全ては海の底なのか。解き明かされたほうが面白いとは思うけれどね」

フィオ「考え事をするのに寝床はとてもいい場所、ただ眠ってしまうこともしばしば……zzz」


ボイジャーさん Pno:664

フィーナ「ボイジャーさんの元に届けられた封筒、血相を変えるほどのお相手とは……?」

“ようボイジャー、そっちで元気にやってるか。また女のケツ追い回してんじゃねえだろうな。その辺はあのアシュリーちゃんが居るから、まあ、俺も心配はしてねえけど一応な。
おめーさんがテリメインに出向いてもう二週間以上か。おめーさんが送ってきた資料の写真、ちょっくら拝見させてもらった。確かにこりゃ大発見の予感がひしひしするな。おめーさんがどんな手柄を挙げるのか、少しばかり期待が持てるってもんだ。
けどなあ、俺が一番心配してんのは、まーたおめーさんが「手荒な真似」で手っ取り早く功績を挙げようとしやしてねえか、ってこった。おめーさんがそれでどんな痛い目を見ようが俺の知ったこっちゃねえが、他の学部の教授に頭下げて回るのは俺の仕事だ。年寄りの頼みだと思ってそれだけはやめといてくれよ。わかったな。
さて、それはさておき、そろそろ学生の論文の指導の時期だ。いつまで俺に丸投げする気だ。准教授として、その辺のお手伝いくらいしやがれ。
・・・つってもおめーさんにそんな事言ったって、どうせなんだかんだ言って帰って来やしねえんだろ。俺も若い頃はそうだったから、まあ、気持ちはわからなくもない。しばらくは勘弁してやるから、その内でっけえ土産持って帰って来いよ。老い先短いもうすぐ定年の上司に、目に物言わせてやる位の気概で調査してこい。
あと、おめーさんにゃちったあ悪い知らせかも知れねえが、考古学部の教授の方から、おめーさんの弟のケプラー君だっけか。あの子を学部の方針として正式にテリメイン探索の方に出向させる旨の申し出があった。邪険にせずに扱ってやれ。おめーさんにとっちゃ得体の知れない弟かも知んねえが、あれでもあの子は相当買われてる逸材だ。何かの役にゃ立つだろうよ。
それじゃあ、また気が向いたらなんか寄越すからな。おめーさんも定期的に調査結果を寄越すのを忘れねえ様に。仕事で行ってるのを忘れんなよ。

アトランティカ大学海洋学部教授 ヴェルナー・ヴァンガード”



フィオ「教授さんからだったね、いろいろと釘を刺されたり、小言を言われたり、でもメインのお話は」

フィーナ「(同行者として)家族が増えるよ!」

フィオ「やったねボイジャーさん!」

フィーナ「……ご尊顔が」

フィオ「衰退してそう」

フィーナ「一方、心の底からうれしそうなケプラーさん、やったぜ」

フィオ「朗報っていってるしねぇ、あぁやっぱり働きかけたのって……」



ボイジャー
「・・・。いいわけねえだろこんのボゲがああああ!!」
ケプラー
「[びっくり]」
ケプラー
「[一拍おいて、ぐすん]」
ボイジャー
「いいか!俺は仕事で此処に来てんの!バカンスしに来たわけじゃねえの!!
暇が出来たら遊ばせて頂いてるけどそれがメインじゃねえの!遊び半分でおめーについて来られても困るわけ!わかったかこの馬鹿弟!」
ケプラー
「・・・わかりました。」
にゃー
「・・・。」


ケプラー
「そうですよね。泳げもしないし要領悪い俺が一緒に居ても邪魔なだけですよね。」
ボイジャー
「・・・いや、そこまで言うつもりでも・・・。」
ケプラー
「いいんです。正直に言ってくれた方が俺としても有り難いですから。
お世話になりました。調査、頑張ってくださいね。
お邪魔虫は消えますね。ごめんなさい。教授には俺から言っておきますから。
ご迷惑おかけしました。」



   ぱたんこ。力なく部屋のドアを開けて、とぼとぼとケプラーは出ていってしまった。





フィオ「こっちもびっくり、かなり本気で怒っているね」

フィーナ「言い分はわからないこともないけれど、言い過ぎたかな」

フィオ「激情に任せて吐き出しちゃったって感じだから、そんなに気にしないほうが……あー」

フィーナ「なかせたーかな。にゃーさんのお説教タイム」

フィオ「ボイジャーさんの台詞も弟のためを思ってなら仕方がない部分もあるよね」

フィーナ「21か……確かにそのぐらいなら自分で色々選ぶべきだろうね」

フィオ「追いかけていったボイジャーさん、上手く落とすところに落とせれば良いけど」


シスルさん Pno:693

フィーナ「とても疲れた様子のシスルさん、どちらかというとイライラしてるって自己申請だけど、日記をガリガリと」

フィオ「ニヤニヤ」

フィーナ「……刺されてもしらないよ?」

“――14週目


 何だあいつら、馬鹿か? シスルも馬鹿か? いや、馬鹿だが。 合わせる方の身にも……くそ、シスルは自然体じゃなきゃあいけねぇんだった。あーーーーもう!

 こんなにイライラするのも、よくわかんねえざわざわも、全部全部あいつらのせいだ。馬鹿。馬鹿。ばか。バカ共めーーーあーーーもーーー日記書かないと死ぬ思いの丈をぶち撒けさせろ


 ……取り乱した。まぁいい。拭いきれなかったストレスは後で適当に発散させるとして、近況を纏めよう。ストレス解消にはアテがある。

 あー、まず、前述の通り、闘技大会で馬鹿に振り回されている。あいつら、喧嘩……しかも低レベルな、ガキの口喧嘩をしやがる。戦闘中にもだ。シスルじゃ……っつーかあいつらムダにつええから、俺じゃ止めらんねえし、勝ってるならまぁ文句は言わねえがアイツらよりによって海賊に負けやがって。海賊狩りだろ。狩る側だろお前ら。……まぁ、足手まといの俺が言えたことじゃねーんだが。あームカつく。……何が一番ムカつくって、俺より強えのがムカつく。…………俺にもっと力があれば勝 ぐちゃぐちゃに線が引かれて、文字が消えている
 ……だから嫌なんだ。
 ……ともかく。まあそんな感じで俺は“シスル”を演じながら、頭を悩ませているというわけだ。……海底杯が終わるまでは振り回されんだろうと思うが、まぁ、仕方が無い。終わった後でもなんでも、後々生きてくるだろうしな。アイツらあんなナリで、有名な海賊狩りらしいし。適当に補佐しよう。……多人数戦闘というのも、足りないものが見えて生き延びる参考にはなる。ソロには使えないがな。

 で、探索の方だが。イフリートとやら――遺跡の奥にいた謎の魔物を倒して、その先、新しい海域に到着している。灼熱の海『レッドバロン』と言うらしい。
 その名の通り赤くて暑い。真夏にスラムのゴミ箱で隠れた時と同じぐらい暑い。思わず氷属性のTGを買ってしまった。後から気づいたんだが、これ使ってっと身体が冷えるから、尚更暑い気がする。……まぁ、さっさとヤって帰れるのでこれはこれでよし、だ。
 話が逸れた。レッドバロンはどうやら熱に強い魔物が生息しているらしい。逆に、冷気には弱いんだと。氷でさっさとヤれんのはコレが理由だ。
 レッドバロンの探索をしていると、カジノ船とやらに遭遇した。どうやら新しいジェムやスキルが買えるらしい。……しかしこれが、軒並み高けえ。頭痛がする。
 ……同時にギャンブルの誘いも受けたわけだが。……コレ、完全にそういう商売だよな。上手いこと考えるヤツもいるもんだ。人間の欲望をよくわかってやがる。

 まぁひとまずはレッドバロンを一通り探索してみようと思ってる。非常に不本意……腹立たしいことだが、Leoとティレを見ていて、ある程度「一人で戦う術」というのもわかってきたところだしな。
 ……ある程度、いけるようになってきたら、海賊狩りにでもなるかな、と思っている。有名な奴に一度引っ付いていけば、ある程度有名にはなんだろ。ちょうど二人も居るしな。……まー、頼むのはシャクなんで、後々考えるが。
 何故か、と言うと……アイツら、金払いが良すぎる。何なんだよ。聞けば、海賊狩りは非常に儲かるらしい。……なら、適当に懸賞金稼ぎして、ある程度の所で止めれば、安定した暮らしの土台ぐらいにはなるだろう。そうじゃなくとも、殺されない程度の、踏み躙られないほどの強さは身につくはずだ。
 それは俺の目的でもあるし、『悪を切る』というのはシスルの目的にも合うしな。遺跡で宝を見つける以外にやるとしたら、ソレしかないだろう。

 ……ま、今は考えているだけだ。もう少し進んだら、何か変わるかもしれない。
 今は適当に金を稼いで力を付ければいい。……あと、喧嘩の仲裁。

 今日は、ここまで。……結局まだ靄が晴れないので、ストレス解消のための画策に移るとする。”



フィオ「結構前に、シスルさんについて程々を目指すことについてまっすぐっていったけど」

フィーナ「まだまだ変わる余地はあるよね、とーぜんっ」

フィオ「四六時中口げんかしてしかもその上で負けてしまうとはなさけない!」

フィーナ「でもそんな二人をとめに入れない実力にもイライラするんだねぇ……ふふ」

フィオ「新鮮な刺激でいいと思うけどね、いろんな道が開けそう、いろんな、ね」

フィーナ「探索のほうはレッドバロンに足を伸ばしてるみたい、難関の海ではあるけれど、準備のおかげか上手いことやれてはいるんだね」

フィオ「でもやっぱり冷却する術は持っていくべきだと思うなー体感はともかくとして」

フィーナ「で、新しい目的として浮かび上がってきた海賊狩りという選択肢、色々と都合も良いしね」

フィオ「ところでストレス解消って何やるんだろなーわかんないなー」


「……」

 
ぱたん、と本が閉じられる。鍵をかちゃりと掛けて、溜息を吐く。


「……(胸のあたりが、騒がしい。――この感覚は)」

 
知っている。俺は、この感覚を知っている。あの日、あの間違いを犯した日、あの日々。
 ――そこに、いつもあった感覚。くすぐったいような、居心地の悪いような、そんな感覚。

「………………(一番の馬鹿は、俺なのかもな)」

 
――わかっている。理解している。今の“シスル”が、現状を酷く楽しんでいること。
 ……そして、その“シスル”に引きずられるように、自分が今を楽しんでいること。

「……ばっかみてぇ」

 
あれほど、人は利用するものだと。そう言い聞かせてきたというのに、ただはしゃぐだけのひとときを、楽しんでいる。
 喚いて、騒いで、それを眺めて。困り顔の演技をしながら、ニヤニヤと愉しげに嗤う自分の心があることを自覚している。

「……はっ。やめやめ。違うっつーの。俺はただ――そう」

 
ただ、哀れで馬鹿な狩人たちを下に見て、越に浸っているだけだ。嗜虐心と自尊心を満たしているだけ。仮面を被って操って、仄暗い液体で胸を満たしているだけ。
 そう言い聞かせて目を閉じて、息を吐き。苛立ったように、頭を掻き毟る。それもこれも全部、あのバカ共のせいだ。


「……ほんと、ばっかみてえ」

 イライラして、靄が掛かって、ストレスが溜まる。だから、あの二人に、辱めを受けさせて、ストレスを解消させなければ。

 ――そう、考える口元が、薄く、柔らかに笑っていることには、シスルは気づかなかった。”



フィーナ「これまでの境遇、それで決めたものの見方と、関わり方。でも今この場所で抱いている感情は、また別のところからやってきたような、いや、本当の場所からやってきたような、かな」

フィオ「歪みを自覚をするからこそ、複雑な心模様。それも受け入れることが出来るときがくるといいと私は思う」

フィーナ「あーストレス解消ってあれかぁ……超楽しみだよね」


ユーノさん Pno:742


少女の心は何思う。
未来を望み、先へゆく。

海中の……島?
沈んだ世界の欠片か、あるいはもともとここにあった何かか。

いずれにしても

「門番ってわけね?おもしろい……」

ここを超えないと、すすめない。”



フィオ「先へ先へ。ユーノさんはとまらない。そのためなら門番だってどんとこい」

フィーナ「障害を越えるのに何よりも大事なものは、それを超えたいという心、さて、いかに」


ジュラエさん Pno:781

フィオ「チューンジェムを磨いている? ジュラエさん、でも本人は消毒ということで」

フィーナ「どうやら仕入れた相手が信条に反する相手だったみたいだね
正直な台詞を吐いたことをしくじったとしたのか、それとも相手を間違えたということか」


フィオ「妙な縁ができてしまったみたいだね、マタ……はあるのかな」


シャウラさん Pno:794

フィーナ「シャウラちゃんのフェイエルノート講座ー! 今日は紋章院について」

フィオ「前にもすこし触れられてたよね? たしか」


シャウラ
「さて、戦時協約(11日目日記)で紋章官について少し触れましたが、紋章官達の組織……紋章院についてのお話です」
シャウラ
「おさらいですが、紋章官というのは、平時は領主様や、騎士達の紋章が重複しないように管理するのがお仕事です。
 紋章というのは領主としての主権の象徴なので、他人の紋章の旗を掲げて戦場で戦ったりすると、紋章院からキッツイペナルティを受けますし、領主間でも『卑怯者』のレッテルを張られます」
シャウラ
「戦争開始前は、まず戦時協約締結の証人としての立ち合いがお仕事です。
 戦争中は戦時協約が守られているかの監視、戦争後は違反があったかどうかの調査と、それに対して賠償金の請求を行います。
 賠償金を支払わないと、聖騎士と呼ばれる紋章院直属の精鋭騎士団が攻めてくるほか、『聖戦』を宣言し、金銭やその他の報酬をばら撒いて集めた近隣領主の連合軍で攻め込んできます。
 まぁ、賠償金が払えなかったら基本滅亡と考えて良いですね」”



フィーナ「自分のシンボルを他人に使われてたら面倒なことになるものね」

フィオ「フィーナも自分の紋章使ってるけれど、他人に使われることとかあったの?」

フィーナ「いや私のは使うほうが無駄にリスク高いからね……」

フィオ「お高い身分だと、『卑怯者』とかそういう不名誉なレッテルはそうとうにきくだろうね」

フィーナ「調査とか細かい作業が多そうだね、協約とそれを守ることの重要性は語ってもらってたけど、実際どうであったかってのを調べるのは足を使わなきゃいけないし」

フィオ「でた、聖騎士」


シャウラ
「あとは、お金……貨幣の鋳造なんかもここのお仕事だったりします。
 領主から元となる金属……主に金銀銅ですね……を受け取って、貨幣に変えて領主に戻すというシステムでフェイエルノートの通貨は発行されます。」
シャウラ
「この時にとる発行手数料が結構な収入だそうです」
シャウラ
「このシステムが興る前は、A国の金貨は金の含有率が低いから価値がこれぐらい、B国はこれぐらい、A国の通貨に見えるけど、中身はまがい物なので価値がこれぐらい、なんてのを商人達は必死になって情報収集してたようで、めちゃくちゃ大変だったそうです」”



フィーナ「世界のシステムを維持するのに大事な仕事なんだねぇ、まじめな人じゃないとできないような気がする」

フィオ「手数料、いやらしい……」

フィーナ「まぁでも、『昔の話』のように商人が苦労することがなくなってよかったんじゃないかな、余計な苦労があると、その分野が滞ってしまうし、売買が不成立になることも多かったんじゃないかな」

フィオ「あと、現在の貨幣と昔の貨幣のお話だったね、ほとんど出回っていないこと、美術的にも価値がありそうなこと、レアものは何処でも人気なんだね」

フィーナ「もう滅んじゃったところの紋章とか、肖像とかもあるのかもしれないしね、昔を調べたい人とかにも資料的な人気があるのかも」


すずさん Pno:828


すず
「今日は良い天気だから、魚を捕ったよ。手づかみで」

すず
「ちょっとだけ、村を思い出す……かな……」

すず
「思い出したくないことも一杯ありすぎるけど……」

すず
「でも私は元気です。まる。」



フィオ「ワイルド! でもこの海だとわりとありそう」

フィーナ「天気が良かったからってことだし、クマみたいな狩猟方法だったのかもしれない」

フィオ「あ、たしかに村のことともいっているからね」

フィーナ「思い出したくない思い出も、すずさんの一部だからね、苦さ、辛さ、そういうのを飲み込んで、元気にやっていくしかないよね」


牡丹さん Pno:838

米来る



“おっこめーおっこめー!
伯父様からお米を送ってもらいましたわ!!
これで美味しいごはんが食べられるのですわ!
白いお米もシンプルでいいけど、炊き込みご飯も捨てがたいのですわ。
……うーん、迷いますわね。

ナガシロお兄さんに聞かれたんですけど、私(わたくし)の興味あることって何かしら?
お料理は楽しいですけど、積極的にしたいってわけでもないので興味があるってほどでもないですし、ちょっと違う気がするんですの。
なのでまだよく分からないのですわ。

……冒険しているうちにそういうのも、きっとわかってきますわよね?



フィオ「来た! 米来た!」

フィーナ「これで炊飯!」

フィオ「でもこれっきりっていわれてたよね? ちゃんと先を見て使っていかないとね」

フィーナ「冒険に持っていくとかだと炊き込みご飯のほうが便利、ではあるかな」


フィオ「興味があること……か」

フィーナ「自分の事って案外わからないものだよね。楽しいから好きだから、だからといってそうとはかぎらない、逆に嫌いだったけど、何かの拍子で奥深さをしって興味がわくって事もある」

フィオ「外からの刺激を待つというのも手ではあるよね、何がきっかけになるかなんて、誰にもわからない」


ペン女帝さん Pno:876


アザシラ大臣
「わー、カジノですって! ねぇ陛下、カジノ!」
ペン女帝
「騒ぐな」
アザシラ大臣
「…えへ。そんなこと言って〜、陛下もやりたいでしょ?」
アザシラ大臣
「賭け事、好きですもんねー。ねー、陛下」
ペン女帝
「ふふ」
アザシラ大臣
「えへへー」


アザシラ大臣
「まさか、あの流れで遊ばせてもらえないとは……」



フィーナ「ふふ(やらせるとはいってない」

フィオ「無駄遣い嫌いだものね」

フィーナ「ひっそりと一人でやったほうが勝率高そう」

フィオ「まぁ勝つのを前提にしたものじゃないんだよね、たぶん。そりゃ勝てれば良いけど、真面目に稼いだほうがいいというか」

フィーナ「賭け事自体に楽しむ要素があるからだろうね、欲望の船……」
posted by エルグ at 18:07| Comment(0) | 日記

2018年02月16日

第十四回日記感想・後半



(TOPに詳細)新しい書き方を試した結果、文字数が大幅に増えてしまったため
別記事として分けさせていただきます。

Pno1192:イリューザさん

Pno1213:弁天ちゃんさん

Pno1245:Z姫さん

Pno1340:モニカさん

Pno1457:こくりさん

Pno1461:リンシャンさん

Pno1473:アイリさん

Pno1659:リンスさん

Pno1730:スヴェータさん

Pno1858:トリスさん


イリューザさん Pno:1192

"イリューザたちとは別、海賊達が日々抗争を繰り広げながら進む海路の先に、
渦潮の海《ストームレイン》が拓けたという。

これで7つの海のうち4海域、半数以上に到達した事になる。
探索が始まってからまだ2週間も経過していない。
"世界"内外から歴戦の猛者達が集結しているから、というのもあるかもしれないが
このペースで進めば1ヶ月程度でこの"世界"を制覇できてしまうのではないだろうか。"



フィーナ「確かに。考えてみると新しい海が開けるペースはやいよね」

フィオ「今ではもう全て開けちゃってみるみたいだからね。ただ――、見えている場所だけが全てなのかはわからない」

"海域の発見自体はアトランドと同時期だったという話だが、
こちらの件については当日中に耳に入ってこなかった。"



フィーナ「注意はしていたけれど、情報を仕入れるのはちょっと遅くなってからだったみたいだね」

"また、レッドバロンなら周辺の海水温度の上昇、アトランドであれば
海中に浮かぶ島々とその海域における分かり易い特徴が見られたが、
そのような兆しに関しても今のところは一切聞き及んでいない。"



フィオ「異名からすればやたら渦があってもおかしくないんだけど、ただ進みやすい海じゃなさそうだよね」

フィーナ「名前のほうも嵐が吹き荒れていそうだしね、でも何で情報が遅れたのかな」

"単純に聞き逃がしていたのであれば自身の手落ちと反省するだけだが、
何しろ海賊達――と、一応、海賊狩りの面々――の跳梁跋扈する海域である。
意図的に隠蔽されていた可能性もなくはない。のだが、一日そこらで割れる情報に
そこまでする価値もまたないはずである。単に前者、聞き漏らしていただけだろうか。"



フィオ「確かに。最短突破者だけが何らかの恩恵を受けられるのならともかく、この短い期間だけ隠蔽する労力のほうが大きそうだよね」

フィーナ「それでも聞き漏らしってのは慎重なイリューザさんには珍しいなって思ってたんだけど……」

"大災害『カラミティ』の影響か、自身はそう思っているつもりはないものの
激流に対しての恐怖心が深層意識に根付いており、イリューザは無意識のうちに
この海域へ行く事、そもそれに思い至る事をすら、避けようとしていた。
アトランドと同時に提示された選択肢であるにも関わらず、新たな海域と聞いてなお、
レッドバロンほど興味を示さなかったのには、進行ルート上海賊達が
多く進むと思われる海域というだけでなく、そのような背景があったからであろう。"



フィオ「……小さいころに刻み込まれたトラウマだろうからね。でも、あまり縁のないであろう海域でよかったかも」


"しかし今はストームレインよりも海中島の海《アトランド》に注力しなくてはならない。
何しろ明確な危機が今まさに目の前に迫っている。"



フィーナ「『ガーゴイル』だね。しかもそれは自分が想定していたやつよりも、もしかすると厄介そうなもので」

フィオ「水分や空気を奪う力。『門番』としては最適かもね、長期戦でもするとなるとジリジリと壁際に追い詰められちゃう」

"やはり事前に情報を収集できる今の立ち位置に留めておいた方がよさそうだと
イリューザは改めて思った。最適な準備をするにはまだ足りない、とも感じるが
それでも情報のあるとないとでは、採れる対策の幅が段違いだからだ。"



フィーナ「決して奢らない。自分達がまだ未熟だという自覚があるからこそ、備えて備えて、その上で負けても、その次のために備える」

フィオ「準備しすぎてしすぎることはないかな。やりすぎて疲れちゃったりすると逆効果だけど」

"暫く進むと、開けた場所に出た。
眼前に大小の『島』としか表現できないものが、海中、そして見上げると海面、
空中にまで浮かんでいる。聞くのと実際に目にするのとでは感想も全く異なる、
美しい、とはまた違う、実に不思議な光景が広がっていた。

海中島の海《アトランド》、その玄関口とも言える領域へと踏み込んだ。
これらは滅びと共に沈んだ、元は海の上に在った陸地の別の姿なのかもしれない。"



フィーナ「見えてきた『アトランド』一体どんな過去があって、こんな海が作られたのかはわからないけれど、本当に不思議な海だよね」

フィオ「陸地が沈んだとして、こういう形に保持されるのはどんな影響なんだろうね」

"一方的に浮くでも沈むでもなく、この島々がその位置関係を静かに維持しているのは
水や土、風のエレメンタルの力が絶妙に保たれている為だろうか。"



フィーナ「イリューザさんの説。……説得力がある」

フィオ「いま、ヨガと比べたでしょ?」

フィーナ「光景は不思議だけれど、それ以外の部分はコレまで進んできたところとあまり変わらないみたいね、そして――」

"その遺跡の番人か守り神かに扮した異形の存在が、擬態を解き近付いてくる。
情報通り、その数6体。振り返らず後方の2体に合図を送り、身構える。
策は練ったつもりだ。それが功を奏せばいいのだが。"



フィオ「練った策。準備した心と身体。『門番』との一戦。結果は果たして」


弁天ちゃんさん Pno:1213

"ガーゴイル(英: gargoyle)は、怪物などをかたどった彫刻であり、雨樋の機能をもつ。彫刻のない雨樋はガーゴイルとは呼ばない。また、雨樋のうち彫刻のない部分もガーゴイルといわない。本来の意味である彫刻としてのガーゴイルは、主として西洋建築の屋根に設置され、雨樋から流れてくる水の排出口としての機能を持つ。
(出典:Wikipedia)"



フィーナ「引用を引用」

フィオ「あくまで雨樋としての役割なんだねぇ」

"なんでガーゴイル海の中にあるの
なんでガーゴイル海の中にあるの

大事なことだから二度言ったよなんでガーゴイル海の中にあるの(三度目)"



フィーナ「大事なことなので。確かにこの説明をかんがみると海の中にある意味がわかんないよ」

フィオ「やっぱりもともとは水上に、って皆考えるよね。水路。水路か……」

"ただそれなら水没までしたのに元気に動いてるガーゴイルは何者なの
元々水中でも動けるように調整されたガーゴイルってことなんだろうか
いや石像を水陸両用にするくらいならもうちょっと何かやりようあるでしょ、なんなのここ"



フィーナ「最初から魔法が編みこまれていた、とは考えにくいかな。だとするとこの海の魔力が石像に影響をあたえたとかかな?」

フィオ「だとすると探索者も魔物になりえるってこと?」

フィーナ「……んースキルストーンがあれば大丈夫じゃない、か?」

"なんでもこいつら脱水なるデバフ、じゃない状態異常をこっちにふっかけてくるらしーよ
水の中で脱水かー
やばいねなんか喉乾いてきた。喉乾いてこない?
終わったらビール飲もうビール、な!"



フィオ「水を摂取する能力を減退させているのなら、デバフともいえるかもしれない」

フィーナ「お酒は飲めないなぁ。でも喉が渇いたときのビールって美味しいって聞くよね、勝利して、勝利の祝杯といけるか」


Z姫さん Pno:1245

"「あれー?おかしいナ〜……どっちから来たっけ??」

少女が路地を右往左往しています。
近くにツ・カイ青年の姿はなく、どうやら迷子になってしまった様子です。
少女の迷っている路地は、とても狭い上に干された洗濯物が陽光を遮って薄暗く、壁にはスプレーでラクガキがしてありました。
おまけに道に目をやればゴミが散乱している始末、まさにスラムの路地裏といった雰囲気です。

                   

『マヤウェル』
セルリアンとレッドバロンとの境に位置し、金持ちや冒険者たちがバカンスに訪れて賑わう観光都市です。
しかし、近年は都市に住む人々の貧富の格差が広がっていて、きらびやかな大通りを少し外れるとスラム街が広がっているようなところもあって、
治安の悪さが深刻な問題になっていたりします。

そして、今少女が迷っているのも、そんな路地裏のひとつでした。"



フィオ「これはまちがいなくピンチ!」

フィーナ「大丈夫大丈夫……スラムだからといってそんな簡単に」

フィオ「迷子になった理由は――」

"ふたつの航路が交わる場所であり、大通りには東西のあらゆる品物を扱うお店がズラリと軒を連ねていました。行き交う様々な恰好の買い物客たち、商人の威勢のいい掛け声。
まるでおもちゃ箱をひっくり返したような大賑わいでした。

「わっ、なにこれなにこれ。たのしそー!」

「おい、勝手にうろちょろするなよ。この人混みだ、はぐれたらすぐ迷子になるぞ」

そして、案の定、うろちょろしてたら迷子になったよ←イマココ! というわけなのです。"



フィーナ「……しってた」

フィオ「人が多いところだと迷子になりやすいよね、しかたないね」

フィーナ「ただ迷った場所が悪い……けど、大丈夫かな」

"角を曲がっても曲がっても同じような路地裏が続いていて、もう最初にいた通りがどっちの方角にあるのかも怪しくなってきました。
そんなに大通りから離れていないハズなのに、先ほどまでの喧騒がまるで夢だったかのように路地はしーんと静まり返っていて、自分のペタペタ歩く足音がやけに気になります。
まだ日は高いハズなのに、だんだんと暗〜くなってきたように感じるのは気のせいでしょうか?
路地に建つ家の真っ暗な窓からは人の気配がしますし、なんだか差すような視線も感じます。

さすがに怖くなってきたので、引き返そうと考えている少女に「おい」といきなり声がかけられました。
びっくりした少女が振り返ると、男が数人立っています。"



フィオ「……ダメだー!」

フィーナ「明らかにダメな人たち、優しい言葉に引っかかっちゃう」

フィオ「これが少女誘拐の場面か……ってそんなのんきにしてる場合じゃない」

フィーナ「素直に信じるのは彼女らしいけど……」

"少女の警戒スキルはほぼほぼゼロなので、こんな見え透いた明らかな嘘でも簡単に引っかかってしまいます。
もうすぐ自分たちのナワバリに到着します。着いてしまえば脱出は不可能です。"



フィオ「こ、これ流石にやばいんじゃ……」

フィーナ「いや、これは……?」

"ところが、その数分後、男は地面に突っ伏して自らの不幸を泥の味と一緒に噛みしめていました。
仲間の男たちも、全員その辺でのびています。
とあるお店の前を通った時、突然少女が「呼ばれてる気がする」と言い出して立ち止まったのですが、
それを無理やり連れて行こうとしたら、一瞬でこの有り様です。"



フィオ「いきなりのしてる!(ぐっ」

フィーナ「でも、なんかいつもと雰囲気違ってるね、実力差のことも考えればこうなるのは不思議の一言」

フィオ「まぁなんにせよ脱出できてよかった」

"少女がハッと気づくと、そこは薄暗いテントのような場所でした。
装飾の凝った年代物のテーブル、布と埃のかかった水晶玉、雑に並べられた絨毯、古めかしいランプ……
ここはスラムにある故買屋の、商品を置いてある場所のようでした。"



フィーナ「『呼ばれてる気がする』……か」

フィオ「なんか宝石? が呼んでる? もしかしてすごい掘り出し物なのかな?」

フィーナ「さぁねぇ。ところで危機はまだ終わっていないみたい、今度は捜索隊が同じ店内に!」

フィオ「あー盗品か…・・・さっきのやつもそうなのかな」

フィーナ「ここで使い魔さんの特殊能力が発覚。近くにいると姫様をサーチできるゾ」

フィオ「そんな都合よく……ハッ」

"「……なんかいるみたいです、近くに」

「な、なんだと?!」

「この店の奥から姫様の気配を感じます!」

「了解した!」


「おい、店主、ちょっと厠を借りるぞ!」

「はい?ちょ、ちょっとお客さん!そっちは…!」

店主の制止を振り切って、ひとりと一匹は奥の部屋に飛び込みました。"



フィーナ「あああ……」

フィオ「だけれどそこに姿なく、どうやら裏口から出て行ったみたいだね」

フィーナ「入ってきた場所も裏口だったのかな、間一髪、だけど当然まだ追ってくるよね」

フィオ「いや、その心配はないみたい」

フィーナ「……」

フィオ「……」

フィーナ「十中八九姫様の仕業だし、所属的にはその責任を取るのも仕方ないよね」

フィオ「濡れ衣とか言うやつが一番怪しいんだ働け働け!」


モニカさん Pno:1340

"
今日はアトランドと呼ばれる海域の門番を倒しましたでーす。
硬くて数の多い敵でしたけど、何とか全部壊せましたです。

…ガーゴイルの一体に、見覚えのある短剣が刺さっていました。
たぶん、ダーリンの持ち物の1つだと思うです。

"



フィーナ「まずは突破おめでとう、探し人の手がかりも手に入れて、このまま進みたくなるのもわかるね」

フィオ「仲間同士だし、お願いして了解してもらえれば全然いんじゃないかな。無理を言ったって程のことじゃないと思う」


フィーナ「エープリルのは冗談にならないからね」

フィオ「テリメインだと他人の使用済み水着が漂着とかはしてそうだよね」

フィーナ「なんか危ない毒とかもっているかもしれないけどね」


こくりさん Pno:1457

"潜水服の一行はレッドバロン海域へ足を踏み入れ、海域の有様を目の当たりにして唖然としていた。海底には赤熱化したマグマが流れており、方々で何かが激しく燃え上がっていたのだ。水と火炎は相容れぬものだという浮世の常識とは隔絶したあの世の光景であった。海底はいたるところで空気幕で覆われて火炎が沸き立ち、空気膜からあぶれた泡がひっきりなしに立ち上っていた。また、地形は起伏が激しく、湧き上がるマグマが日々岩礁を育てている。"



フィオ「セルリアンとは同じ海と……しかも隣り合った海とは思えないほどの変化だね」

フィーナ「実際海が変わると世界が変わったぐらいの変化もありそうだよね、セルリアンからアトランドはそうでもないのかもしれないけど、ストームレインとか、レッドバロンはかなり別物に感じることもありそう」

"こくりが住んでいた山もまた火山であり、レッドバロンほど活動が活発ではないにしろ、大地から湧き上がる炎熱には馴染みがあったのだ。こくりはふと苦味のある笑みを浮かべて呟いていた。海底とはいえ、地上には変わりないというわけか、と。"



フィオ「確かに海の底であっても、ある意味では地上とは言える……のかな」

フィーナ「少なくとも人が住むような場所ではない、とおもうけど」

"こくりはちらと和装の青年の顔色を伺う。その顔には汗がしたたれていた。レッドバロン海域は常人が快適に過ごすには適温とはいえないようだ。こくりはふむと唸る。とはいえ、レッドバロンには遺跡は残されており、人が住んでいた形跡がある。遺跡は人間が快適に眠ることができる場所が残っているのかもしれない。潜水服の一行はその日の寝床探しも兼ねて遺跡探索に励むことにした。"



フィオ「形跡残ってるんだものね……確かに遺跡の中であれば休憩できる場所も見つかるかもしれない」

フィーナ「遺跡自体が魔力を持ってることもあるんだっけ? それならその魔力で海から守られているってこともあるかもね」

"炎熱の海域を探索するにあたり、潜水服は一枚の護符を胸元に貼り付けた。イフリートの宝箱から出てきた耐熱性能を向上させる護符であった。護符は元々紫髪の幽霊の保有するものであったが、護符には装着者を鈍重にする効果もあり、紫髪の幽霊は利用する予定はないということで潜水服が紫髪の幽霊から譲り受けていたのだ。"



フィオ「お、もらい物だね、しかもお供えという形じゃなくて、気にかけてくれた結果みたい」

フィーナ「嬉しそうだね。やる気も十分、だけれども」

"しかし、その日の遺跡探索は空振りに終わった。人間が快適に過ごせるような場所は見当たらず、このままでは灼熱の海底で一夜を明すことになりかねない。潜水服はちらと和装の青年の顔色を伺ってみる。その顔はげっそりと憔悴しており、潜水服達はやむなく海面へ逃れることにした。"



フィオ「さ、さよさん!」

フィーナ「一人だけ生身の人間だからねぇ、打たれ弱いとかそういう次元の話じゃなくて、二人と比べて探索の継続が難しいのは何もおかしいことじゃないし、そのあたりをケアしていかなくちゃ探索は進められない」

フィオ「こくりさんのバイタルチェック」

"異界の有様を眺めやる眼を持つ者ならば、こくりが潜水服内の神域の書斎で机に座っている様を見ることができただろう。机の上の空中には事象の点が因果の線で繋がれており、点や線には数字が示されていた。その数字は和装の青年の体内のストレスを表していた。"



フィーナ「即刻何か問題を起こすような状態ではないけれど、先のことも考えながらやっていかないとね、一緒に行動するから最悪の事態は避けられるだろうけれど、一緒に行動する上での最悪は踏まないとも限らない」

フィオ「海上での休まらない一夜を覚悟して水上へ。でもそこに現れたのは……」

"水面に顔をだした潜水服達は波に揺られながら一隻の船を発見した。探照灯の明かりを四方に向け、目立つ光彩で装飾された船であった。船に近づいて観察するに、船体横に階段がしつらえてあり、探索者を歓迎しているようだった。"



フィーナ「カジノ船キター! 普通に現れる分にはギャンブルの誘いにもなるけれど、こういう状態だと渡りに船かもね」

フィオ「三人ともギャンブルやりそうに見えないしね、こくりさんが興味本位で一回ぐらいかけてみるかもしれないけれど」


リンシャンさん Pno:1461

"この季節は海の外も中もせわしないですね。
深海でも、そろそろ目を覚まして動き始める者が出る頃です。
陽の光はほとんど届かないはずなのに、分かるんですね。"



フィーナ「そういえば何でわかるんだろう?」

フィオ「海水温の微妙な変化とか? 光が届かなくて視覚が衰える代わりに、他の機能が発達してるとか聞いた事あるかも」

フィーナ「だとすると厄介な奴がこの後動き出してるかもしれないのか」

"私はその光を、今は海上から見上げています。
痛いくらい眩しくて直に見ることは出来ませんが、身体中の鱗が宝石のようにキラキラと輝いて美しいです。
……手前味噌かしら?"



フィオ「普通の人でも『それ』を直に見ることはできないからねー、絶対にやっちゃダメダゾ」

フィーナ「未知の海域の旅路。そういえばサンセットオーシャンはもっと日が強かったね、そこに行くことになれば、また別の感想を抱くのかな」


アイリさん Pno:1473

収容所から出て。キルムさんとの別れ、自ら稼ぐ術を考えた結果はギャンブルすること! 少々では少なすぎる未来への不安を周囲に抱かせつつ、彼女が挑む勝負の結末は



"カジノ船でのギャンブル。
アイリーンは乗船準備を整え、早速計画を実行に移すこととした。

「さーって、バリバリ稼ぐわよ…!」

拳を強く握り締める。その意気込みたるや充分。
船に近付いていく背中にはどこかの勇者を思わせるような風格と威厳があった。
有り金全てを持ち込んで行う勝負の行方は果たして。"



フィオ「雰囲気だけなら象も倒せそう」

フィーナ「エスコートしてくれたの倒してどうする」

フィオ「まぁでも気合がなくちゃね、こういう勝負事は」

フィーナ「気合でどうにかなるのなら、わりと多くの人が儲かるんじゃないかなぁ……で、結果は?」

"結果は入船拒否。
勝負に勝つとか負けるとかそれ以前の問題。
その程度の所持金ではちょっと…と燕尾服を纏った船員に呼び止められた際、
アイリーンのメンチの切り方は半端ではなかった。
恐らくはこの地に来てから一番の凶悪顔であったことだろう。
一応は庶民用コースと称して別船での小口ギャンブルを紹介されたのだが、
屋敷にいた頃と同様、怒りに身を任せて飛び出してきてしまった。
まるで成長していない。"



フィオ「……」

フィーナ「……」

フィオ「いや、お金ないんじゃそれもまたいたしかた」

フィーナ「それ以上言うな……っ」

フィオ「前向きに考えれば有り金が全て吹っ飛んだ上、マイナスに突っ込まなくて良かったのかもしれないよね?」

フィーナ「ここで払えないとかなると、収容所見えてきそうだからねぇ」

フィオ「とりあえずは、『庶民用』で頑張るみたいだけれど」

フィーナ「小金も積み重ねれば大きな富になる……そのあたりの感覚がないのもアイリさんらしいっちゃらしいけどね」


リンスさん Pno:1659

リンスさんとユニさん。どちらがよりドラジェさんを愛しているのかを決めるため、三本勝負の料理対決中。いつのまにか巻き起こった無責任な熱狂の中、一本目をユニさんが取るものの、もはや残りの勝負をする意味はないようにすら見えて……



フィオ「すっきりはできないよね……」

フィーナ「後がないから、というよりは……だね。初めてだから。ってドラジェさんは言ったけど。これは、もう」

" 動揺、困惑、不安、焦燥、恐怖――それらを混ぜ合わせたような表情で、リンスは食材の前で立ち尽くしている。誰がどう見ても勝負は見えきっていたし、その空気は観戦するギャラリーにまで及んでいた。店員を呼び止めてメニューを頼む者、関係のない話をしはじめる者、中には店を立ち去る者もいて、先ほどの熱狂的なものとは一転し、どこかよそよそしい空気が店内中に漂っていた。
 見るに堪えない光景だ。
 こんなものはさっさと終わらせてしまおう。
 そもそも、この勝負は優劣をつけるためのものだ。相手よりもドラジェが好きだと証明するための戦いであり、言ってしまえばただの自己満足。勝者が決まったところで、どちらかが身を引く必要はないし、今まで通りで構わないとユニは思っている。
 だから、こんなものはさっさと終わらせてしまいたい。
 リンスもそう思っているはずだ。"



フィオ「ユニさんが考えるこの勝負の意味。こんな風に大事にならなくてもよかったんだよね」

フィーナ「こんな状況ではね。勝ち負けに意味がある状態じゃないし。お互いにとって不愉快な時間なら早く終わるに越したことはないとおもうけど……?」

"『さあ両者の料理が出揃いました! ユニが作ったものは"ブリの照焼"! ここからでも香ばしい匂いがしてきます!』
「もう少し時間をかけて作りたかったのですが、今回はこれが限界です」
 と一応の謙遜はしてみるが、以前よく作っていた料理のひとつなので自信があった。少なくとも、致命的な失敗はどこにもない。
『そしてリンスちゃんが作ったものは――こ、これは一体なんでしょう! 私には魚をただ焼いただけのものに見えますが――!?』
 その通り。魚の丸焼きである。しかも皮はボロボロに崩れており、随所が焦げていてずいぶんな見た目の丸焼きである。実際見たわけではないが、おそらく目玉焼きと同じ要領で魚を焼いてしまい、フライパンに皮が張り付いてしまったのだろう。
 リンスは前髪で顔が隠れてしまうほどうなだれていて、その表情をうかがい知ることはできない。
 しかし、両肩が微かに震えているのが見えた。
 ――料理では勝てないと知り、落ち込んでいるのだろうか。いや、あるいは怒っているのかもしれない。こんなのは認められない、ずるいと、リンスは異議を唱えてくるような気もする。
 確かにだまし討ちのようなこの勝負を提案した自分は、卑怯者だろう。
 だけど、どんな手を使ってでも証明したかったのだ。
 ユニは目を閉じて結果を待つ。結果の先にあるものを思う。"



フィオ「勝てる算段をもって勝負を提案するのは卑怯かな」

フィーナ「自分がそう思うなら。ユニさんは勝負にならないって心の中ではわかっていたかもしれない、自分にも幾つかのハンデがあるにしろ、それでも。
ドラジェさんが嘘をつかないで、それはきっと二人にために、評価をするのもわかっていたかもしれないし。『ハメた』のだと自分で思っちゃうなら」


"『それではドラジェちゃん、試食のほうをどうぞ――ってああ! もう食べていたー!!』
「前置きなげーんだよさっきから」
『口をもぐもぐさせながら罵られてしまいました! しかし不思議と悪い気はしなぁぁい!!』
「うっわ……マジで引くわ」
『ドスをきかせて言わないで頂きたい!』
「――んで、どっちが美味いかだろ」
 ドラジェは間を置いてから、
「言っとくけど、俺は嘘はつかねぇからな」
 その言葉がリンスに向けられたものだということは、ユニにはすぐにわかった。
「――こっちのがうまかった。文句なしだ」
『ああーっと! 選ばれたのはやはりユニの皿だー! 三戦勝負のこの戦い、早くも決着がついてしまいました!! 勝者はテリメインバーガースタッフのユニ! 天使ユニの勝利となります!!』"



フィオ「マジデヒクワ」

フィーナ「悪い気がしない」

フィオ「……」

フィーナ「距離とるな!」

フィオ「やっぱりドラジェさんは嘘つかないんだね」

フィーナ「ついてもしかたないからね。勝負は勝負だし……この空気で無駄に長引かせるのも優しさとは違うでしょ」

フィオ「勝負はついた。後味の悪さを曳いて、でも終わった……けども?」

フィーナ「ある意味予想通りのリンスさんの行動。だけれど、それはユニさんが想像していたものとはまた違って。子供の駄々のように泣き叫ぶその姿に、周囲が、ドラジェさんですら、辟易とした様子を浮かべる中で」

" 信じがたいものを見たとばかりに立ち尽くしていたのは、ユニだけだった。
 事実、信じられなかった。
 だって、泣いているのだ。最初の卵勝負の時点で勝敗は見えていただろう。今の自分では魚を満足に焼くことすらできないのがわかっただろう。リンスは馬鹿ではない。負けると知って、料理が下手だと知って、
 それでも、泣くのか。
 認めたくないと、わがままに泣くことができるのか。
「ああ――そうですか」
 今、わかった。
 自分は、リンスに認めてほしかったのだ。この愛はまがい物ではない本物だと、リンスにこそ教えて欲しかった。
 どこまでも純粋に、赤子のように無垢な少女の好意は、自分の造り物の恋とは正反対だから。
 その純粋さが、羨ましかったから。
「――いいですよ。嫌だと言うならば、もう一度やりましょう」
 いまだ泣き続けるリンスに、ユニは聖母のような笑顔で告げる。
 だって、天使は泣くことはできないから。
「――いいの?」
 涙と鼻水と唾液を垂れ流しながら見上げてくるその姿が愛おしいと感じるのは、きっと天使が生み出す快楽物質のせいだ。
「ええ。ですが、もうやりたくないという意味で『嫌だ』と言うなら終わりにしても構いません。どちらにせよ、勝つのはユニですから」
 リンスは鼻をすすり、服の袖で顔をごしごしと洗って、ユニを睨み上げる。
「やるっ。だってリンスは、まだ作れるもん!」"



フィオ「うぉぉ、おおおおおおお!」

フィーナ「参ったね。結果は変わらないかもしれない。すでに二つ勝ったし、『泣きの一回』も負けることはないと思う。でも、この勝負には意味がある! もう終わりだなんて勝手に思ってて悪かったよ」

フィオ「最後の確認も取った。この残酷とも言える環境で、リンスさんは絶対にあきらめない。負けを認めない。こんな場所で、鼻声で、それでもまっすぐに自分の気持ちに正直に、全力で。だからこそユニさんも受けて立つ。さめた観衆ももう一度沸き立って」

" 二人の応酬に再び大歓声があがる。すると足のつま先から頭のてっぺんまで、隠しようのない武者震いがやってくる。――ああ、もう。今、自分の顔はゆだったタコのように真っ赤だろう。だけど、いつものような不快感は不思議となかった。
『それでは両名共に手を清潔に、レディ――』
 一転して店内全体が息を呑む気配。最後に互いの視線を交差させ、リンスがフライパンを握り、ユニが鍋を掴む。
 そして、ついに抑えきれなくなった笑顔が、ユニの真っ赤な顔に浮かぶ。

『ファイトッ!!』

 天使は、笑うことはできる。
"




その日の晩、静かな夜。ユニさんはリンスさんに呼び出されて



フィーナ「ユニさんからリンスさんへの意識は変わっただろうけれど、リンスさんからはどうなんだろう」

フィオ「話があるって呼び出されるのって、緊張するよね」

" 呼びつけたのはリンスの方からなのに、なぜか唇を尖らせて不満たらたらと言った様子で、
「別に、ちょっと聞きたいことがあって」
 リンスにしては珍しい、歯切れが悪い物言い。
「いえ、ですから、それがなんでしょうか、とユニは聞いているのですが」
 リンスは一瞬、喉に魚の骨をつまらせたような顔になってから、長い逡巡の果てに、
「――あのとき、どうして最後にもう一回って言ったのっ」
 一瞬なんのことかと思ったが、料理対決の再戦を認めたときのことだとすぐにわかった。"



フィーナ「やっぱり、人の心の中なんてそう簡単にわかるものじゃないものね」

フィオ「ユニさんの答え……。そっか。わかったんだ『人と獣の違い』」

フィーナ「ユニさんの物言いがちょっと難しいこともあるけど、事情を知りえないとわからないとおもうな」

フィオ「もういい、といいながらも、立ち去らないリンスさん、それに付き合う形になったユニさん。きっかけは、海風」

" 一際強い海風が吹いて、リンスの金の髪がふわりと揺れたのが、きっかけだった。
「――結局、ユニはドラジェのことが本当に好きなんでしょうか」
「知らないよそんなの。リンスには関係ないことだし」
「そうですか――そうですよね――」
 すると、それまでそっぽを向いていたリンスが、体ごとユニのほうへ向けて勝ち誇った顔で笑う。
「でも、リンスの方がドラジェのこと好きだよ。だって、最後に勝ったのはリンスだもん」
 そうなのだ。
 あれだけ大見得を切ったくせに、最後の最後に負けてしまったのである。"



フィーナ「その答えは、今すぐに出さなくちゃいけないものなのかな。どちらにしても、他者の心の中はわからないよ。自分でだって理解できないのに」

フィオ「ユニさんは特別そういうところあるけれど、時間がたてば、わかるかもしれないよね。って最後負けたの!?」

フィーナ「最後は『肉じゃが』と『ハンバーグ』の対決。勝負を分けたのは苦手なものだというからわからないものだね、それに……」

"色々と至らない部分は多かったものの、魚の丸焼きのような失態をしなかったのは何度か挑戦したことがあるのだろう。
 きっとそれは、ドラジェの好物だからだ。
「――そうですね。ドラジェに対する気持ちは、ユニの完敗です」
 肉じゃがは『彼』が一番美味しいと言ってくれた料理だった。
 料理は愛情というのはつまり、食べさせる相手のことを気遣うということなのだろう。よくよく考えてみれば、ただ料理が美味しく作れるだけなら、そんな格言は生まれてこなかったはずだ。"



フィオ「勝負には勝ったけど(2勝1敗)気持ちでは負けちゃったと」

フィーナ「だけれど、なんというか。よかった。かな勝負して、あんな過程になって、こういう結末を迎えたけど、終わりよければ」

フィオ「二人の距離も変化があったみたいだしね、悪くないほうへ……写真?」

フィーナ「勝負の後撮ったのかな? どれどれ……? ほうほうこれは」

フィオ「心のそこから嬉しそうなユニさん。それはとても価値のある表情だ」

フィーナ「とりあえず勝負の結果として、リンスさんはユニさんがドラジェさんに近づかないようにと要請するけど、論理的に返されてしまって。それならば、と」

"「う、うぅ〜〜! じゃ、じゃあ! ドラジェに変なことするのはやめて!」
「変なこと、とは?」
「体触ったり、顔を近づけたりすることっ」
「――それは例えば、こういうことですか?」
「え」
 ユニはリンスの腕を掴んで引き寄せる。ほとんど不意打ちのような出来事にリンスはなにもできず、互いの吐息が顔にかかるほど距離を詰めて、ユニは艶のある声色で囁く。
「実は、ですね――今回のことで、リンスもまたユニにとって特別になったんです。いえ、もしかしたらリンスはドラジェより特別なのかもしれません。ユニの秘密を話してしまいましたし、もしかしたらこれが本当の恋なのかも――」
 さらに距離を縮めようとするユニにとって誤算だったのは、リンスは空気というものを読まないことだ。
「違う違う違う! ぜぇーったい、ちがーう!」"



フィオ「キマシ」

フィーナ「ジョークかも。でもリンスさんガチ嫌がり、魔力を込めて胸をドンッと」

"「お、おっぱいが割れちゃった……」
 おっぱいは割れない。
 一瞬意識を失っていたユニが、ものすごい勢いでまくし立てる。
「いえ違うんですこれは偽物とかではなく同族の天使が桃色で彼が大きいのが好きだったからとか見栄を張りたかったとかそういうわけではなくつまりユニは胸の大きさなんてどうでもよくて――」
 自らの墓を自らで掘るような真似。ようするに、墓穴である。
「――ええと、つまり、ユニの大きなおっぱいは嘘だったんだ」
 ユニは顔を青ざめさせ、
「ま、まあ、そうとも言いますね」
 そうとしか言えない。"



フィオ「……」

フィーナ「おい、なんだ、しょうがないだろ、小さいもんは、努力するんだよ」

フィオ「私何も言ってないよ」

フィーナ「小さくてもいいじゃないかー!!!」

フィオ「ま、リンスさんも二人だけの秘密にしてくれるって素敵な笑顔で誓ってくれたし、マジ天使」


翌日、マストにはためく見慣れぬ白旗。書いてあるのは『二人だけの秘密』



フィーナ「マジ悪魔」

フィオ「戦争だろうが……っ!」

フィーナ「実際かなりの大騒ぎだったみたいだね、やりかえし、やりかえし、どんどんエスカレートして、結果的にはお説教、ついでに二人で甲板の修理、で数日の間、口も聞きたくなくなっちゃったけど」

" そういえば、誰かとケンカなんてするのは、はじめてだ。
 ユニは忘れ物を思い出したように、くるりと踵を返す。今まで進んでいた道から背を向けて、恋人のいる場所へ向かうような軽やかな足取りで歩きだす。
 さて、これはなかなかに難問だ。なにしろ相手はあのリンスである。正攻法でいけば足元を見られて無茶な要求をしてくるに決まっている。あくまで立場は同等、いやむしろ、こちらが少し有利になるぐらいに事を運ぶには、一体どういう切り出し方がいいだろうか。いっそドラジェに協力を仰ぐのもいいかもしれない。なにしろ――
 仲直りだって、はじめてなのだから。



 エスカベーシュの客室。
 そこはユニの部屋ということになっているが、その内装は部屋を割り当てられた時とほとんど変わらない状態で、ユニの私物の類はまったくといっていいほど存在しない。食事や睡眠といったものを必要としない天使は、部屋を飾ることをあまりしないから。
 ただひとつ、部屋の片隅の目立たない場所に、それは置かれていた。

 リンスとユニが、ドラジェを挟んで両頬にキスをしている。

 そんな写真が、飾られていた。"



フィオ「関係は、変化する。三人の旅は、まだまだ続く。これまでどおり喧嘩もするかもしれない、でもこれまでとは違って、それを歯牙にもかけないようなことは、きっともうないとおもう」


スヴェータさん Pno:1730

そうとうにヤバい人であり、裏にも通ずる有力な医者であるジャンヌさんから、正式に『お店』を任された二人。どうやら初日はジャンヌさんがいっぱい呑んでくれたようで……



"
 2時間ほど飲み明かして、ジャンヌは2人のバーを後にした。そろそろ深夜と言っていい時間帯だ。明かりのない路地裏はとても暗く、建物の隙間から落ちてくる月明かりがやけにまぶしい。
 意識して高そうなものを注文したせいだろう、代金はとことん高かった。もっとも、代金のうちジャンヌが自分で飲み食いしたのは半分にも満たないくらいであり、後の半分以上はスヴェータとクシェルにふるまった分だ。クシェルから遠慮がちに告げられた代金をこともなげにゴトンとテーブルの上に置いた時の、2人の戸惑いの顔を思い出すと、クックッと笑いがこみあげてきた。"



フィーナ「……ゴトン? それって、その、代金の音……?」

フィオ「高いもの選んでくれるなんて優しいなー、でもやっぱりちょっと怖いよ」

フィーナ「さて、随分愉快な気分になって帰り道を行くジャンヌさんだけれど、そこに現れたのは、こちらも一筋縄では行かない人っぽいな」

"
 月明かりの中、現れたのは中年の男性だった。身長は高いが、体格はよくなく、ひょろっとした頼りない印象を与える身体だ。鼠色のコートを羽織っているが、ひどくくたびれている。鼠色という色が、そのみすぼらしさを一層引き立てていた。ズボンはところどころほつれていて、皮靴は使い古されていて、輝きが失われている。一歩間違えれば浮浪者のような風体の中年男性、それがコミュニティメンバーの1人、ファニドだ。
 ファニドは情報通である。彼は独自の、底が知れない情報網を持っていて、随時情報を集めまわっている。彼の頭の中にはどうでもいい情報から、その筋の者が喉から手が出るほど欲しがる情報まで、色々なものがそろっている。しかし、彼は情報を集めるだけで、それ以上のことには滅多に行わない。情報屋のように、情報を売り買いしたりもしない。自らが楽しく生きていくためと、「コミュニティ」を存続させるために、最小限の情報を使うだけだ。
"



フィオ「情報通……いいね、集めるだけで、基本的に使わないっていうのも、なかなか面白い」

フィーナ「使わないと意味ないんじゃないの?」

フィオ「大事なときに使うからこそ価値が生まれるものもあるわけだしね。何より情報屋として名前が知られるのがいやってこともあるんじゃない?」

フィーナ「あーそういうのはわかるかも」

二人に会って見た感触を聞くファ二ドさん。どうやらなにか思惑があるようで……



フィオ「会話を聞くに……荒事の匂いだね」

フィーナ「『アテイシュ』、『関係がないところでいなくなる』、『2人をぶつける』……うーんそうだね」

フィオ「ジャンヌさんは勝算四割とみて、ファニドさんは十割とみてる、ただ面白いからとか、そうなったほうが良いからとかそういう理由があるみたいだけど……ちなみにもう情報は流しちゃったみたい、『自分が楽しく生きていくため』か」

"
「やれやれ、相変わらず手際がよろしいことで。その力を他のことに使えば、もっとまっとうにも生きていけただろうに」

「嫌だよ。まっとうに生きるだなんて、つまらないじゃあないか。もっと生きるのは楽しくなくちゃいけない。というわけで、ジャンヌ。もう1件付き合ってくれないかな。用事も終わったし、酒は人生の楽しみだ。それに、夜はまだまだ長い。そうだろう?」

「はあ、そう言うと思ったよ。いいさ、付き合おうじゃないか。払いはそっち持ちだよ?」


「分かってるさ。エスコートの礼儀くらいはわきまえているんでね。さあ、行こうか。料理はあまりよくないがね、酒はいいのがそろっている店があるんだ」

「そこは、料理も美味しい店を探してくれたまえよ。まったく……」


 2人は話をしながら夜の闇に溶けて消えた。
"



フィーナ「これから、間違いなく二人に試練が訪れるね。しかも荒事の、ジャンヌさんが戦闘能力が低いと見積もっているクシェルさん。日々の訓練で少しは向上できていれば良いけど」

フィオ「魔術とかもまだ十分ってわけじゃないだろうしね、相手のでかたもあるだろうけれど、うまくいってくれるかな……?」


トリスさん Pno:1858

目に飛び込むのはテリメインの青、空の青、海の青



フィーナ「実際なんで、空は青いの」

フィオ「海が青いからだよ」

フィーナ「……逆もしかり?」

フィオ「思い出す記憶は、決して楽しいとはいえないもので」

"魔術師というのはどいつも胡乱だ。
修飾過多の割には表現が曖昧で、結局話の実態はつかめない。

比して、机上の文面は簡潔だ。しかし重要な情報が抜け落ちていた。

『―――ひどく不安定だ』

専門外の人間には冗長な語り。それを丁寧と呼ぶ安穏とした人間は、ここにはいない。

『つまり?』

結論を促す。
あからさまな溜息。面倒事が嫌ならとっとと終わらせればいい。

『要するに、あんたらは今』

簡単な結論一つに、前置きが長ったらしい。

さっさと宣告すればいい。
ろくでもない事態に引き込まれたのはよく分かっている。"




フィーナ「青の中からちゃんと多くの色を見つけ出して、やってきました探索協会」

フィオ「少し遅れての参戦になったけれど、この付近はいつもにぎやかだね」

フィーナ「未知の財宝とか、人をひきつけるものは色々あるからね。トリスさんの場合は……この追憶が秘めた目的、になるのかな」

"テリメインの海中には、独特の魔力が充満しているらしい。
その影響かどうか、喋る魚は野良猫同然に泳ぎ回り、時に人を襲うものも。
生物が住むには難しい環境なのだから、棲むものたちも、よりたくましくなる。

未踏の海。
慣れるのに、すこしかかりそうだ。

出遅れたのか、間に合ったのか。
どちらにしても、時間は流れていくだけ。
やれることをやればいい。


わかりやすく看板まで掲げられた受付にて、手続きを済ませる。

書類へのサインは、近い過去を連想させた。並ぶ数字と約束事。
名前を刻む。誰が何をしたか、これからどうするのか、の証拠。証明。根拠。


名前と、責任。


(これにも、魔法がかかっているのかな)"



フィオ「今更ながらに、かなり変わった場所だよねテリメイン」

フィーナ「野良猫レベルだとは思わなかったけど、確かにそれぐらいの遭遇率かも、素直なお魚は中々見れないけど」

フィオ「出遅れようとなんだろうと、やることをやる、それしかないよね」

フィーナ「書類へとサインすることの意味、魔法がかかっているかどうか……ってのはやっぱりあの記憶のことなんだろう。どんな書類にサインさせられたのか、はまだわからないけれど」

フィオ「書類の提出が終われば、試験? を越えて探索者へ。大丈夫ここのテストは……スゴクヤサシイ」

"ここへ訪れたのは、そう。


返すため。
あるべきものを、あるべき場所へ。



「……なんにせよ、元手がいるんだよね〜」


地獄の沙汰もなんとやら。
世の中は世知辛く、海は塩辛い。"



フィーナ「旅の始まり、塩辛いだけの海じゃないし、世知辛いだけの世の中じゃない。さて、どんな旅路が待ち受けているのか……」
posted by エルグ at 18:20| Comment(0) | 日記